イギリスの電力自由化 第二回:どんなサービスが提供されているの? | ケンブリッジレポート
この記事の目次
2016年、日本で電力自由化が行われます。すると、私たちは、これまでのように決められた電力会社から電気を購入するのではなく、自由に電力会社を選び、電気を購入できるようになります。
ここでは、すでに電力自由化を成功させているイギリスの事例をもとに、電力会社を自由に選べるってどんな感じなのだろう、ということをお伝えしていきたいと思います。
こちらの記事は、全三連載となっています。
- 第一回記事はこちら
- 【電力自由化】第一回:電力会社を自由に選べるってどういうことだろう?
- 第三回記事はこちら
- 【電力自由化】第三回:より安く、より自分にあった会社・プランを選ぶことができる時代へ
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電力会社を自由に選べるって、どんな感じなのだろう?
電力が自由化されると、多種多様な分野から多くの事業者が新規参入してきます。新規参入の事業者が提供するサービスは、今までの大電力会社とどのように違ったものになるのでしょうか?すでに電力自由化を成功させているイギリスの事例を元に見ていきたいと思います。イギリスの一般家庭の消費者は、以下のような視点で各々が自由に電力会社を選び、契約しています。
料金プランの安さ
イギリスの電力小売り事業者の中には、Cooperative Energyという日本の生協のような協同組合形態をとっている事業者があります。Cooperative Energyは企業形態が利益をメンバーで折半する非営利目的の会社であるため、大変安い料金プランで電気を供給しているため、消費者は大電力会社と契約していた時よりはるかに安い値段で電気を購入することが出来ます。
顧客サービスのよさ
イギリスにはOvo Energyという、顧客サービスに大変力を入れている電力事業者があります。Ovo Energyは、消費者が見やすくわかりやすいサイトを作り、SNSでの質問や意見にも丁寧に答え、カスタマーサポートセンターの受け答えも大変丁寧にした結果、消費者の95%もの人々が「この会社と契約をしてよかった」と満足しているという調査結果が出ています。消費者は、サービスの良さを重視して電力会社を選ぶこともできます。
自然エネルギー(再生可能エネルギー)の重視
イギリスの新規事業者の中には、Good Energyという、再生可能エネルギーを多く取り入れ、環境に優しいプランであることに力をいれている事業者もあります。Good Energyのプランは、化石燃料などを元にした安さが売りのプランと比べると電気料金は少し高めですが、それでも大手電力事業者の料金と同等程度で、再生可能エネルギーを主に利用するプランを提供しています。消費者は、環境面を重視してプランを選ぶこともできます。
私たち消費者はサービスを選ぶ際、値段の他に、顧客サービスの良さや環境への配慮など、それぞれの観点で自由にサービスを選ぶのが普通です。しかしこれまで日本の電力市場では、決められた一つの電力会社からしか電気を購入できませんでした。2016年に電力小売りが全面自由化されると、上記のイギリスの例のように、自由に電力会社を選び、電気を購入することができるようになるのです。
なぜ新しい電力会社は電力を安く提供できるの?
新しい電力会社はなぜ料金プランを安く提供できるのでしょうか?それには以下のような理由があるのです。
大企業ではないから
イギリスの事例を見ていくと、その理由はやはり、古くからある大企業ではないという点が大きいのです。旧来の電力会社は大きな組織を持つため、会社維持・人件費・福利厚生に多くのコストがかかります。そうした構造を持ったまま、自由化によってはじめて競争に晒されているので、価格面での競争力がありません。
いっぽう新規参入の事業者は当初から低コストの組織構造を作っているので、売り上げの中の業務コストの割合は旧来の電力会社の1/2程度に抑えられている場合もあります。
利益を圧縮できるということ
新規参入事業者が不利な面もあります。こうした事業者は大規模な発電所を持たず、例えば発電が専門の事業者や、ソーラー発電を備えた家庭、自前の発電設備を持った大きな工場などから電力を購入し、調達した電力を消費者に提供するので、自ら所有する大規模発電所で発電する旧来の電力会社に比べて、電力の調達費用自体は高くかかっています。
しかし、大きな組織は株主や出資者からの利益確保の圧力が強いのに比べて、新規事業者は組織形態も異なり、利益を圧縮するビジネスモデルを前提に投資を受けているので利益は小さくて済みます。そのため、売上に占める利益の割合を圧縮できるので、競争力を重視した運営ができます。
電力の調達費が高いとその分消費者負担が増えるように感じますが、自社利益を少なく調節することができるメリットが大きいため、結果的に消費者の負担は小さくなるのです。
新規参入事業者は、業務コストがかからず、会社の成り立ちといった面からも自社の利益を抑えることができるので、消費者へ電力を安く売ることが出来るのです。
まとめ
イギリスの事例を見ると、古くからある大きな電力事業者が定める電気料金がすべてというわけではなく、利益率をコントロールすることによって安い電気を供給することもできるという事実が見えてきます。
2016年には日本もイギリスのように、電力会社を自由に選んで契約し、電気を購入するという時代がやってきます。その時に自分が購入したい事業者をしっかりと見極めることができるよう、電力小売りの全面自由化で実現されることは知っておきたいところです。
連載のつづきはこちらからご覧ください
【電力自由化】第三回:より安く、より自分にあった会社・プランを選ぶことができる時代へ