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石炭火力計画ラッシュに逆風、新増設計画に各地で異論相次ぐ【エネルギー自由化コラム】

電力自由化ニュース

福島第一原子力発電所の事故後に進められてきた石炭火力発電所の新増設計画に環境省が待ったをかけ、2017年に入って4基の計画がストップするなど波紋が広がっています。石炭火力増設に対する賛否、石炭火力のメリットデメリットもあわせてお伝えします。

福島第一原子力発電所の事故を機に全国で浮上していた石炭火力発電所の新増設計画に逆風が吹き始めました。地球温暖化防止パリ協定の発効や電力需要の低下から、これ以上の石炭火力増設は不要との声が高まってきたためで、環境省も石炭火力発電所の増加に危機感を強めています。40を超す新増設計画が乱立する石炭火力の行方は混とんとしてきました。

神戸製鋼所の増設計画に市民から反発相次ぐ

石炭火力発電所の増設が計画されている神戸市灘区の神戸製鋼所神戸製鉄所(筆者撮影)
「国の二酸化炭素(CO2)排出量削減目標の達成を困難にする」「大気汚染物質による健康被害が心配」。
神戸市灘区民ホールで8月に開かれた公聴会では、神戸製鋼所が灘区の神戸製鉄所で増設を目指す石炭火力に対し、市民から厳しい声が相次ぎました。
神戸製鋼所は神戸製鉄所に合計出力140万キロワットの石炭火力2基を稼働中ですが、新たに2基の石炭火力を増設する計画。2基の合計出力は130万キロワットで、2021~2022年度に順次稼働させるとしています。

公聴会は条例に基づき、神戸市が開いたもので、市民ら約80人が傍聴しました。予定地は住宅密集地からわずか400メートル。小児科医は「子どもの呼吸器機能低下やアレルギー体質の増加が懸念される」、神戸大の研究者は「温暖化防止の目標達成を著しく害し、窒素酸化物の排出量も大幅に増える恐れがある」と計画に反対しました。

神戸市の審査会でも計画内容に疑問の声

神戸製鋼所の環境影響評価準備書を審査する神戸市環境影響評価審査会は、公聴会に先立って神戸市中央区で開かれ、委員からCO2削減策の説明が不十分などと批判する声が相次ぎました。

今回が2回目の準備書審査でしたが、議論は第1回に続いて温暖化対策に集中します。委員の中には神戸製鋼所の計画を「疑問だらけで容認しがたい部分がある」と反発する声があったほか、具体的なCO2対策を問う声も出ました。

これに対し、神戸製鋼所は「検討している段階。時期が来れば神戸市に対し、何らかの見解を示す」としています。

石炭火力のCO2排出量はLNGの6割増

電力中央研究所によると、石炭火力が排出するCO2の量は、石油火力のざっと3割増、LNG(液化天然ガス)火力の6割増、コンバインドサイクル発電のLNG火力のほぼ2倍になります。石炭火力は火力発電の中でCO2排出量が最も大きいのです。

コンバインドサイクル発電とはガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた発電方式で、ガスタービンを回したあとに出る排熱で蒸気タービンを動かします。

電気事業連合会のまとめでは、発電のためのエネルギー源のうち石炭が占める割合は2014年度で31%。1973年度の4.7%、2010年度の25%から大幅に増えています。エネルギー安全保障の観点から石油依存度を下げた結果、石炭火力が増えたわけです。

2012年以降で49の新設計画が登場

石炭火力発電所の主な新増設計画

事業者場所出力(万キロワット)
千葉袖ケ浦エナジー千葉県袖ケ浦市200
関電エネルギーソリューション、丸紅秋田県秋田市130
神戸製鋼所神戸市130
JERA神奈川県横須賀市130
山口宇部パワー山口県宇部市120
中国電力、JFEスチール千葉県千葉市107

出典:経済産業省資料から筆者作成

石炭火力増設の動きが加速したのは、福島第一原発の事故からです。当時、電力不足が心配されたこともあり、政府の音頭で多くの事業者が増設計画を打ち上げました。

環境団体の気候ネットワークによると、2012年以降に計画された国内の石炭火力は49基。うち、2基は既に稼働し、4基が計画中止や変更となりました。そして、43基の計画が今も進行しています。

この中で大型施設は、千葉袖ケ浦エナジーが千葉県袖ケ浦市に計画中の千葉袖ケ浦火力発電所(仮称)の200万キロワット、関電エネルギーソリューションと丸紅が秋田県秋田市に計画する秋田港火力発電所(仮称)の130万キロワット、中国電力とJFEスチールが千葉市で計画中の蘇我火力発電所(仮称)の107万キロワットなどです。

2050年度で2013年度比80%削減が日本の目標

環境省によると、国内の温室効果ガス排出量は2015年度で13億2,500万トン(CO2換算)。省エネの推進や電力需要の減少などから増加に歯止めがかかっていますが、1990年度の11億6,200万トンを上回り、高い傾向にあるとの見方もできます。

2016年に発効したパリ協定を受け、政府は2013年度比で2030年度までに26%、2050年度までに80%削減の目標を掲げています。かなり高いハードルとみられ、実現には国を挙げた努力と技術革新が欠かせません。

それなのに、石炭火力の新増設計画が続いているのです。全国の電力需要が2026年度まで年平均0.2%増えると予想されていることや、電力自由化で低コスト電力の需要が高まっていることも、火力発電で最も低コストの石炭火力に注目が集まる理由の1つでしょう。

2017年に入り、4基の計画がストップ

ところが、2017年に入って計画の中止や変更が相次ぐようになりました。関西電力は1月、兵庫県赤穂市の赤穂発電所2基の燃料を石油から石炭に切り替える計画を中止しました。関電エネルギーソリューションが東燃ゼネラル石油(当時)と組み、千葉県市原市で検討していた石炭火力新設計画も3月に断念しています。

関西電力は石炭火力をベースロード電源として活用する方針を変えていませんが、「赤穂は電力需要の減少から、市原は東燃との協議の結果、中止することにした」と説明しました。

前田建設工業は岩手県大船渡市で計画していた大船渡港バイオマス混焼石炭火力発電所(仮称)の燃料を木質バイオマス専焼に切り替える方針を6月、明らかにしました。変更理由はパリ協定発効を受けた措置などとしています。

環境省の強い姿勢も風向きの変化に影響

石炭火力見直しの背景には、環境省の「経済性だけで新増設を認めない」との姿勢があります。環境省は8月、経済産業省に対し、中部電力が石油火力から石炭火力への転換を目指す愛知県武豊町の武豊火力発電所について再検討を促す意見書を送りました。

環境省は現在の計画すべてが稼働すると、温室効果ガスの排出量が目標を大幅に上回るとして危機感を抱いています。武豊火力発電所には2015年にも環境負荷が大きいとして見直しを求めており、同一計画では異例の2度目の待ったをかけたことになります。

中川雅治環境相は記者会見で「このまま石炭火力が設置されればCO2の削減が実現できなくなる。経産省や事業者はCO2の削減を念頭に置いてほしい」と決意を示しました。

世界の潮流は「脱石炭」、6,000万キロワット以上を廃止

さらに、電力需要が予想に反して減少していることに加え、原発の再稼働や太陽光など再生可能エネルギーの利用拡大が続いていることも、風向きの変化に影響を与えているようです。

海外では欧州を中心に過去2年間で大型石炭火力120基に相当する6,000万キロワット以上の石炭火力が廃止され、中国やインドでも100カ所を超す計画が凍結されました。世界の潮流が脱石炭に動いていることは否定できません。

政府は8月から経産省の審議会でエネルギー基本計画の見直し作業に入りました。近く長期エネルギー政策を検討する懇談会もスタートします。気候ネットワークは「事業者の多くが国のエネルギー政策に従っていることを大義名分にしているが、これまで通りのエネルギー政策でよいのか、社会全体で考える時期に来た」と指摘しています。

高田泰(政治ジャーナリスト)
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