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再エネが初めて主役のエネルギー基本計画、経済界は賛同も環境団体から厳しい声【エネルギー自由化コラム】

電力自由化ニュース

2050年のカーボンニュートラルを実現するための政策として、再生可能エネルギーを主力電源とするエネルギー基本計画素案が示されました。WWFをはじめ環境団体からは、電源構成の比率に対して石炭火力のさらなる引き下げ、再エネの引き上げなど、厳しい意見があがっています。

経済産業省は国のエネルギー政策の方向性を示すエネルギー基本計画の改定案をまとめ、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会に示しました。2030年度に全電源に占める再生可能エネルギーの割合を36~38%に引き上げる内容で、再エネ拡大に最優先で取り組むのはこれが初めてです。経産省は「野心的な見通し」と位置づけ、経済界から理解を示す声が上がっていますが、環境保護団体から批判的な見方も出ています。

総合資源エネルギー調査会でおおむね了承

「脱炭素化にチャレンジする意欲がうかがえた」、「一刻も早くこの目標に向かって行動を開始してほしい」。東京・霞が関の経産省で8月上旬に開かれた総合資源エネルギー調査会基本政策分科会。経産省が提出したエネルギー基本計画の改定案がおおむね了承されました。

7月の基本政策分科会には改定の素案が提出されていました。その際に委員から出た意見を基に文言を一部修正したのが今回の改定案ですが、内容自体に大きな変化はありませんでした。

基本政策分科会では、山下隆一資源エネルギー庁次長が改定案の内容を説明したのに対し、委員から「達成を見通せていない事項があるなど不確定な部分が大きいシナリオだけに、不断の見直しを進めてほしい」「新技術開発によりいっそうの国の支援が必要」などと注文が相次ぎました。

これに対し、梶山弘志経済産業相は「(世界の電力業界は)技術面を含め、めまぐるしい変化の中にある。委員の皆さんの意見を踏まえ、しっかりとした結論を出していきたい」と述べました。経産省は意見公募を経て、10月までの閣議決定を目指しています。

堺市西区築港新町にある天然ガス火力の関西電力堺港発電所。エネルギー基本計画の改定案では天然ガス、石炭、石油火力を大幅に削減した(筆者撮影)

再エネ割合を22~24%から36~38%に引き上げ

改定案によると、2030年度の電源構成は全電源に占める再エネの割合を現行計画の22~24%から36~38%に引き上げます。2019年度の発電実績は18%ですから、一気にほぼ倍増させることになるわけです。新たな電源としては、まだ社会実装されていない水素やアンモニア発電を加えました。

原子力発電は現行計画と同じ20~22%で維持するとしました。火力発電は天然ガスが現行計画の27%を20%に、石炭が26%を19%に、石油などが3%を2%に削減します。

経産省は当初、原発建て替えの必要性を明記するかどうか検討していましたが、見送りました。自民党代議士は「新型コロナウイルスの感染爆発と五輪強行で内閣支持率が低下する中、世論の反発を警戒する首相官邸の意向をくんだ結果」と説明しています。従来通りに「可能な限り原発依存度を低減する」との文言は維持しました。

化石燃料による火力発電については、今冬の電力需給見通しが電力大手の火力発電所閉鎖などで非常に厳しくなると予想されていることもあり、「非化石電源が十分に導入される前の段階で直ちに化石電源の抑制を始めることになれば、安定供給に支障が生じかねない」との一文を加え、安定供給に力を入れる考えを強調しています。

エネルギー基本計画改定案の電源構成

電源現行目標改定案
再生可能エネルギー22~24%36~38%
水素・アンモニア0%1%
原子力20~22%20~22%
液化天然ガス27%20%
石炭26%19%
石油など3%2%
出典:経済産業省「エネルギー基本計画素案の概要」から筆者作成

経産省は「野心的な見通し」と自画自賛

二酸化炭素など温室効果ガスの削減割合は現行計画の26%に対し、改定案で46%を打ち出しました。しかも、「50%の高みを目指す」という文言を付け加えています。再エネの増加に伴い、エネルギー自給率は現行計画のおおむね25%程度が30%程度に上がります。

国全体の電力コストは再エネの発電コスト低下や化石燃料価格が国際エネルギー機関の予測通りに低下したと仮定すれば、現行計画の9.2~9.5兆円が約8.6~8.8兆円に下がるとしています。

経産省は改定案の内容を「野心的な見通し」と命名し、従来の方針を脱皮した新スタートである点を強調しています。しかし、環境保護団体には現状維持路線の延長線上と映り、厳しい指摘が相次いでいます。

WWFは「現実味に乏しい」と内容を疑問視

「現実味に乏しい内容で、2030年の日本のエネルギー計画としては非常に心もとない」。WWF(世界自然保護基金)ジャパンは7月末、素案の公表を受けて内容を疑問視する声明を発表しました。

再エネについては、もっと大幅な拡大が可能であるにもかかわらず、潜在能力を過小評価して36~38%にとどまっていると指摘しました。多くの企業や地方自治体が再エネ目標を40~50%へ引き上げることを求めているとして、再エネ拡大の可能性を抑圧する目標と批判しています。

国際的な批判を浴びている石炭火力については、非効率な設備をフェードアウトするとしながらも、19%を維持するのは石炭火力廃止に向かう世界の潮流に反し、日本の真剣度が疑われるとしています。

WWFジャパン気候・エネルギーグループの市川大悟さんは「そもそも(温室効果ガスの)2050年ゼロを本気で実現する気があるならば、素案が不十分であるのは明らか。“現実的”という名目で積み上げ式での低い再エネ目標を掲げ、なおも(二酸化炭素)排出量の高い石炭火力を据えていては、日本の信用も産業競争力も損なわれてしまう」とコメントしました。

他の環境団体も声明で厳しく批判

他の環境保護団体もほぼ同様の反応です。気候ネットワークの浅岡美恵代表は「現行のエネルギー基本計画の枠組みをほぼ踏襲した内容で、石炭火力を残すことにしているなど、2050年までの確実な脱炭素の実現につながらない」との声明を出しました。

グリーンピース・ジャパンの高田久代プログラム部長は「産業革命以降の地球の平均気温上昇を1.5度までに抑える目標に到底足りない。2030年までにすべての石炭火力を廃止すべき」と声明でアピールしています。

自然エネルギー財団は「今回の電源構成案は従来の計画より前進した部分があり、再エネを最優先とした点は重要」と一部評価する一方で、「再エネ目標値は欧州諸国や米国の先進州が掲げる50~70%に届かず、低い水準だ」とする声明を発表しました。

経済界からは前向きに評価する声も

一方、経済界はおおむね前向きに受け止めているようです。経団連の椋田哲史専務理事は7月末の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会で「二酸化炭素排出削減とエネルギー安定供給の両立を目指す(素案の)考えは重要だ」と述べました。

日本商工会議所の広瀬道明特別顧問(東京ガス会長)は同じ日の基本政策分科会で再エネの拡大がエネルギー安定供給や中小企業の経営に及ぼす影響を懸念しながらも「現実的かつ合理的な内容である」と評価しています。

解消されない欧米諸国との格差

海外に目を転じれば、2030年の再エネ比率目標はEU平均が57%、米国ニューヨーク州は70%。石炭火力については欧州主要国が2030年までの全廃を打ち出しています。欧米との差は依然、解消されていません。

日本は資源が乏しく、周囲の国と電力を融通し合うことが難しい島国で、欧米と事情が異なります。しかし、石炭火力にこだわり続ければ、新計画を策定後にまた、欧米から厳しい批判を浴びせられることになりかねません。

今回の改定案が欧米諸国の動きや環境保護団体の主張に大きく歩み寄ったことは間違いないでしょう。ただ、最終決定までにどれだけさらに歩み寄ることができるのか、経産省の真価が問われるのはこれからです。

高田泰(政治ジャーナリスト)
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