売電で電気を送り出すしくみと、売電量が減ってしまう電圧抑制とは?その対策は?
この記事の目次
住宅用の太陽光発電設備を設置した際、設備からの収入源となるのは売電です。
しかし、よく注意していないと気づかないうちに売電量が減ってしまうことがあります。
その原因として、電圧抑制という状態が起きている場合があるんです。
今回は、発生に気が付きにくく、ユーザー自身では対策しにくい電圧抑制について、お話します。
年間平均34,352円節約できます!
エネチェンジ電力比較診断の3人世帯を選択したシミュレーション結果で、電気代節約額1位に表示されたプランの年間節約額の平均値です。節約額はギフト券などの特典金額も含まれています(シミュレーション期間/2024年7月1日~2024年9月30日)
電圧抑制とは
電圧抑制という言葉は、太陽光発電を設置している方なら目にしたことがあるかもしれません。パワーコンディショナーの表示盤や、電力モニタにそうした表示がついていますが、これは何なのでしょうか?
売電と電気のしくみ
電気と水の性質は似たところがあります。それは高いところから低いところに流れていきます。
つまり、電気は電圧の高いところから低いところに流れていくのです。
売電とは自宅で余っている電気を、電力会社の電線に流すことですので
- 「住宅内の電圧 > 電線側の電圧」
という条件式が成り立っている状態でなくては、電気は流れていきません。
パワーコンディショナーはこの状態が成立するように、発電量と住宅内での消費量のバランスによって変動するソーラーパネルからの電圧を調整して、電気を送り出す役割を持っています。
「電圧抑制」は法律を守るための機能
ソーラーパネルで発電された電気は、住宅内の電力使用に使われた残りの余剰電力が売電されるのはご存知のとおりです。電線側(電力側系統)と住宅内の配線(宅内配線)は、買電用の電力メーターのところで接続されています。
法律上、この接続点での電圧が「95V~107V」の範囲を保つことが定められています。
この規定を守るためパワーコンディショナーに備わっている、売電する電気の電圧が高くなりすぎないようにする機能が「電圧上昇抑制(電圧抑制)」です。
パワーコンディショナーを通る電気が法律で規定されている107Vという電圧の上限値に近づくと、この機能が働いてそれ以上電圧が上昇しないように太陽光発電設備からの発電量を抑制してしまい、売電量が減少してしまうのが「電圧抑制」という状態なのです。
「電圧抑制」の2つの原因
「電圧抑制」が起きてしまうことには、2つの原因が考えられます。
ひとつは送り出す先の電線(電力側系統)の電圧が107V近い状態で、電気を送り出すためにはそれ以上の電圧を掛ける必要があるため、パワーコンディショナーの上限に達してしまい、売電を止めてしまう「電線内の電圧が高い場合」。
もう1つはパワーコンディショナーから電力側系統との接続点までの宅内配線で大きな電圧の差が生じているせいで、実際にはまだ電圧を上げられるのに、パワーコンディショナーの上限に達してしまう「住宅内の配線に問題がある場合」です。それぞれについて見ていきましょう。
「電線内の電圧が高い場合」とは?
一般には電線に流れている交流電気の電圧は100Vといわれていますが、常に100Vで一定なわけではありません。
法律(電気事業法)では「101Vの上下6Vを超えない値で維持する」と定められており、電力会社は電柱にトランスという機器をつけてこの範囲で調整しています。
つまり、電線内の電圧は「95V〜107Vの間」で動いています。
「95V〜107V」の算定方法
法律上、電線内の電圧は30分間の平均が95V〜107Vに収まっていれば良いことになっています。従って、わずかな時間であればこの範囲を超えても法律違反ではないことになります。
ですから、一日のうち数分程度は電線内の電圧が107V以上になり、売電ができない状況になる可能性はありますが、これは致し方ないことです。
しかし、安定的に107V近くになってしまっていると、一日のうちで売電できない時間が長くなり、収益に影響してしまいます。
電線内の電圧は周囲の施設で影響を受ける
近隣に工場や商業施設などたくさんの電気を使うところがあると、電力会社がそもそもその地域には高い電圧で電気を供給するように設定している場合があります。
こうした場合、その施設の昼休みや休日などで近隣地域の電気使用量が大きく減ってしまい、電線内の電圧が高くなる現象が起こります。
また、近隣の多くの家庭が太陽光発電設備を設置している場合、それらの家庭も似たようなタイミングで売電量を増やします。これにより、近隣地域に電気が余っている状態となってしまうと、これも電線内の電圧は高くなってしまいます。
このように、近隣地域の電気消費量の変動や売電によって「住宅内の電圧 < 電線内の電圧」という状態が起きやすくなることが考えられます。
「電線内の電圧が高い場合」の対策は?
こうした地域の電圧変動により、電圧抑制の状態が長時間発生しているようであれば、設置業者を通じて、電力会社に交渉をしてもらうことが良いでしょう。
- 近くの電柱などに機器を設置して電圧を安定させる
- 特別な手続きをして、パワーコンディショナーの電力抑制の設定値を変える(勝手に変えてはいけません)
などの対策を取ることができます。
住宅内の配線に問題がある場合
一方、電圧抑制の原因が住宅内の太陽光発電設備の配線にあることも考えられます。
配線の抵抗が電圧抑制の発生を早める
電圧は、配線ケーブルの抵抗が大きいと、一緒に高くなってしまいます。そして、抵抗は配線ケーブルが細く長くなるほど大きくなります。
こうした配線による抵抗により、例えば住宅内の配線(宅内配線)と電力会社の電線の接続点の電圧が105Vだったとしても、パワーコンディショナーまでの配線で107Vまで上がってしまい、パワーコンディショナーの電圧抑制機能が本来よりも早く働いてしまうことがあるのです。
「住宅内の配線に問題がある場合」の対策は?
電力会社やメーカーでは、パワーコンディショナーの出力端と売電用メーター(売電する引込電線が接続するところ)の2ヶ所で電圧を計測するようにアナウンスしています。
この2ヶ所の電圧差が2Vを超える場合には住宅内配線を見直すことを勧めています。
出典:太陽光発電設備を設置する場合の「屋内配線の電圧上昇計算」について 中部電力(株)
「電圧上昇抑制」の対策|東芝 住宅用太陽光発電システム
こうしたチェックの結果として、住宅内の配線に問題があることがわかった場合、住宅内の配線ケーブルをより太く、さらにより短いものにすることで電圧上昇を抑えることができます。
例えば配線が余って巻いてあったり、あるいはメーカーの規定する距離より長い距離を細い一般的なケーブルで繋いでしまっている場合など、ムダに電圧が上昇してしまう不適切な施工があれば、それを解消することで外の電線と電圧が近くなり、パワーコンディショナーが適切に作動できるのです。
電圧抑制に気づく方法
これまで見てきたように、電圧抑制は
- 地域の送電線の環境
- 住宅内の配線の状況
といった固定要因で発生する場合が多く、設置直後から同じ条件になってしまうので、毎月の発電総量の記録からは把握しにくくなってしまいます。
電圧抑制の発生は、パワーコンディショナーの表示ランプやエラー表示で確認できます。
また、電圧抑制の作動状態は発電モニタでも確認でき、システムによっては発生時間などを一覧表示できるものもあります。
可能であれば、このようなモニターを設置して、電力抑制のために売電が減少するような状態に陥っていないか確認することができると良いと思います。
まとめ
今回はまず電気のしくみや法律によって気がつかないうちに売電量が減少することを紹介しました。
法律にそってパワーコンディショナーの規定値を設定しておくことで、電圧抑制機能が働き売電量が減少してしまうこと。
そして、対策について紹介いたしました。