風力発電とは?仕組みやメリット・デメリットをわかりやすく解説します!
この記事の目次
風力発電は環境負荷の少ない発電方法として注目され、ヨーロッパをはじめさまざまな国が導入数を増やしている発電方法です。日本でも近年風力発電機の設置数が増え、太陽光に続く再生可能エネルギーとして認識が高まりつつあります。とはいえ、風力発電について詳しく知っている人は、まだ多くないのではないでしょうか。
この記事では、風力発電の仕組みや歴史、メリット・デメリット、今後の展望について解説しているので、風力発電に関する基本的な知識や、近年の動向などを知りたい人は必見です。
風力発電とは
どうやって発電するの?
出典:風力発電のしくみ|みるみるわかるEnergy|SBエナジー株式会社
風力発電は、風力発電機と呼ばれる大きな風車を風の力で回転させ、その動力をもとに発電する仕組みです。
具体的には、「ブレード」と呼ばれる羽の部分が風の力によって回転し、その回転の動力が発電機で電気に変換され、変圧器で昇圧された後、送電線や配電線を通って各場所へと届けられます。
風力発電機には、ブレードの回転速度を速める「増速機」や、台風のときなどに危険な回転を防ぐ「ブレーキ装置」も補助的な役割として内蔵されています。
風力発電の歴史
風力発電のベースとなる風車は、紀元前30~36世紀前からエジプトで灌漑に使用されていました。それが12世紀ごろから世界各地に伝えられたといわれています。初期の風車は主に製粉や揚水のために利用されていましたが、19世紀以後に空気力学の発展や風車の羽根に用いられる新素材の開発、風のエネルギーを電力に変換する技術が進歩したことにより、風車は高性能の風力タービンへと進化していったのです。
世界初の風力発電は、1887年にイギリス・グラスゴーのJ.ブライスが垂直風車により出力3kWの発電を開始したこととされています。デンマークのP・ラクールにより現在の風力発電機の基礎となる風力発電装置が作られました。日本では、技術者である山田基博が1949年に札幌で株式会社山田風力電設工業所を設立し、風車の本格的な製造を開始したのがはじまりです。
そして、今や風力発電は環境負荷の少ない再生可能エネルギーを使用した発電方法として、世界的に注目されています。
風力発電の設置場所
風力発電の設置場所は、大きく「陸上」と「洋上」に分けられます。
陸上風力発電所
名前の通り、陸上に風力発電設備を作る方法です。一定以上の風速の風が安定して吹いている広い土地があれば、陸上風力発電所の設置に向いているといえます。日本では北海道や東北、九州地方に多く設置されており、北海道の苫前町には大規模なウインドファームがあります。
洋上風力発電所
海洋上に風力発電の設備を作り、発電する方法のことです。陸上に比べより大きな風力を安定的に得ることができ、さらに騒音や万が一の人的被害などのリスクも避けられることがメリットです。
また洋上といっても海の上だけを指すのではなく、湖やフィヨルド、港湾などに設置するものも含めて洋上風力発電と呼びます。
島国など海岸線が長い場所、遠浅な海上が確保できる場所に向いており、現在はヨーロッパを中心に設置が進められています。
浮体式洋上風力発電所
洋上風力発電のうち、浮体式の基礎を用いたものを浮体式洋上風力発電所と呼びます。日本のように海が深く、海底に基礎を設置できない場所でも利用できるように作られたものです。
風力発電の事例
国内にはどんな風力発電所があるのでしょうか。事例をいくつか紹介していきます。
- アグリランドえい風力発電所
- 所在地:鹿児島県南九州市頴娃町
- 設置認定日:2009年1月
- 自然公園「夢・風の里アグリランドえい」に設置されている陸上風力発電所です。風車自体は495キロワットと小規模なものですが、発電した電気は公園内の照明など、公園を運営するためのエネルギーとして使用されています。
- 新青山高原風力発電所
- 所在地:三重県津市
- 運転開始日:2017年2月
- 国内最大級のウィンドファームで、発電出力は8万キロワットにも及ぶ陸上風力発電所です。風力発電施設は室生赤目国定公園内にあり、併設している「風のめぐみの館」では再生可能エネルギーに関する教育や情報発信にも取り組んでいます。
出典:新青山高原風力発電所
- ウィンド・パワーかみす洋上風力発電所
- 所在地:茨城県神栖市南浜
- 運転開始日:2010年6月
- 護岸から40~50mの水域に、第1、第2の洋上風力発電所があり、合計発電出力は3万キロワットです。岸から風車までに管理橋が架けられているため、陸上風力発電所と同様のメンテナンスを行うことができます。
風力発電のメリット・デメリット
風力発電は再生可能エネルギーを使用している点で、環境に優しいエネルギーとして注目されていますが、メリットがあればデメリットも存在します。ひとつずつ確認していきましょう。
風力発電のメリット
- 環境負荷が少ない
- 最大のメリットは何と言っても、二酸化炭素や有害物質を排出せず、環境負荷が少ない点です。また、地球上にいる限り永久に発生する風を使った発電方法であることも注目すべきポイントです。
- 変換効率が高い
- 電気エネルギーの変換効率とは、入力したエネルギーに対してどれだけ電気が発生したかの割合を指します。
太陽光発電の変換効率は約20%、木質バイオマス発電は約20%、地熱発電は10〜20%、風力発電は20〜40%とされており、風力発電は他の発電方法よりも高効率でエネルギーを電気に変換できるといわれています。ちなみに一番変換効率がよいのは、水力発電の約80%です。出典:発電効率が1番いい自然エネルギーはなに?|Looop Club - 風が吹けば夜間でも発電できる
- 太陽の出ている時間のみ発電ができる太陽光発電とは異なり、風力発電は、昼夜関係なく風が吹けばいつでも発電が可能です。
風力発電のデメリット
- 発電量が風速に左右される
- 風の力で発電しているので、風力が弱いと当然発電量は落ちてしまいます。
設置する際は、年間を通して一定以上の風が吹く場所であることを確認する必要があります。 - 騒音が発生する
- 風車が回ると低周波音や機械音が発生し、近隣に生活圏があると騒音問題になる可能性があります。
- 設置のための適所が限られている
- 風力発電機を設置するためには、風況や周辺環境への影響を配慮しなければならず、適した場所が限られています。
騒音や景観の問題だけではなく、年間を通じて一定以上の風の吹く場所でなければ、風力で発電をすることができないのです。
風力発電の現状と今後の展望
たとえば、日本は「エネルギーミックス」の取り組みの中で、2030年には電源構成(電力を発電する方法の組み合わせ)のうち1.7%を風力発電とすることを目指しています。しかし2017年の時点では、その34%ほどしか導入が進んでいないのが現状なのです。
現在の日本の風力発電コストは、13.9円/kWhで、世界平均の8.8円/kWhの約1.6倍となっています。今後、新型風車の開発・運営までになうことのできる「総合産業」としての風車メーカーの育成を行い、強い風車産業をつくることが必要とされます。さらに、メンテナンスの効率化や保守運用をおこなう人材の育成を進めるなど、効率的で安定的な発電システムを確率することが求められます。
また、陸上風力発電の開発が進み、適地が減少してきているため、海域を利用した洋上風力発電が注目を集めています。しかし、一般領域を長期で占用することについての統一的なルールが定められていないため、占用期間は3~5年と短期間で中長期的な見通しが立てにくい、海運業・漁業などの先行利用者との調整に関わる枠組みが存在しないため、予期できないリスクと膨大な調整コストが事業実施の大きなハードルになるなどの課題があります。
今後、日本での風力発電のさらなる導入に向け、これらをはじめとするさまざまな課題を解決し、国内でよりよく風力発電所を運用できる体制を作っていくことが求められるでしょう。
出典:これからの再エネとして期待される風力発電|資源エネルギー庁
日本でも、海の上の風力発電を拡大するために|資源エネルギー庁
まとめ
風力発電の基本的な知識について解説しました。風力発電は日本でもこれからさらに注目されていく再生可能エネルギーを使った発電方法のひとつです。再生可能エネルギーが多くの日本人の生活の一部をまかない、身近な存在になる日もそう遠くないかもしれません。
ぜひ消費者として、基礎的な知識を身につけておきましょう!