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各地で建設計画相次ぐ洋上風力発電、政府も港湾法改正で後押し【エネルギー自由化コラム】

電力自由化ニュース

2017年7月の改正港湾法施行を受け、洋上風力発電施設の建設計画が各地で相次いでいます。利用可能なエネルギーが太陽光発電の10倍にもなる洋上風力発電の普及に期待が膨らみますが、一方で建設コストや風況などの課題も。詳細をお伝えします。

海上に建設される巨大な風車で発電する洋上風力発電に今、大きな注目が集まっています。洋上は陸上に比べて風況が安定しているうえ、国土交通省が2017年7月の改正港湾法を受け、港湾区域への風力発電建設の後押しを始めました。数年後には日本各地で洋上風力発電が次々に動き始めると期待されていますが、建設コストや風況がネックとなり、事業から撤退を決める企業も出ています。欧州のように洋上風力発電の時代を迎えるには、乗り越えなければいけない大きな課題が存在するのです。

北九州市沖に国内最大級の施設建設計画

本州と九州間に横たわる関門海峡の北西に広がる響灘。冬に荒海となることで有名なこの場所が、電力業界の注目を集めています。港湾区域としては国内最大級の洋上風力発電施設の建設が計画されているからです。

北九州市が公募した洋上風力発電の設置、運営事業には、計5グループが応募しました。小島治幸九州共立大名誉教授を座長とする有識者会議で審査した結果、九州電力子会社の九電みらいエナジーなど5社で構成する「ひびきウインドエナジー」が2017年2月、事業者に選ばれています。

ひびきウインドエナジーに参加した企業は、代表企業の九電みらいエナジーのほか、西部ガス、電源開発、九電工、風力発電機メンテナンスの北拓。新日鉄住金エンジニアリング、五洋建設などが風車設置工事で協力する予定です。

港湾区域内に最大44基の風力発電を設置

建設場所は北九州市が管理する若松区沖約10キロの港湾区域4エリア計約2,700ヘクタール。風車の柱を海底に設置する着床式の風力発電を最大44基設置します。総出力は22万8,800キロワットに及ぶ見込み。

総事業費は約1,750億円。2022年に着工し、順次稼働させる予定です。再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度に基づき、九州電力に売電します。現在は環境アセスメントなど建設に向けた準備を進めているところです。

北九州市は風力発電関連メーカーの誘致を進めており、臨海部に風力発電関連産業の拠点「グリーンエネルギーポートひびき」を整備する考え。風力発電は約2万点の部品が必要なすそ野の広い産業だけに、北九州市エネルギー産業拠点化推進課は「風力発電の先進地として地域の活性化にこの事業を結びつけたい」と意気込んでいます。

陸上での風力発電設置は伸び悩み傾向

風力発電は1970年代の石油ショック以降、石油代替エネルギーの1つに位置づけられてきました。2011年の東日本大震災以後は太陽光発電とともに、再生可能エネルギーの中核と考えられ、各地で建設が進んでいます。

先進地のヨーロッパでは年間を通じて偏西風が吹きますが、日本では風況の良い地域が限られています。しかも、適地の多くが国立公園や国定公園にあり、開発にさまざまな規制が加えられています。風車の風を切る音もうるさいことから、周辺住民から騒音公害と苦情が出ることが少なくありません。

風力発電の設置がイヌワシなど希少動物の生息環境に影響が出るとして、環境保護団体が反対する例も滋賀県などで見られます。その結果、陸上での設置は伸び悩んでいるのです。

利用可能なエネルギーは太陽光発電の10倍

そこで、国が目をつけたのが洋上です。日本は島国ですから、設置場所は大きく広がります。風況も陸上より良いとされます。環境省によると、洋上風力発電で理論的に算出した利用可能なエネルギー量は、約160万メガワット。太陽光発電の実に10倍に及び、関西電力など日本の10の大手電力会社が持つ電力設備容量の8倍に当たります。

波に洗われる洋上に施設を設置するのですから、建設コストは陸上の2~2.5倍も高くなるといわれています。その費用を膨らませている1つが、陸上へ送電するため海底に敷設するケーブルですが、陸に近い港湾区域なら敷設費用を抑えられます。

日本風力発電協会は累積生産量拡大によるコストの低減が進めば、2030年に火力などとそん色のないレベルになると期待しています。

電源別2030年発電コストの比較

電源発電コスト(円/kWh)
原子力8.8
石炭火力12.9
LNG火力13.4
石油火力28.9
一般水力10.8
太陽光(メガソーラー)12.9
太陽光(住宅)15.3
風力(陸上)8〜12
風力(洋上)16.9
小水力(200kWhまで)23.6
小水力(200~1,000kWh)20.4
地熱10.9
バイオマス(木質専焼)28.1
燃料電池17.3

出典:日本風力発電協会「ウインドビジョン」から筆者作成

港湾法改正で20年間事業実施が可能に

このため、国交省は2017年7月の改正港湾法施行を受け、港湾区域での設置後押しを始めています。改正港湾法では、港湾管理者が発電事業者の事業計画を公募し、認定すれば20年間、事業を実施できる仕組みが導入されました。

その第1号となったのが響灘の計画です。国交省によると、港湾区域内に洋上風力発電が既に設置されているのはまだ北海道せたな町など少数ですが、法改正を受けて建設計画が各地で相次いでいます。

茨城県の鹿島港では広さ約700ヘクタールの洋上に5メガワット換算で50基程度、青森県のむつ小川原港では1,000ヘクタールに3メガワット換算で38基程度の建設が計画中です。国交省海洋利用開発室は「数年のうちに各地の港湾に巨大な風車が登場し、風景が一変するのではないか」とみています。

港湾区域で導入が計画される洋上発電

区域概要
稚内港5メガワット換算で2基程度
石狩湾新港5メガワット換算で20基程度
むつ小川原港3メガワット換算で38基程度
能代港、秋田港5メガワット換算で合計29基程度
酒田港検討中
鹿島港5メガワット換算で50基程度
御前崎港5メガワット換算で10基程度
北九州港5メガワット換算で最大44基

出典:国土交通省資料から筆者作成

建設コストの高騰で事業見直しの計画も

ところが、洋上風力発電にも弱点があります。建設コストは各地で建設が進むことにより下がると考えられていましたが、現時点でその傾向は見られず、むしろ上振れする気配さえあります。

その結果、鹿島港では2017年1月、事業予定者の丸紅が撤退、後継事業者を再選定することになりました。茨城県港湾課は「丸紅から投資に対するリターンが厳しいとの報告を受けた」と説明しています。このトラブルで計画に遅れが生じる見通しです。

新潟県村上市は2017年11月、日立造船などの企業グループが計画していた岩船沖の洋上風力発電計画について、「現時点で事業化が難しい」と判断しました。事業自体が消えるわけではありませんが、日立造船などの計画はストップする見通し。村上市新エネルギー推進室は「建設費がかかり過ぎて採算が合わない」と頭を痛めています。

風況や水深も適地探しの課題に

もう1つの問題は風況です。風力発電は風速や風向で発電量が決まります。安定した強い風が年間を通して吹くことが求められるのです。

固定価格買い取り制度では洋上風力の価格は36円。年間平均風速が毎秒7メートル以上で採算が取れるとして算定されました。しかし、陸地に近い港湾区域でこの条件に見合う適地は限られます。

遠浅の海が比較的多い欧州に比べ、日本は少し沖合に出ると水深が急に深くなります。洋上風力発電で一般的な建設方式は施設を海底に固定する着床式。おおむね水深50~60メートル以下を目安としているだけに、適地に限界があるわけです。

より可能性を広げる浮体式の風力発電

適地探しの点ではより可能性を広げる新方式が登場しました。洋上に発電施設を浮かべてアンカーチェーンで固定する浮体式です。着床式よりもっと深い海にも設置することができます。

丸紅や東京大、三菱重工などで構成する福島洋上風力コンソーシアムは、経済産業省の委託事業で福島県沖の太平洋上に3基の浮体式風力発電を設置し、実証実験を進めています。福島県産業創出課は「実用化できれば2040年で県内消費の100%を再生可能エネルギーで賄う県の目標達成に大きく貢献してくれそうだ」と期待しています

欧州では既に実用化がスタートしました。英国のスコットランド沖では2017年10月、総発電量30メガワットの浮体式洋上風力発電所が世界で初めて営業運転を開始しています。さまざまな課題を克服できれば、洋上風力発電が日本の電力事情を大きく変えるかもしれないのです。

高田泰(政治ジャーナリスト)
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