東京電力の供給計画初のマイナス。競争激化を考慮
東京電力がこのほどまとめた2015年度の供給計画で、2013年度から2024年度までの販売電力量は年平均で0.6%減少する見通しとなりました。東電の年平均の販売電力量がマイナスになるのは初めてとなります。2016年度から始まる電力の小売自由化の影響で、新規参入業者などとの競争が激しくなることを踏まえて、販売量の減少を見込んだものです。
供給計画とは?
供給計画とは、電力会社の今後10年間の販売電力量や、夏の最大電力の見通し、主な発電所の整備計画などをまとめた計画です。2015年度の計画は2024年度までの10年間が対象です。電力会社は、電気事業法に基づいて、毎年3月末までに経済産業相に届け出ることになっています。
単年度では増加も、10年計画では初のマイナス
2015年度の東電の計画は、景気が回復基調で推移することから、前年度比0.8%増の2614億キロワット時となる見通しです。中長期的には2016年度からの電力小売り全面自由化による企業の新規参入や、越境販売の増加を織り込んで、前述のように10年間の年平均でマイナスの伸びになることを予想しています。これは東電にとっては初めてのことで、自由化で競争が激化し、低圧の小売り契約(家庭・小規模商店向け)が他社に流出することを想定したものです。
激しい競争にさらされる東電
東電の供給エリアである首都圏は、国内最大の電力消費地であるため、様々な企業が電力事業への進出を検討しています。関西電力が石油元売り会社と共同で火力発電所の建設を計画したり、東京ガスも液化天然ガス(LNG)を使った発電所の増強を計画したりするなど、東電から顧客を奪おうと虎視眈々と狙っています。こうしたライバルが多くいる中で、東電も電力需要の一部が他社に奪われてしまうのはやむを得ないとの認識から、販売電力量を現実的に見積もったものです。
他電力でも同じ状況ながら、計画に違いが
2016年4月から始まる電力小売りの全面自由化は、すべての既存電力会社が影響を受けるので、置かれている状況は東電と同じだということができます。ただ、各社の発表した供給計画を比較してみますと、年平均販売電力量が減少すると見込んだのはマイナス0.6%とした東京電力と、マイナス0.2%とした四国電力だけでした。ただ、これまで大手電力会社がそれぞれの供給地域(営業エリア)で販売を事実上独占してきた状況は、全面自由化を境に大きく変わります。そうした意味でも、他の電力会社の見通しは甘いといわざるを得ません。
まとめ
もちろん日本の景気が大きく回復して、経済界の電力需要が劇的に改善すれば、電力消費も増え、各社の販売電力量も伸びることが予想されます。しかしながら、実際には景気回復の足取りはまだ弱く、電力需要が急激に増える状況にはありません。また、技術革新で省エネが進めば、電力消費は抑えられます。そうした中で自由化によって競争条件が厳しくなるのですから、電力会社にとっては、事態を冷静に見据えることが必要といえましょう。おそらく一年後には、より現実的な見通しが出てくると思われますが、自由化を前に、消費者の側も、電力会社の動きを注意深くウォッチする必要があるといえます。
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