電力自由化で新規参入が予想される会社やサービスの、2つのポイント
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2016年に電力の小売り自由化を迎えるにあたって新規に電力市場に参入する企業が増えることが予想されます。これまで電力事業に縁の薄いと思われていた企業も、ビジネスチャンスを求めて新電力として参加してくることが予想されます。今回は完全自由化を前に、どんな企業がどんな戦略を考えているのかを考えてみることにしましょう。
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家庭向け電力の市場規模はスマホ並み?
電力自由化によっては約7.5兆円もの新しい市場が創出されるとされ、これはスマートフォンの普及が生み出す全体の市場規模に匹敵するとされています。このためビジネスチャンスをめぐる企業の関心も強く、多くの企業が新電力として新規参入するとみられています。既に参入の意向を表明しているところも多くありますが、様々な企業が検討を行っています。
それでは具体的には、どのような企業が参入するのでしょうか?大きく分けると2つのパターンが考えられます。
すでに発電所を持っている企業による参入
まず考えられるのは、すでに自前の発電所を保有している企業です。
大規模な工場や設備を運営している企業のなかには、電力会社から電気を買うよりも自前で発電し、周辺の他企業へ電気を売るほうがコストが安くつく等の理由で、すでに発電所の設備や新電力としての運営ノウハウを持っているところがあります。
こうした企業は、家庭向け電力小売りへの参入で発電所の電力の売り先を増やすことができると
- 発電所への設備投資が可能になり、よりコストダウンが図れる
- 燃料の調達量が増えることで、より安く買う交渉ができる
など、電力を安く調達して供給できる可能性があります。
石油大手元売りも小売り市場へ
石油元売り大手のJXホールディングス傘下のJX日鉱日石エネルギーは2016年からの全面自由化にあわせ家庭向けの電力小売りに参入することを発表しました。
JXグループ自社の持つ製油所内に火力発電所を建設するなど、既にPPS事業者として産業用の電力の販売を行っていますが、有望な市場である首都圏を中心とする東京電力の供給エリアで家庭向けの小売り事業に参入し、事業を拡大する方向です。
新電力になるには
新電力(PPS)は、長年、地域独占で電気を供給してきた大手電力会社である一般電気事業者(現在、北海道電力、東北電力、東京電力、北陸電力、中部電力、 関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力など)とは別の新たな電気事業者を指す。新電力は自社で発電を行っているところもあるが、必ずしも自前の発電設備を持つ必要はなく、工場などの自家発電の余剰分や電力の卸市場に売りに出される電気を買い取って電源を確保することでも新電力になることができる。電力の新規参入者になるためには、経済産業省に特定規模電気事業者としての登録が必要になる。2014年12月26日現在、届け出を行った会社は468社ある。
他のサービスと組み合わせることでメリットが生まれる企業
その他に参入が期待されるのは、電力以外の他のサービスと電力を一緒に提供することで、消費者にメリットを提供できる企業です。
携帯電話事業者の参入
その好例が携帯電話事業者です。
ソフトバンクはすでに電力小売りへの参入を表明し、大口需要家向けの販売に乗り出しました。まず、子会社のSBエナジーが全額出資するSBパワーが経済産業省に新電力(PPS=特定規模電気事業者)としての届け出を行って、2014年7月から大口顧客への販売を関東エリアから開始しました。今後東北エリアなどに順次拡大するということです。
またSBパワーは2014年12月から電力買取サービスも開始しました。この動きには2016年の電力小売りの完全自由化に向けて、今のうちから顧客の囲い込みを図ることも視野に入っているとみられます。売電をしてくれる顧客は、必要な電気を買ってくれる可能性もあるからです。
発電会社であるSBエナジーでも太陽光発電を全国各地に展開しており、ソフトバンクグループは小売りの完全自由化後も有力なプレーヤーの一つになると見られています。
SBパワーの電力買取サービスについては、以下の記事で詳しくご紹介しています。
ソフトバンクグループが参入!太陽光で発電した「電力を高く買い取るサービス」とは?
なぜ携帯電話の会社が電力小売りに参入するの?
携帯電話の会社がこうした動きを見せていることには、理由があります。
ソフトバンクは携帯電話や固定電話の通信事業で既に5000万件ともいわれる契約を保有しており、サポートセンターや料金の回収システムなども整備しています。
月間の使用量に基いて料金を請求するというサービス形態は電話と共通ですから、こうしたインフラを活用できるメリットがあり、携帯電話とセットで契約すれば電気料金の回収も容易であることから、セット割引などのサービスが提供されるかもしれません。
こうした条件は他の携帯電話会社や通信事業者も同じなので、今後さらなる参入も期待できるでしょう。
ガス会社による電力への参入
また東京ガスと大阪ガスがNTTファシリティーズとともに共同出資してつくるエネットは新電力の最大手として存在感を発揮しているほか、地域のガス会社も電力事業に乗り出そうとしています。
都市ガス会社はすでに大都市のほぼ全家庭と契約を結んでおり「電気とガスの同時契約」による割引を提供すれば、消費者にとって大きなメリットになります。
イギリスの例では、こうした併売(デュアルフュエル契約)は一般的になっています。
ガス会社が電力自由化へ参入する理由については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
東京ガスが電力自由化での家庭向け電力小売り参入を発表。その意味は?
ハウスメーカーや電機大手、商社も名乗り
このほか、ミサワホームや大和ハウス工業などの住宅メーカーや、外食大手のワタミの子会社や電機大手のパナソニックなども参入企業として名を連ねています。インターネット通販大手の楽天と大手商社・丸紅も電力自由化を前に、電力顧客向けサービスの開発に関する業務提携を発表しています。
住宅メーカーであれば、自社で住宅を建てた顧客のみに割引料金を保証したり、外食や通販サービスなどでは、電気代にポイントをつけることで消費者にメリットを提供できることが考えられます。
このように、他のサービスを持っている企業が電気も小売りできることによって、今までになかったサービスが生まれ、それを自由に選択できるようになるのが、電力自由化のポイントのひとつです。
迎え撃つ大手電力会社
電力自由化で電力市場に新規参入者を迎える大手電力会社も当然ながら対抗策を考えています。東京電力が電力子会社を通じて中部電力や関西電力の管内で電力販売を始めているほか、中部電力も関東圏で電力販売を始めています。中国電力も2016年の全面自由化にあわせて供給域内で余った電気を隣接する関西電力、四国電力、九州電力管内での家庭向けに電力を販売するという報道もあります。これが事実なら大手電力会社同士による本格的な競争が始まる可能性もあります。
また電力会社自身が、逆に自由化される都市ガス事業へ乗り出すことで、ガス会社との競争力を確保する動きも報じられています。
まとめ
これまで見てきたように、様々な業種で2016年の自由化をにらんだ動きが早くも活発化しています。2015年にはこうした動きが一段と活発化すると予想されます。大手電力と新電力との競争のほか、大手電力同士の地域を超えた競争、異業種参入組の間の競争など様々な競合関係が激化してゆくことは間違いないでしょう。
競争の中から、消費者によりよいサービスが生まれてくることが十分期待されます。自由化の前後で電力市場がどう変わり、電力ビジネスにどんなプレーヤーが新たに現れてくるのか、様々な戦略とともに今後注目されます。