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増えない水素ステーション、燃料電池車の普及、水素社会の実現に大きな壁【エネルギー自由化コラム】

電力自由化ニュース

水素ステーションの整備が進まず、燃料電池自動車(FCV)の売れ行きが伸びていません。水素ステーションはなぜ増えないのでしょうか?

水素は「究極のクリーンエネルギー」といわれ、次世代エネルギーの本命としてしばしば名前が上がってきました。しかし、水素社会の象徴ともいえる燃料電池自動車(FCV)の売れ行きは伸びていません。燃料を補給する水素ステーションの数が全国で100カ所にも及ばないからです。経済産業省や地方自治体は建設費を補助するなど推進に力を入れていますが、本当に水素社会はやってくるのでしょうか。

神戸では市長も出席して新ステーションを歓迎

神戸市で初めて開設された兵庫区の「神戸七宮水素ステーション」(筆者撮影)
神戸港に近い神戸市兵庫区七宮町。海の香りが漂う一角に4月、新しい水素ステーションが誕生しました。産業用ガス販売の日本エア・リキードが開設した「神戸七宮水素ステーション」です。

敷地面積は約300平方メートル。散水設備を屋上に設置するなどコンパクトにまとめ、国内最小クラスの水素ステーションとなりました。土地の確保で制約が出やすい大都市向けに工夫を凝らした施設です。建設費は約5億円。経産省と神戸市が半額以上を補助しました。

神戸市内で走行しているFCVはまだ20台足らず。頻繁に利用されているわけではありませんが、開業直前の式典には久元喜造神戸市長も出席し「FCVの普及はエネルギー源を多様化するために意義がある」などと歓迎の声を上げました。

兵庫県内はまだ2例目、水素社会に程遠い現実

日本エア・リキードがこの場所に設置したのは、市中心部の一角を占めるだけでなく、近くを国道2号線や阪神高速神戸線などの幹線道路が走り、中国、四国方面との交通の要衝に位置するからです。

ところが、ここが神戸市で初めての水素ステーションになるのです。兵庫県内でもガス大手の岩谷産業が2014年、尼崎市に設けた水素ステーションに次ぐ2例目。神戸市の人口は150万人を超え、兵庫県南部は阪神工業地帯の中核に位置づけられるのに、水素ステーションの数は寂しい限りです。

神戸市は2015年、「水素スマートシティ神戸構想」を掲げ、水素エネルギーの利活用促進に力を入れていますが、水素ステーションに限れば、十分な成果を上げられていないようです。

量産型の燃料電池車、販売は振るわず

トヨタが量産型としては世界初のセダン型FCV「ミライ」を発売したのは2014年末。走行時に二酸化炭素など排ガスを発生しないエコカーとして注目を集め、FCVが低炭素社会実現の切り札ともてはやされました。

電気自動車(EV)が外部から電気を充電して走行するのに対し、FCVは内部で水素と酸素を反応させ、電気を生み出して走ります。航続距離は東京から大阪へ到達できる600キロ以上。日産「リーフ」などEVの300キロ前後よりはるかに長く、水素の充填に必要な時間もガソリン車並みの約3分。性能の高さにも世間の注目が集まりました。

しかし、ミライの6月末現在の国内販売台数は約1,700台。ホンダが2016年からリース販売する「クラリティフューエルセル」も6月末現在で160台ほどにとどまっています。メーカー希望小売価格がミライで720万円以上と高額なことも大きな理由でしょうが、燃料の水素を補給する水素ステーションの整備が進んでいないことが最大の原因です。

圧倒的に不足する水素ステーション

大阪市中央区に開設されているイワタニ水素ステーション大阪本町(筆者撮影)
経済産業省は「水素・燃料電池戦略ロードマップ」をまとめ、FCVを2020年までに4万台、2025年までに20万台程度普及させる目標を掲げています。水素ステーションの数は2020年度までに160カ所程度、2025年度までに320カ所程度に増やす計画です。

しかし、トヨタ自動車によると、全国に設置された水素ステーションの数は90カ所ほどにとどまり、現在建設中のものも含めてざっと100カ所という状態です。しかも、設置場所はトヨタの本拠地である愛知県に16カ所、東京都に13カ所、神奈川県に12カ所など一部地域に集中しています。

全国の水素ステーション(2017年8月現在)

都道府県個所数
開設済み開設準備中
北海道-1
宮城県1-
福島県-2
茨城県1-
埼玉県8-
千葉県3-
東京都13-
神奈川県121
山梨県1-
静岡県2-
愛知県16-
岐阜県23
三重県2-
滋賀県1-
京都府2-
大阪府7-
兵庫県2-
岡山県1
広島県3-
山口県1-
徳島県2-
香川県1-
福岡県9-
佐賀県1-
大分県1-

出典:トヨタ自動車ホームページから筆者作成

北海道と福島、岡山両県では設置準備が進んでいますが、この3道県を含めた25道県では今のところ、1カ所も水素ステーションがありません。購入しても水素の充填場所がないとなれば、消費者がためらうのも当然でしょう。

1施設4~5億円、高額の整備費用が建設の妨げに

業界団体の水素供給利用技術協会は水素ステーションが増えない理由として、整備費用の問題を挙げました。標準的な規模の水素ステーション整備費用は一般に4~5億円とされています。ごく小規模のものでも推定1億円以上。1億円余りとされる通常のガソリンスタンドに比べ、はるかに高いのが現状です。

ガソリン車はたくさん走っていますから、集客さえできればすぐに利益を上げられます。これに対し、FCVはその地域で一定数の普及が実現するまで利益を上げることができません。このため、業者が整備に二の足を踏んでいるのです。

水素供給利用技術協会は「水素ステーションの増加がFCV普及のカギを握るのは事実だが、整備はまだ始まったところ。地道に増やしていくしかない」と対応に苦慮した口ぶりです。

徳島県は移動式ステーションで懸命にPR

徳島県美波町商工祭に登場し、水素エネルギーのPRをした四国太陽日酸の移動式水素ステーション(筆者撮影)
経産省や自治体は水素ステーションの増加を後押ししようと躍起になっています。設置費用は1億2,000万円を上限に国の補助金が下ります。
徳島県は徳島市に水素ステーションが2カ所ありますが、四国太陽日酸の移動式ステーションを各地に走らせ、FCV普及のPRを進めています。11月には県南部の美波町で水素充填を実演、住民らにFCVを説明しました。

徳島県環境首都課は「FCVは究極のエコカー。県内ではまだ知名度が低いので、どんどんPRしていきたい」、四国太陽日酸は「各地のイベントなどに移動式ステーションを出し、アピールしていく」と語りました。

東京都は産学官の推進チームを立ち上げ

東京都は2030年を目標に都内に150カ所の水素ステーションを整備し、約20万台のFCVを走らせる目標を打ち出しています。11月には、産学官連携の推進チームを立ち上げ、111の自治体、企業、大学などが連携することを決めました。

福島県は経産省とともに、再生可能エネルギーを生かした二酸化炭素ゼロの水素製造実証実験を2020年までに始める計画。順調に進めば東京五輪に福島産の水素が供給されそうです。

神戸市は12月に水素を燃料とする燃料電池バス(FCバス)の試乗会を実施、市中心部を走らせました。試乗会には市民ら約130人が参加し、乗り心地を味わいました。神戸市環境貢献都市課は「市民らが水素エネルギーを身近に感じてくれた」と喜んでいます。

夢の実現へ試される日本人の知恵

エコカーでは、EVがひと足早く普及し、FCV以上の注目を集めています。しかし、EV普及の加速で2040年に世界の電力消費の8%をEV充電が占めるという試算も出ています。電力不足から火力発電所が大量に増設されたのでは、それこそ本末転倒です。

水素社会が実現すれば、太陽光など再生可能エネルギーで作った電力を使い、水からエネルギーを生み出すことができます。エネルギーの多くを輸入に頼っている日本にとって、大きな夢といえるでしょう。このため、バルブ・システム機器のキッツは安価で建設できる水素ステーションの開発に着手しています。

政府は東京五輪をきっかけに水素技術を広げ、世界にアピールする考えです。コストの壁を乗り越え、どうやって水素ステーションを普及させるのか、水素社会の実現に向けて日本人の知恵が試されているようです。

高田泰(政治ジャーナリスト)
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