「電力大手10社が2018年5月に電気代を値上げ」報道、値上げは10電力だけなの?
この記事の目次
電力大手10社が2018年5月に電気代を値上げするという報道がされています。報道を見る限りでは、電力大手10電力だけの電気代が高くなるように感じますが、それは違うんです。5月から電気代が値上げされる原因は何なのか、どの電力会社の電気代が値上げとなるのか、詳しく解説します。
年間平均34,352円節約できます!
エネチェンジ電力比較診断の3人世帯を選択したシミュレーション結果で、電気代節約額1位に表示されたプランの年間節約額の平均値です。節約額はギフト券などの特典金額も含まれています(シミュレーション期間/2024年7月1日~2024年9月30日)
電気代の値上げは電力大手10電力だけなの?
新聞やTVで報道されている2018年5月の電気代値上げ。この値上げの原因は、2つあります。
- 2018年度の再生可能エネルギー賦課金が上昇したことによる、「再生可能エネルギー発電促進賦課金単価」の値上げ。
- 原油・石炭・天然ガス等の燃料価格が上昇したことによる、「燃料調整額」の値上げ。
1)2018年度の再生可能エネルギー賦課金が上昇した
再生可能エネルギー発電促進賦課金単価は、2017年と比較して2018年は9.8%値上がりしています。
- 2016年
- 2円25銭/kWh
- 2017年
- 2円64銭/kWh (前年比17.3%増)
- 2018年
- 2円90銭/kWh (前年比9.8%増)
「再生可能エネルギー 固定価格買取制度」、いわゆる「FIT制度」は、すべての電気の利用者で再生可能エネルギーのコストを負担するという仕組みです。契約している電力会社に関わらず、「再生可能エネルギー発電促進賦課金」は電気を使った量に応じて平等にかかります。
そのため、「再生可能エネルギー賦課金」に由来する値上げは、全ての電力会社で2018年5月分から必ず適用になります。
再生可能エネルギー発電促進賦課金について、詳しくは以下の記事でご説明しています。
2)原油・石炭・天然ガス等の燃料価格が上昇した
2018年3月〜2017年5月分の、貿易統計に基づいた平均燃料価格は、以下のように示されています。
- 2018年3月分の算定
- 31,800円/kL
- 2018年4月分の算定
- 33,000円/kL(前月比3.7%増)
- 2018年5月分の算定
- 34,100円/kL(前月比3.3%増)
この2ヶ月で、平均燃料価格が7.2%上昇しています。
電力自由化前の電力大手10社の標準プラン(従量電灯)は、現在も資源エネルギー庁によって許可される「規制料金プラン」となっており、電気料金に燃料調整額を含める必要があります。
これに対し、新電力(電力自由化で参入した新しい電力会社)は「規制料金プラン」ではないため、燃料調整額を含めないという選択肢もあるのですが、現在のところエネチェンジで掲載している新電力会社の中に「燃料調整費」を設定しなかったり、地域の大手電力会社と違う額を設定している会社はありません。
つまり、この「燃料調整額」に由来する値上がりも、「再生可能エネルギー賦課金」と同様にほぼ大半の電力会社で、同様に発生するのです。
報道の「電力大手10社が値上げをする」という表現は説明が十分ではない
燃料調整費等の見直しに伴う料金への影響額を変更のたびに算定して公表しているのが電力大手10社だけで、新電力は影響額がいくらなのかを毎回発表しているわけではない、というのが現実なのです。
新電力の料金はどれほど上がる?
上昇する「割合」は電力会社ごとに異なるが、上昇する「額」は基本的には一緒
基本的に、新電力の従量料金は以下の式で計算されています。
- (自社の従量料金+大手電力会社が加算している燃料調整費+その年の再生可能エネルギー発電促進賦課金単価)x 使用量(kWh)
したがって、上昇する「割合」は、電力会社の従量料金によって異なりますが、1kWhあたりの単価で上昇する「額」は同じ地域のどの電力会社でも基本的には一緒、ということになるのです。
エネチェンジ電力比較のシミュレーションではこの「燃料調整費費」や「再エネ賦課金」を計算に入れて試算しています。ただし、将来1年間の「燃料調整費費」がどうなるかはわかりませんので、過去の使用量については実際の燃料調整費費を加味して計算し、切り替え後の年額の計算は試算した月の燃料調整費費がその後1年間続くという前提で算出しています。
新電力を使っている人は不要な燃料調整費を請求されて損している?
それがそうとも言えないのです。理由は2つあります。
理由1:燃料調整費にはプラスだけでなく、マイナスの調整もある
燃料調整費は、プラスだけでなくマイナスになることもあります。つまり、燃料の値段が安くなると、契約時の電気代よりもその分が自動的に割り引かれる仕組みでもあるのです。実際この1年ほどの間は燃料調整費費がマイナスだったため、最近みなさんが受け取った電力会社からの「電気料金のお知らせ」には、調整額 -1.45円などとかかれているはずです。2017年5月分の算定についても-3.28円と、値上げと報じられながらも実に単価の10%ほどが燃料の安さを理由に「差し引かれている」状態なんです。
そのため、燃料調整費費を計算しないプランがもしあったとすると、今の時点ではまったく同じ単価で燃料調整費費を含むプランに対して1kWhあたり3円ちょっと高い料金を請求されてしまうことになります。
理由2:価格変動の透明性が保ちやすい
新電力が10電力と同様にこの燃料調整費費制を採用していることで、消費者にとっては価格変動の透明化、というメリットがあります。もし、電力会社が燃料調整費費の仕組みを使わず、燃料価格の変動に応じて契約の単価を変更していると、例えば燃料代の上昇に伴って値上げをして、燃料代が下がってもそのまま戻さない、というような「便乗値上げ」もわかりにくくなってしまいます。
基本でかかるのはここ、燃料代はこういう計算式、と公開されていることで、自由化の負の側面である「不当な値上げ」が起こりにくくなるという面も指摘できます。
今後、燃料価格による変動を含まないプランも出てきた場合は、どちらが得になる?
もちろん、今後は輸入の燃料に頼らない自然エネルギーや原子力に由来する電気を使うことで、燃料価格による変動を含まない電気料金プランが提供され、そのときには「年間の単価が変わらない!」という提案や、他社よりも価格の安定した燃料を使うことで「変化を小さく抑えるよ!」という提案もあるかもしれません。
ですが、先程触れたように燃料調整費の仕組みにはプラスの処理もマイナスの処理もあることから、そうしたプランが従来の変動するプランと比べてお得になるかどうかは、為替や原油価格という複雑な国際情勢の影響に依存してしまいます。そこを見極めて適切に判断できる人なら、電気の切り替えでの節約よりも、ずっと効率よく投資で稼げてしまうかも······つまりはどちらがお得というよりも、上振れ・下振れの可能性を小さくしたいか、大きくしたいか、という好みの問題になってくるでしょう。
それじゃあ、電力自由化って意味がないの?
でもこうした、燃料調整費や再エネ賦課金にともなう価格の変化は電力会社自身の意思によるものではなく、報道で慣例的に「値上げした」「値下げした」と表現されているのがそもそもちょっと違うんじゃないかな〜、とエネチェンジ編集部は考えています。
燃料調整費や再エネ賦課金にともなう電気代の値上げは、野菜や肉が台風の影響で値上げされるとの似た現象
野菜や肉のように、特定の業者が供給しているわけではないものは「台風の影響で値上がりした」と表現されていますよね。こうした電気代の変化は、これまで大手10電力という会社だけが電気を供給してきたから「電力会社が値上げした」と表現されてしまっているものの、その決め方は生鮮食品の値上がりと似たような現象であって、電気を売る側が利益を大きくするために意思を持ってする値上げとは区別されたほうが電力自由化の時代に合っていると思うのです。
どの電力会社から電気を買うか、という「選択の自由」ができるようになったことに意味がある
そして、値上がりする時は激安スーパーの野菜も、オーガニックショップの野菜もみんな値上がりするけど、どこの店の野菜を買おうかという選択肢は変わらずにあって、自分で選べるということに意味がないわけではないですよね。
電気も、値上がりするときはどの電力会社の電気もみんな値上がりするけど、電気の単価(従量料金)だけはどの会社よりも安くしている電力会社もあれば、ガスや携帯とセットで割引がつく電力会社、電気代でポイントがたまる電力会社、環境に優しい電力会社や電気代でスポーツチームを応援できる電力会社など、電力会社ごとに様々な特徴があって、どの電力会社から電気を買うか自分で選べることには意味があると感じませんか?
値上げはどの電力会社も同じ、でも自分に見合った電気料金プランを選べば、電気代を無駄なく節約できます
携帯電話のプランだって、インターネットをほとんどしない人が月間データ量制限なしのプランを使っていたら、無駄な料金を支払って損してしまいます。電気もそれと同じで、自分の電気の使い方に見合った電気料金プランを選ぶことが大事なんです。
5月からの電気代の値上げが心配なら、エネチェンジ電力比較で今よりも自分に合ったプランがないか、診断してみましょう。これから夏にかけて、電気を使う量も増えていきます。最適な電力会社のプランを選んで、無駄な電気代を無くしていきましょう。