太陽光発電の売電買取制度って一体どういう制度?
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私たちの暮らしは電気やガソリンに代表されるように、毎日たくさんのエネルギーを使っています。しかし、日本では原子力発電を除くとエネルギー自給率はわずか4%しかありません。そこで、再生可能エネルギーの普及を支えるための制度として「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」が作られました。
では、再生可能エネルギー中のひとつである「太陽光発電」にテーマを絞り、固定価格買取制度について考えてみましょう。
売電の固定価格買取制度とはどういうものでしょうか
日本では、火力発電で電力をつくる元になる石油、石炭、天然ガスなど化石燃料はほとんど輸入に頼っているのが現状です。
このような状況なので、今後も安定的なエネルギーを確保していくために、再生可能エネルギーを普及、拡大していくことが必要と考えられ、それを経済的に支えるために作られた制度が「売電の固定価格買取制度(FiT)」です。
固定価格での買取制度が必要な理由
太陽光発電には、大きく分けると2つの種類が存在します。
ひとつは電力の供給を目的とした事業として行う産業用太陽光発電というわれるものです。もうひとつは自宅の屋根にソーラーパネルをつけて10kW未満の発電を行うものです。
前者は発電した電力の全量を、後者は自宅で使った電力を差し引いてあまった電力=余剰電力を、売電という形で電力事業者に売り収入を得ることができます。この際、電力会社は国が決めた単価以上で、決められた期間かならず電力を買い取ることが定められています。
こうした制度ができた理由は、主に設備投資の負担を減らし、決断を簡単にするためです。
太陽光発電を行うためにはソーラーパネルなどの設備が必要であり、最初高いコストを支払って設備を設置しなくてはなりません。例えば、上記にあった自宅の屋根を使う場合でも、発電量(ソーラーパネルの設置数)により多少の上下はありますが、150万円から200万円くらいの設備投資が必要になります。
このようにいまはまだ高額な設備投資が必要な太陽光発電への設備投資に際する負担を引き下げ、また収支計画を立てやすくなるように、電力会社による買い取りを義務付け、買い取りの価格も一定期間固定しているのです。
具体的な売電価格について
今年度(2014年度)の10kW未満家庭用ソーラーパネルからの売電価格、つまり地域の電力会社の買取価格は37円/kWhで10年間その価格は変わりません。産業用太陽光発電で売電を行う場合の買取価格は、32円/kWhで20年間その価格は変わりません。
買取価格は毎年度ごとに見直されますが、基本的には供給量の増加や設備の値下がりに応じて低下していく傾向にあります。
電力を売る先の電力会社は選ぶことができる
ここまで国が電力事業者に義務付けた、固定価格買取制度について話をしてきました。最近の流れとして、地域の電力会社以外に売電先として太陽光発電で発電された電力を買い取る業者が増えています。
買取先の選択肢が競争によって増えていきます
こうした地域の電力会社ではなく、いわゆる民間の新電力会社が売電買取に参入することで、太陽光発電の電力販売先に選択肢が増えていきます。
そして、選択肢が増えるにしたがって、売電買取の市場が拡大し、活性化されることで買取競争が生じてきています。
売電買取価格にプレミアムがつく
上記のように、売電買取市場が拡大し活性化や競争が起きることで、国の指定する固定価格で買い取っている地域電力会社に対して、新規電力会社は買取価格にプレミアム(上乗せ価格)をつけて買い取る動きが出ています。
具体的には、今年度(2014年度)37円/kWhという地域電力会社の買取価格に、1円プラスして38円/kWhとするなど、プレミアムを載せた売電買取価格を設定するということです。
こうした変化により、太陽光発電の余剰電力を販売する場合、地域電力会社より新電力会社を選択する方がお得な価格で販売でき、売電収入を増加することができることになります。
売電単価を上げることについて、詳しくは以下の記事でご紹介しています。
ソフトバンクグループが参入!太陽光で発電した「電力を高く買い取るサービス」とは?
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新電力会社が電力をプレミアム価格で買い取ることができる理由
ここでは話をわかりやすくするために数値を単純化して説明します。
国が指定する固定価格の37円/kWhで電力会社が電気を買い取る時、この価格には「再生可能エネルギー促進賦課金(*a)」約27円分と「回避可能費用(*b)」約10円分が含まれています。
実は「再生可能エネルギー促進賦課金」相当額は電力会社の負担ではなく、全ての電気料金に上乗せして国民が支払ったお金を「費用負担調整機関」が電力会社に配分しています。
このため、電力会社は実質的には「回避可能費用」分の負担で再生可能エネルギーを購入しています。そして約10円/kWhの負担で仕入れた電力を、例えば15円/kWhで販売するとします。つまり1kwh当たりの粗利益5円を載せて販売するわけです。
- 37円/kWhで地域電力会社が買い取る例
- =回避可能費用約10円(電力会社負担) + 賦課金27円(国民負担)
- 38円/kWhで新電力が買い取る例
- =[回避可能費用約10円+上乗せ1円](電力会社負担) + 賦課金27円(国民負担)
いっぽう、買取価格を38円/kWhに設定している新電力会社はどのような収支なのでしょうか。電力仕入れ価格の内訳は、再生可能エネルギー促進賦課金(*a)約27円ぶんと回避可能費用(*b)約10円分に加え、プレミアム分1円の合算となります。
そして、約11円/kWhの負担で仕入れた電力に粗利益4円を乗せ、地域電力会社と同等の15円/kWh、あるいはもっと利益を小さくしてより安く販売することになります。
再生可能エネルギー促進賦課金とは
再生可能エネルギーの発電施設を作った人に金銭的なメリットを与え、再生可能エネルギーの発電施設を増やすための制度。この再生可能エネルギーを高く買い取った分は、再生可能エネルギー促進賦課金という形で毎月の電気代に追加され国民が負担しています。
回避可能費用とは
回避可能費用とは、電力会社が再生可能エネルギーを買い取ることにより、本来予定していた発電を取りやめ、支出を免れることが出来た費用を指します。どの電力会社にも統一の価格で毎月単位で設定されます。
つまり電力会社は「火力などの既存の発電所を動かした場合にかかる1kWhあたりの経費」と同じ額の負担で、再生可能エネルギーを購入できる仕組みになっています。再生可能エネルギーが普及すればするほど、回避可能費用は高くなるので、再生可能エネルギー促進賦課金が減少して国民負担を減らすことができます。
実際の価格はこの例の数字そのものではありませんが、新電力会社は1kWh当たりの粗利益を小さく抑えることにより有利な仕入れを実現し、地域電力会社と比べても競争力のある価格で販売するというビジネスモデルで売電買取市場に参入しているのです。
まとめ
固定価格買取制度の制定によって、太陽光発電を導入する事業者や家庭は大きなリスクを冒すことなくソーラーパネルを設置し、売電で収益を上げられるようになりました。
また、電力小売の全面自由化を見据えた参入競争は、基準価格に上乗せする価格(プレミアム価格)での買い取りのように、ソーラーパネルを設置した家庭へより大きなメリットをもたらすなどの変化へとつながっています。