イギリスの電力自由化 第三回:消費者はどうやって電力会社を選んでいるの?
この記事の目次
2016年、電力の小売りが全面自由化されると、今よりもより安く、よりご家庭に見合った電力事業者や料金プランを選ぶことができる時代になります。
すでに電力自由化を成功させているイギリスでは、とても簡単に、家庭に見合った電力会社を選び、プランの見直しをする際も簡単に見直しができるしくみが整っているのです。
ここでは、イギリスの消費者がどのように電力会社や料金プランを選んでいるのか、そのしくみをご紹介していきたいと思います。
こちらの記事は、全三連載となっています。
- 第一回記事はこちら
- 【電力自由化】第一回:電力会社を自由に選べるってどういうことだろう?
- 第二回記事はこちら
- 【電力自由化】第二回:2016年、自由に電力会社を選び、電気を購入できるようになる
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イギリスの消費者はどのように電力会社や料金プランを選んでいるの?
日本で電力が自由化されると、私たち消費者は電力会社を自由に選び、頻繁にお得な電気料金プランに変更する、という時代がやってくるでしょう。しかし、今まで決められた1つの電力会社のみから電気を購入してきた私たちには、電力自由化後に自分たちがどのように電力会社や料金プランを選んでいくのか、想像がつきません。
すでに電力自由化を成功させているイギリスの消費者は、どのようにして電力会社を選び、プランを契約しているのでしょうか?
多様な会社・多様なプラン・様々なメリットの設定がある
イギリスでは消費者が簡単に、様々な電力事業者の安い電力、ガス料金プランを見つけて変更できるようになっています。現在18社が電力、ガスの販売をしており、セインズベリー(Sainsbury)というスーパーマーケット事業者や生活共同組合(Co-operatives)など、生活に密着した事業者もあれば、主に自然エネルギーから得られた電力を販売しているところもあり、それぞれの会社が多種多様なメリットを持つプランを提供しています。
それらの中から自分にぴったりの料金プランを探すのは数が多すぎて大変なので、簡単に料金プランを比較でき、すぐに切り替えまでできてしまうウェブサービスがイギリスには存在します。イギリスの消費者はそのウェブサービスを利用して電力会社や料金プランを選んでいるのです。
電力会社乗り換えの実態
電力自由化が行われたイギリスでは、現在までに約4割の消費者が他社の料金プランへ乗り換えをしたことがあり、消費者の半数以上が、乗り換えをすると電気、ガス料金が安くなると期待しているという調査結果が出ています。イギリスでは、「電力会社の乗り換え」はあたりまえという認識がされているのです。
電力・ガス会社を他社へ乗り換える消費者の割合
このグラフはイギリスの消費者が月間で電気・ガスの供給会社を現在契約中の会社から他社へと乗り換えた割合を表しています。2013年時点で電気・ガスそれぞれ月に0.7~0.8%、年間で約10%程度の割合の消費者(世帯数に置き換えると、1年で約250万世帯)が電気・ガスの契約先を他の会社へと乗り換えているのです。
他社の料金プランに乗り換える理由、乗り換えない理由
このようにイギリスでは、消費者が自由に電力事業者や料金プランを選んで変更することができますが、消費者は実際どのように感じているのでしょうか。「電力会社を他社に乗り換える」ことについてのアンケート結果が下記のようにまとめられています。
このグラフは、他社の料金プランへ乗り換えを行ったことがある消費者を対象に、乗り換えた理由についてアンケートをとった結果です。この結果から、以下のようなことがわかりました。
- 値段が安くなるから(約75%)
- カスタマーサービスの良さを求めたから(5%)
- 引っ越しをきっかけにプランを見直した(5%)
- 電気・ガスを同じ事業者から購入するように変更することで大きな割引が得られるから(4%)
イギリスの多くの消費者は、他社のプランに乗り換えることで今よりも電気・ガス料金が安くなることを期待して電力会社の乗り換えをしているようです。
次に、電力会社の乗り換えをしていない消費者は、どのような理由で乗り換えを行わないのでしょうか?見ていきたいと思います。
このグラフは、これまで電力会社を乗り換えたことがない消費者を対象に、乗り換えをしなかった理由についてアンケートをとった結果です。この結果から、以下のようなことがわかりました
- 今契約している電力・ガス会社に満足しているため(55%)
- 他社へ乗り換えるのが面倒(27%)
- 乗り換えをしても大した違いはないと思っている(17%)
- 他社のプランと比較をしてみたが今のプランが一番よかったため(12%)
他社に乗り換えをしたことがない消費者は、しっかりと他社のプランと比較検討した結果、今のプランが一番良いと結果付けた消費者はたった12%しかいませんでした。多くの消費者は、乗り換えを面倒に感じていたり、乗り換えたところで大して違いはないであろうと思いこんでいる消費者が多いようです。
さらに、「今の契約会社で満足している」と答えた消費者が、2012年では78%であったのに対し2013年には55%まで減少しています。この背景には、多くの契約者を持つビッグシックスと呼ばれている従来からの大手電力6社が、2013年に燃料費の変動幅とはとかけ離れた大幅な値上げを行ったため、ビッグシックスと契約していた多くの消費者の不満が爆発したということに起因をしていると思われます。
イギリスでは自由化後多くの電力・ガス会社が参入し、大変多い数のプランの中から消費者が家庭に見合ったプランを見つけ出すのはこれまで非常に困難でした。そのため、わかりやすく選べる仕組みを作ろうとイギリス政府が取り組んでいることがあります。
わかりやすく選ぶしくみ
現在イギリスでは、複雑なプランを一括で比較できるようにする新しい規制づくりに政府が取り組んでいます。
たくさんあるプランを一目で比較できるWEBサービス
現在イギリスでは、もっと魅力的なプランを探してすぐ乗り換えができるように、上記のような11ものオフィシャルウェブサイトが、公正でわかりやすい料金プランの比較とプランのスイッチング(変更)サービスを提供しています。
これらのサイトは、現在その消費者が住んでいる地域の郵便番号を入力するだけで、購入できる電力会社とそのプラン詳細が一覧で表示され、WEB上で値段などを比較できるものです。これらは無料で利用することができます。
このようにイギリスでは、今よりもっと多くの消費者が魅力的な安いプランに簡単に変更できるよう継続的な努力が続けられています。
政府が取り組む新しい規制
イギリスでは電力自由化後の電気・ガス料金高騰を抑えるために、消費者がより安いエネルギー料金を見つけやすくする必要がありました。そこで2014年4月中旬にイギリス政府規制当局は、電気・ガス料金のプラン数やディスカウントの方法を制限するという規制を設定し、「エネルギーを選んで買う人になろう(Be an energy shopper )」というキャンペーンを打ち出しました。
今回政府が設定した規制のおかげで、これまで4000以上もあった複雑な料金プランは全部で100程度になり、消費者はプラン選びがしやすくなりました。政府がこのような施策を導入することにより、消費者がもっと簡単に自分に最適なプランを提供する会社を見つけ、ショッピング感覚で頻繁に料金プランを乗り換えることが期待されています。
まとめ
日本で2016年に電力が自由化されると、イギリスのようにいくつもの新規参入してきた電力会社や数ある料金プランの中から、私たち消費者がプランを選択し、契約するという時代がやってきます。今後日本でどのような新電力事業者が参入してくるのか、さらに、電力会社の選択サービスなどができてくるのか、注目していきたいところです。