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広がる生協の電力小売り、持続可能な社会実現を再エネで後押し【エネルギー自由化コラム】

電力自由化ニュース

現在、全国18の生活協同組合・日本生協連合が、電力小売り事業に参入しています。安心、安全な食品の販売と同様に、環境やエネルギー面でも再エネの調達・供給を通じて、持続可能なエネルギー社会の実現に貢献することを目標としています。

生活協同組合の電力小売り事業参入が徐々に広がってきました。日本生協連合会のまとめによると、2018年度末で大阪府の大阪いずみ市民生協、兵庫県のコープこうべなど全国18の生協・連合会が参入していますが、11月から長野県のコープながのが新たに電力供給を始めました。安心、安全な食品の販売で組合員から評価される生協が、なぜ電力販売に取り組むのでしょうか。

コープながのが11月から販売開始

コープながのは1992年、長野県民、長野、長野県学校、南信の4生協が合併して発足しました。組合員数は約31万人で、2018年度の総事業高が約400億円。長野市と安曇野市に店舗を構えているほか、長野県全体を販売エリアにして食品や日用品の宅配をしています。

関東、信越地方の7生協で組織するコープデリ連合会に加盟し、11月から「コープデリでんき」として電力供給を開始しました。

コープデリ連合会加盟の生協としては、東京都と埼玉、千葉両県を活動区域とするコープみらい、茨城県のいばらきコープ、栃木県のとちぎコープ、群馬県のコープぐんまに次ぐ5例目になります。

再エネ比率で2つのプランを用意

提供するプランは再生可能エネルギーで発電した電力が約85%を占める「FIT電気」と、再エネ電力が35%の「ベーシック電気」の2つ。FIT電気は再エネを希望する組合員、ベーシック電気は割安の電力を求める組合員向けのプランです。

FIT電気は日本生協連が設立した東京都の地球クラブから供給を受けます。太陽光や風力、木質バイオマス発電で作った電力が中心です。一方、ベーシック電気は滋賀県大津市のエネサーブから調達します。

年間の電気料金は40アンペア契約の1か月電力使用量400キロワット時で燃料費調整額と再エネ発電促進賦課金を除き、FIT電気が13万1,892円、ベーシック電気が12万5,856円です。中部電力の従量電灯B・C契約に比べ、年間1,524~7,560円安く設定しました。

コープデリ連合会は再エネ普及へ意欲的

コープデリでんきはコープデリ連合会が事業基盤を整備したうえで、参入する加盟生協が販売しています。組合員に再エネで発電した電力をより多く供給し、再エネの普及促進を図るのが狙いです。

4生協合計の販売件数は既に5万4,000件を突破しました。千葉県多古町次浦にある多古町旬の味産直センターのサポートセンター屋上に設けられた出力71.5キロワットの太陽光発電施設が8月から稼働を始めるなど、契約拡大に合わせて再エネ施設の確保も進めています。

コープデリ連合会は「食品と同様にエネルギーも安心、安全なものを組合員に提供したい。そのためには原子力発電ではなく、再エネのさらなる普及を図る必要がある」と説明しています。

先駆けは大阪いずみ市民生協

全国の生協に先駆けて電力小売りに参入した堺市堺区の大阪いずみ市民生協本部。電力販売の契約件数は4万件を突破した(筆者撮影)
電力小売りに参入した18の生協・連合会のうち、先駆けとなったのが2016年4月の電力小売り全面自由化とともに参入した大阪いずみ市民生協です。
創立は高度経済成長が曲がり角を迎えた1974年。堺市堺区南花田口町に本部を置き、堺市と東大阪市以南の大阪府内25市町村を活動区域にしています。

堺市や東大阪市、泉佐野市など7市に合計10の店舗を開設しているほか、宅配や団地などでの移動販売を展開、2018年度で931億円を売り上げています。組合員数は2019年3月末で約53万人に達します。

このほか、都市ガスの販売、サービス付き高齢者住宅や高齢者総合ケアセンター、介護付き有料老人ホームの運営、障害者就労継続支援など幅広い事業を進めているのも特徴です。

4月から再エネ100%のゼロプランをスタート

発電施設は大阪府和泉市にテクノステージ物流センター太陽光発電所(出力1.25メガワット)とあゆみ野物流センター太陽光発電所(出力1.0メガワット)、奈良県天理市に奈良・天理太陽光発電所(出力1.0メガワット)、京都府亀岡市に京都・亀岡太陽光発電所(出力7.5メガワット)を持っています。

4カ所を合計した総出力10.75メガワット。年間の発電量は2018年度で一般家庭約4,200戸分に当たる1,392万キロワット時に及びます。従来販売してきた割安の電力プランに加え、2019年4月から再エネ電力100%で、二酸化炭素の排出係数をゼロにした「ゼロでんき」プランを始めました。販売価格は関西電力の従量電灯Aと同等に設定しています。

大阪いずみ市民生協の契約件数は7月で4万件を突破し、現在4万1,700件に達しました。大阪いずみ市民生協は「組合員の暮らしや環境に配慮した電力を供給し、さらに契約件数を伸ばしていきたい」と語っています。

電力事業参入は全国18の生協・連合会

日本生協連によると、電力小売り全面自由化後、2016年度は大阪いずみ市民生協を皮切りに、北海道のコープさっぽろ、滋賀県のコープしがなど6生協・連合会が電力小売り事業に参入しました。

その後、コープこうべ、宮城県のみやぎ生協、京都府の京都生協など各地の有力生協が相次いで電力販売を始めたのです。日本生協連が地球クラブを2014年に設立し、再エネ比率の高い電力を提供していることも後押ししました。

2018年度末現在で電力事業に参入した生協・連合会は全国で18に達します。これに伴い、地球クラブの電力販売量も2015年度の8,552万キロワット時が2018年度で3億2,377万キロワット時まで伸びました。

電力小売り事業に取り組む主な生協

コープさっぽろ
北海道
青森県民生協青森県
みやぎ生協宮城県
コープぐんま
群馬県
とちぎコープ栃木県
いばらきコープ茨城県
コープみらい東京都など
コープながの長野県
コープしが滋賀県
京都生協京都府
市民生協ならコープ奈良県
大阪いずみ市民生協
大阪府
コープこうべ
兵庫県
出典:各コープホームページなどから筆者作成

日本生協連も積極的にバックアップ

日本生協連は2011年の東日本大震災をきっかけに再エネの普及に力を入れ、2020年までに事業用電力の20%を再エネでまかなう計画を打ち出すなど、持続可能な社会の構築を大きな目標としてきました。これを受け、生協の電力プランには再エネ比率の高いものが含まれているほか、各生協は再エネ電力の産地直送にも目を向けています。

その一方で、各生協は組合員の家計を助けるため、電力大手より安く販売するメニューを用意しました。関西では関西電力が2017年に原発再稼働に合わせて電力料金を値下げした際、大阪いずみ市民生協、京都生協、コープこうべがそろって対抗値下げを実施しています。

日本生協連は「電力小売り事業に取り組む生協は再エネの調達、供給を通じて持続可能な社会実現に貢献することを目指している。日本生協連としても引き続き環境・エネルギー面の課題解決に取り組んでいきたい」と意欲を見せています。

高田泰(政治ジャーナリスト)
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