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日本の電力自由化、これまでの経緯と現状とは?

電力自由化

2016年に予定されているという日本の電力自由化にむけて、いままでどのような経緯があったのでしょうか?実は、電力自由化は1995年からすでに始まっていて、私たちの使う電気の一部は地域の電力会社以外で発電されているのです。その経緯を段階的に追っていきましょう。

これまで「エネチェンジ」では2016年から始まる電力小売りの完全自由化について見てきましたが、そもそも日本の電力自由化はどのような経緯をたどって進んできたのでしょうか。今回はこれまでの流れをふりかえってみます。

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1995年からすでに始まっていた日本の「電力自由化」

「電力自由化」が話題になったのが東日本大震災の後だったこともあり、電力の全面自由化は急に決まったことのように思えるかもしれません。
しかし、日本の電力自由化は、一足飛びに完全自由化まできたわけではありません。電力業界を所管し、電力自由化を進めてきた資源エネルギー庁が周到に、段階を踏んで進めてきたといえます。
電力自由化は主に電気事業法の改正を基にして行われますので、その流れをふりかってみます。

1995年制度改革 電力卸売自由化

最初は1995年の電気事業法改正です。この時の改正では、電力を供給する事業に、独立系発電事業者(IPS=Independent Power Producers)の参入が可能になり、電力会社が他の電力会社や卸電力事業者以外からも電気を購入することができるようになりました。また、新規事業者が電力会社の送電線を使って他の電力会社に送電する「卸託送」の規制も緩和されました。

1999年 PPS解禁 特別高圧小売り自由化 PPS解禁

次のステップが1999年の電気事業法改正です。ここでは自由化の範囲が小売りへ拡大されたことが特徴です。
対象となったのは、大規模工場やデパートなど、電気を2万ボルト以上で受電し、電気の使用(契約)規模が原則、2000キロワット以上の「特別高圧」と呼ばれる顧客向けの小売り電力です。

この結果、電力会社の送電ネットワークを利用し、自由化対象の顧客に電気を供給する「特定規模電気事業者」(PPS=Power Producer and Supplier)の新規参入が可能となりました。PPSは自由化の新たなプレーヤーとして電力供給の仕組み(系統運営)に組み入れられ、売電など実際のビジネスを活発に行うようになりました。安定供給についてもバックアップで担保されました。

なお、自由化対象顧客に対する電力の供給は、原則的として規制(参入規制、供給義務、料金規制)を設けないこととなりました。
また電力会社が保有する送電ネットワークを新規参入者が利用するための、公平で公正なルール(小売託送ルール)の整備も行いました。
自由化されていない部分の小売りについては、料金引き下げなどの場合には届出制に変更され、機動的な料金改定が可能になりました。料金メニュー(選択約款)の設定要件も緩和されました。

PPSのバックアップ

突然の事故で発電機が壊れるなどやむをえない事情でPPSが発電できなくなり十分な電力供給がされない場合は、PPSと契約している顧客への給電が停止されるのではなく、地域電力会社がPPSの顧客へ供給する電力を肩代わりする「常時バックアップ」の仕組みがある。バックアップは「保険」のような役割で、PPSが電力会社に対価を払って行う。

2003年制度改正 高圧部門小売り自由化

さらに2003年の電気事業法改正では、2004年から2005年にかけて小売りの自由化範囲が拡大し、契約(使用)規模が50キロワット以上の「高圧」部分の顧客に拡大しました。これにより日本の電力販売量の約6割が自由化対象となりました。

電力会社が管理する送電線を新規参入者が利用するため、送配電部門の公平性と透明性が求められました。この結果、送配電部門が託送業務を通じて知り得た情報の目的外利用などが禁止されました。また送配電部門と発電・販売内部との内部相互補助の禁止なども取り決められました。電力調達の多様化を図るため、卸電力取引所も設立されました

卸電力取引所(JEPX)

2003年、「日本卸電力取引所」(Japan Electric Power Exchange=JEPX)が創設された。電力会社やPPSなどが出資する私設の取引場で、他の商品取引所などで行われているような金融的手法による取引や決済を想定しておらず、あくまで、現物としての電気を取引する場所として位置づけられている。取引所で成約した売買契約は、成約結果に基づく発電および消費によってのみ履行され、その対価の受け渡しが行われる。

電力の全面自由化は最終段階へ

このように、日本の電力規制は完全自由化に向けての実績を段階的に積んできました。地域電力会社と同じ送電網に、すでにIPSやPPSが発電した電気が流れているのです。
商店やオフィス、学校などの電気はこうしたPPSから購入されているものもありますし、電気に色をつけたり、製造元で選り分けることはできないので、一部は家庭にも流れ込みます。日々意識することはなくても、私たちはすでに地域電力会社以外で発電した電気も日々の生活で使っているのです。

2013年からの制度改正

そして自由化の最終段階に位置づけられるのは、2013年から検討されてきた電気事業制度改革です。2011年の東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故を契機にした日本の電力システム改革の見直しが2013年4月に閣議決定され、広域系統運用の拡大や小売り・発電の全面自由化が柱になっています。

新たな仕組みへの移行

このうち 2015年をメドに行われるのが「広域的運用推進機関(広域機関)」の設立です。これは、一般家庭まで含めや電力小売りの完全自由化を前に、全国レベルで電気の需要と供給を調整するための機関です。2014年8月、資源エネルギー庁が正式に設立を認可し、2015年4月1日に業務開始の予定です。
広域機関は、電気事業者の電気の需給の状況の監視のほか、需給状況が悪化した場合での融通等の指示などを行います。また風力発電や太陽光発電など再生可能エネルギーによる出力変動を広域的に吸収する仕組みなども整備することになっています。
従来は地域電力会社が担ってきた役割の多くが、広域機関に移管されることになります。

自由に選べる時代へ

そして2016年に予定されているのが小売りと発電の全面自由化です。これまでみてきたように、現在地域の電力会社にしか認められていない家庭などへの電力供給が自由化されることで、消費者が自由に供給会社を選ぶことができるようになります。


その後の展開

さらに2018年から2020年にかけて予定されているのが、電力会社の送配電ネットワーク部門の別法人化(発送電分離)や需給バランス調整用のリアルタイム市場の創設などです。これら部分については2015年に電気事業法の改正案が国会に提出される予定になっています。

まとめ

このように日本の電力自由化は段階を追って進められ、日本の経済社会に組み込まれてきました。これから2020年までの間は、まさに電力自由化は最終段階を迎えます。健全な競争環境を確保しつつ、企業や一般生活者にメリットのある改革が実行されるか、今後動きが注目されます。

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