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電力自由化で気になる「電力の安定供給」って何?

電力自由化

2016年の電力自由化において、一般に不安の声が聞かれるのは「電力の安定供給」についてです。そもそも「電力の安定供給」とはどういうことで、安定が失われるとどういった問題が起きるのか、そしてどのように安定させているのか、「予備力」の仕組みについてなど、これまでと今後のシステムをご紹介いたします。

電力自由化について、一般に言われる不安のひとつが電力の安定的な供給です。これまでは地域の電力会社がほぼ独占的に電力を供給していましたので、電気の安定供給というのは電力会社の責任の下で行われていた部分がありました。しかし、自由化になると新規参入業者が出てくるほか、発送電分離が現実に始まると、送配電事業者が需要家への供給責任をもつことになります。今回は安定供給について考えてみましょう。

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消費量に生産量を一致させる「同時同量」

電気は生産と消費が瞬時にほぼ同時におこなわれる特徴があるため、電力の安定を維持するためには変動する消費量にあわせて、発電量を一致させ続ける必要があります。これを「同時同量」と呼びます。

精密さを求められる「同時同量」の実現

同時同量を実現するために、現行制度では、一般電気事業者(電力会社)が供給エリア全体の需要量と発電量が一致するように精密な発電所の運転を行うことにより、供給エリア全体の安定を保っています
一方、新電力(新規参入業者)にも電気事業法で同時同量の義務が課されています。しかし既存の電力会社の電力系統(送電網)を利用して電気を供給する際に、瞬時瞬時に需要と供給をあわせることは技術的に難しいため、30分間における発電量の合計値と需要量の合計値を一致させるように努め、その差を契約電力の上下3%以内に収めることとしています。これを「30分同時同量」と呼んでいます。

需給バランスはどう保つ?

電気はその性質上、大量にためておくことはできないので、電力の需要にあわせて発電機を細かく調整し、あわせてゆく必要があります。このためには電力需要を正確に予測するとともに、それを上回る余裕ある発電量(供給予備力)を確保する必要があります。

電気の予備力とは?

厳密にいうと、予備力とは最大需要に対する供給の余裕度を示します。電気の安定供給のためには、8%から10%の予備力が必要だとされています。需要の最盛期に発電機の点検や補修などをを避けたり、それでも不足する場合は他社から融通を受けたりすることが求められています。

電力の安定が崩れるとはどういうこと?

電力の需給バランスが崩れると、周波数が変動することにつながります。供給より需要が多いと周波数は低下し、逆に需要が少ないと周波数は上昇します。周波数が変動すると工場の精密な生産機械などの動作に影響を与えたり、大規模な停電につながったりして、社会に与える影響は非常に大きくなります。

電気の品質

現代の日本ではあまり気にされることがありませんが、電気にも「品質」があります。
日本の電気は「品質が良い」と言われますが、それは周波数の変動や電圧の変動などががあまり起こらないからです。こうした周波数や電圧の変動が起こるとモーターなど回転する機械に影響が大きいため、工場などで生産設備に大きく影響します。

このほかフリッカという継続的な微小電圧変動が起こると、照明のちらつきなどが起こるほか、瞬時でも電圧低下が起こると機器の異常動作を招くなどの影響があり、最近ではエレクトロニクス技術関連の機械に影響が出ることが多くなっています。こうした影響を最小限にするために各電力会社は細心の注意を払って電気の品質管理を徹底しています。

電力小売りの完全自由化で安定供給はどうなる

電力自由化が達成されると地域電力会社による地域独占がなくなるので、電力会社に課されていた供給義務も撤廃されます。これにより、安定供給はどうなってしまうのでしょうか?

安定のための責任は、送配電事業者に移っていく

発送電分離が進むと、送配電事業者(系統運用者)が地域内の電力需要と供給のバランスを維持することが求められます。送配電事業者は需給バランスを厳密に管理し、周波数を適切に調整することが義務づけられています。仮に長期的に供給力不足になるような場合は、「広域的運用推進機関」(広域機関)が電源確保に万全を期すことになっています。

3種類の予備力

予備力には3つの種類があります。

一つが瞬動予備力で、電力網の周波数の変動に応じて自動的に出力を上下し、おおむね10秒以内に応答することができるものです。出力を低めに抑えた一部の発電所や、他の電力網との融通などでこの瞬動予備力が確保されます。
二つ目が運転予備力で、10分以内程度で起動して確保されるものです。主にガスタービン火力発電や、放水することで発電を開始できる水力発電など)、そして三つ目が運転予備力によって対応可能な数時間程度の間に稼働できる待機予備力(運転停止中の火力発電など)です。

課題も

送配電事業者(系統運用者)は時々刻々、周波数を維持するために出力の増減を指令しますが、新規参入会社の増加で、30分単位で出力を調整する電源が増えることや、再生エネルギーの導入増加で、周波数維持のための調整やコストが増加する可能性もあります。今後、送配電事業者がしっかりと調整力を確保するために、発電事業者間のルール作りなど精密な仕組みを構築することが必要です。

まとめ

電力小売りの全面自由化後も、電気を安定かつ確実に供給することの重要性は変わるものではありません。需要と供給のバランスをしっかりと調整し、必要な供給力や予備力を確保するために電力市場に参加する事業者の責任ある対応が求められています。

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