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楽天エネルギー事業部長が語った、電力自由化への取り組み

電力自由化ニュース

電力自由化でポイントサービスに注目が集まる中、楽天スーパーポイントを擁する楽天による参入の動きはスローペースとも言える状況でした。その戦略的な理由や、これからの電力自由化、エネルギー事業の考え方について、楽天の菅原エネルギー事業部長の講演をレポートします。

電力自由化に対してはじっくりと取り組む楽天

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楽天は、2013年から楽天トラベルを利用しているホテル・旅館や実店舗を持った楽天市場の出店者に向けて電力を販売する「楽天エナジー」サービスを展開しています。こうしたことから2016年の電力自由化に際して家庭向けの電力販売に乗り出してくるのでは?と注目されていましたが、後で触れるクレアールエナジーへの出資や丸紅との低圧需要家向けの業務提携の発表はあったものの、2016年3月1日時点で「楽天」ブランドを冠した家庭向け電力販売は発表されていません。

眠れる巨人としてその動向が注目される中、2016年3月2日に開催された電力自由化EXPO2016の専門技術セミナーで、楽天の菅原雄一郎エネルギー事業部長は「様々な商材を扱う楽天にとって、電気は特別な商材ではありません。これまでのノウハウを活かす形で、楽天経済圏に電気を取り込むのが私のミッションです」と楽天の立場を説明しています。
楽天はこれまでにも旅行や金融・決済、モバイルのような特有の規制がある業界への参入経験も豊富なため、電力という新しい市場であってもこれまで同様に取り組む、というのが基本姿勢ということのようです。

その上で、今回の電力小売全面自由化に対しては

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    ルール決めから実際の自由化までの期間が短く、戦略的自由度が低いので、戦略を立てる余裕がある2017年のガスの自由化を見据えることにした

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    アフリカのことわざにも「ガゼルはチーターより早く走る必要はない、いちばん遅いガゼルより早ければ良い」というものがある。楽天カードもスタートは伸び悩んだが、今年にはカード業界最大手になる

と、楽天としてはじっくりと、慌てずに取り組む姿勢を取っていることを説明しました。

楽天の選択は「LPガス」との連携

今回の講演で、菅原氏は「楽天におけるエネルギービジネス」というトピックに触れ、LPガス事業者との連携を重視する姿勢を示しました。

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楽天が出資したクレアールエナジー社のサイト
これまでの楽天の動きを見ると、2015年の12月に千葉県のLPガス事業者クレックスが設立した「クレアールエナジー」社に出資しています。当時のプレスリリースによれば、同社と共同で1万件の簡易HEMSを配布して電力事業の検討を進めた結果、ユーザーの電力消費データと楽天IDの連携が有効であることや、消費者に近く直接訪問の機会も多いLPガスと「楽天スーパーポイント」の組み合わせに優位性があると確認できたとして、出資に踏み切ったとしています。

楽天とクレックスは今年7月、家庭および法人事業者に対して、新サービスを共同で開発するため、約1万世帯のモニター募集を通じて顧客ニーズなどを調査してきました。その結果、簡易HEMS(注1)から得られるエネルギーデータと顧客のマイページとの連携による有効性、LPガス事業者の強力な販売チャネルと「楽天スーパーポイント」の組み合わせによるサービスの優位性等を確認し、両社の強みをより生かすため、第三者割当増資の引き受けを決定しました。

出典:楽天、小売電気事業のクレアールエナジーに出資

また、2016年の2月には業界2位のLPガス事業者であるアストモスエネルギーと提携し、LPガスの購入に際して「楽天スーパーポイント」を付与するサービスを発表しています。

楽天がLPガスを重視する理由

電力小売事業へ参入するにあたってLPガスに着目した理由について、同氏は

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    楽天に出店している4万店はほとんどが中小企業です。LPガス事業者も全国に2万社超ある。こうした中小をエンパワーメントするのは、楽天の得意とするところです。

と説明し、自社の得意とするビジネスモデルとの親和性を指摘しました。
また、まさに多数の中小企業を束ねた楽天市場のように、LPガス事業者を束ねるためのプラットフォーム構想に触れました。先に触れたプレスリリース中でも「2017年の都市ガス小売事業全面自由化後のエネルギーインフラ業界の構造変化を視野に入れて積極的に検討」とされていたこの構想について、4月には発表したいとのことです。
なお、クレアールエナジー社は2016年2月23日時点で発表されている登録小売電気事業者一覧には掲載されていない

ポイントサービスの強みを活かした展開へ

このようにガス自由化後の市場環境を見据えて、家庭向け電力小売への参入については現時点で様子見の姿勢をとった楽天ですが、今後、家庭向けのエネルギービジネスをすすめる上での戦略については、すでに検討が進んでいるようです。
先に触れたクレアールエナジー社との提携のプレスリリースにおいては

また、電力およびガスの小売自由化に伴い、様々な業界から事業者の参入が予想されており、今後クレアールが得たノウハウ等を活かしたサービスプラットフォームを新規参入事業者などへ展開することで、取次等を含めた営業・契約モデルの推進や、FIT電気(注2)およびゼロエミッション電源(水力、再生可能エネルギー(FIT電気を除く))の販売モデルの開発に取り組んでいきます。

出典:楽天、小売電気事業のクレアールエナジーに出資
と言及し、この際の記者会見で菅原事業部長も過度な価格競争に陥らない電気の差別化戦略として「再生可能エネルギーが有力」と答えていたのですが、今回の講演においては「楽天スーパーポイント」の活用を中心とした戦略が披露されました。

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    楽天としては、まず電気を払うとポイントが付くという世の中を待っていました。これは今年実現した。

とし、楽天がポイントサービスで勝負できる環境が整ったことを指摘、その上で

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    楽天の会員様はポイントが貯まるスーパーセールが大好き。例えば「楽天スーパーWiFiを使えばポイントが9倍」という形でも、他の商品のまとめ買いで付与されるポイントでペイするか計算して加入してくれる。スーパーセールに電力を組み込んだり、デマンドレスポンスでポイントを山分けしたり、いろいろ考えられる。300円安いとか400円安いではない差別化ができる。

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    ポイントには
    ・値引き以上のインパクトを演出できる
    ・施策にフレキシビリティーをもたらす
    ・電気という、まさに色がつかない商材に差別化要素をもたらす
    などの差別化マーケティング効果がある。楽天スーパーポイントはネットでもリアルでも使えるので、自由化の恩恵を全国に広げる効果もある。

と、電力事業の付加価値を楽天スーパーポイントで生み出す戦略を紹介しました。

楽天の電力・エネルギーサービスの動向は、消費者としても目が離せなくなりそう

このように、楽天が展開しようとしているエネルギー事業はポイントサービスを活かしたものとなりそうです。現状、東京ガスの「パッチョポイント」が楽天スーパーポイントに交換可能なほかは楽天ユーザーにとってうれしい電気料金プランがないこともあり、ガスを含めた楽天のエネルギーサービス展開については目を離せないものとなりそうです。

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