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大型商業施設で脱炭素の動き加速、大丸、高島屋、イオンなど使用電力を再エネに【エネルギー自由化コラム】

電力自由化ニュース

大型の商業施設で使用する電力を、再生可能エネルギーへ転換する動きが活発になってきました。大丸心斎橋店・大丸松坂屋・高島屋の百貨店、イオン・丸井・三井不動産のグループ施設の現状を紹介します。

ショッピングセンターや百貨店など大型商業施設で使用電力を再生可能エネルギーに切り替えるところが相次いでいます。環境意識の高まりから日本でも脱炭素が一流企業の条件になり、商業施設の出店や取引、集客に影響を及ぼしかねない状況になりつつあるからで、今後この動きはさらに加速しそうです。

大丸心斎橋店が低炭素社会のモデル店に

大阪市中央区心斎橋の大丸心斎橋店。使用電力のすべてを再生可能エネルギーでまかなっている(筆者撮影)

御堂筋と心斎橋筋商店街に挟まれた大阪ミナミの一等地。優美なネオ・ゴシック様式の建築物として戦前の1933年からランドマークとなってきたのが、大阪市中央区心斎橋の大丸心斎橋店です。

建物は2019年に建て替えられましたが、外観に旧館のたたずまいを残し、歴史の重みを強調するだけでなく、使用電力を再生可能エネルギーでまかなう環境にやさしい百貨店の新しい顔を加えています。

使用しているのは、関西電力から調達したすべて水力発電由来の電力です。二酸化炭素排出削減量は本館だけで年間約7,000トン。大丸心斎橋店は大丸松坂屋百貨店の旗艦店ですが、低炭素社会に向けたモデル店の役割も果たしています。

J・フロントは2030年までに再エネ割合6割の方針

大丸松坂屋百貨店を傘下に加えるJ・フロントリテイリングは、再エネ100%を目指す国際企業連合のRE100に加盟し、2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロを目指す方針です。その前段階として2020年段階で10%に満たなかった使用電力に占める再エネの割合を、2030年までに一気に60%まで引き上げることを目指しています。

大丸松坂屋百貨店は東京都江東区木場の本社ビルで使用する全電力と、東京都豊島区南池袋の池袋パルコ、東京都調布市小島町の調布パルコで使用する電力の一部も再エネに切り替えました。

J・フロントリテイリングは「施設全体の使用電力を再エネでまかなっているのは、まだ大丸心斎橋店だけだが、今後順次、他の店舗にも広げ、脱炭素社会の実現に貢献していきたい」と話しました。

高島屋は玉川、流山、大宮で再エネを導入

高島屋は2019年、RE100に参加を表明したのを受け、2020年からグループ内の店舗に再エネ由来の電力導入を始めました。特に切り替えが進んでいるのが、連結子会社の東神開発が開発、運営する店舗です。

2020年には東京都世田谷区玉川の玉川高島屋ショッピングセンター別館と周辺施設、千葉県流山市おおたかの森南の流山おおたかの森周辺施設など既存施設8棟が切り替えを終えました。

2021年は3月に開業した流山おおたかの森フラップスが使用電力のすべてを再エネでまかなっています。秋に開業予定の流山おおたかの森アゼリアテラス、2022年夏に開業予定の流山おおたかの森アネックスツーでも導入が予定されています。オフィスビルでは東京都中央区日本橋で12月に竣工する日本橋三丁目スクエアへの導入が決まりました。

非化石証書の付いた電力をエネットから調達

東神開発は再エネ由来の電力を東京ガス、大阪ガス、NTTファシリティーズが設立した新電力エネットから調達しています。石炭、天然ガスなど化石燃料から作ったものでないことを証明する非化石証書が付いた電力です。

東神開発の運営施設以外では、さいたま市大宮区大門町の高島屋大宮店が6月から再エネ由来の電力に切り替わりました。高島屋は2050年までに二酸化炭素排出の実質ゼロを目指しており、「引き続きグループ店舗の使用電力を再エネ由来に切り替え、目標を達成したい」と意気込んでいます。

イオンもグループ店舗の再エネ導入を加速

大阪府藤井寺市岡のイオン藤井寺ショッピングセンター。イオングループの店舗で使用電力のすべてを再エネでまかなう1号店になった(イオン提供)

イオングループは6月に開業した埼玉県川口市安行領根岸のイオンモール川口で、使用する電力、都市ガスをすべて再エネ由来にし、二酸化炭素排出量を実質ゼロにしました。東京電力エナジーパートナーから非化石証書付きの電力を調達、東京ガスから二酸化炭素を排出しないとみなされるカーボンニュートラルの都市ガス供給を受けています。

使用電力のすべてを再エネでまかなう店舗は2020年3月、大阪市福島区海老江のイオンスタイル海老江、大阪府藤井寺市岡のイオン藤井寺ショッピングセンターが第1号になりました。関西電力から再エネ由来の電力を調達するとともに、イオン藤井寺ショッピングセンターでは屋上に太陽光パネルを設置して発電した電力を自家消費しています。

イオンモールでは、埼玉県上尾市愛宕のイオンモール上尾が2020年12月のグランドオープンから東京電力エナジーパートナーの非化石証書付き電力を導入し、全消費電力を再エネでまかなう先駆けになりました。

全国のイオンモール約150カ所を再エネに転換へ

イオングループは国内の大手小売企業として初めてRE100に参加しました。2018年には長期目標となる「イオン脱炭素ビジョン2050」を発表し、2050年の二酸化炭素排出量実質ゼロを掲げています。その中間目標として2030年に2010年比35%削減を打ち出していますが、目標値の50%への引き上げを検討中です。

国内外に約1万9,000のグループ店舗を持ち、国内年間電力消費量は約72億キロワット時に上ります。日本の電力総消費量の約1%に当たる膨大な量です。グループ内で電力消費量が大きいのは施設の規模が大きいイオンモール。このため、全国のイオンモール約150カ所から再エネ転換を進める方針です。

イオングループは「再エネ由来の電力調達や太陽光パネルの設置推進などで二酸化炭素の排出削減に努めたい」としています。

丸井や三井不動産も再エネ導入に本腰

このほか、ファッションビルなど大型商業施設を展開する丸井グループは、2030年までに事業活動で使用する電力をすべて再エネに切り替える方針で、再エネに強い新電力のみんな電力に追加出資しました。

三井不動産は2030年度までに首都圏の商業施設、オフィスビルなど全約120施設に再エネ由来の電力を導入します。このうち、東京都中央区日本橋の商業施設コレド日本橋など25施設で先行して取り組む計画です。

工場で大量の電力を使う製造業各社がいち早く省エネ技術を取り入れてきたのに対し、小売各社の動きは遅れていましたが、ここに来て一気に動き始めたわけです。

環境への配慮が企業価値向上の条件に

背景に見えるのは、環境・社会・企業統治に配慮する企業を重視するESG投資や地球環境に配慮した商品を購入するエシカル消費の広がりで、小売り各社を取り巻く環境が大きく変わってきたことです。

RE100に参加して環境に配慮することは一流企業の条件となりつつあります。ショッピングセンターや百貨店も消費者が喜ぶ商品を販売するだけでなく、環境への配慮を競い合う時代に突入したといえるでしょう。

米ブルームバーグによると、再エネ由来の電力の国内調達価格は2020年上半期で1キロワット時当たり太陽光13.2円、風力12.9円なのに対し、世界は太陽光5.5円、風力4.8円です。世界とのコスト格差はまだ解消できておらず、再エネ由来の電力導入を進める小売業界に大きな課題が横たわっています。

欧米では電力会社と連携して大規模太陽光発電所を建設する動きが見られます。再エネ由来の電力をまとめて調達することでコストダウンを図ろうとしているのです。初期費用はどうしても高くなってしまいますが、環境への配慮で企業価値を高めるためには避けて通れないコストになってきそうです。

高田泰(政治ジャーナリスト)
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