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洋上風力発電事業がいよいよ本格化、5カ所を促進区域で事業化へ【エネルギー自由化コラム】

電力自由化ニュース

洋上風力発電の事業化が動き始めています。洋上風力発電は事業規模が大きく経済効果も期待できるため、地域振興の面でも注目される産業のひとつです。

国土交通省から海洋再生可能エネルギー発電設備等拠点港湾(基地港湾)に指定された秋田県能代市の能代港で改修工事が始まるなど、洋上風力発電が事業化に向けて本格的に動きだしました。経済産業省と国交省は長崎県五島市沖、秋田県能代市・三種町・男鹿市沖など5カ所を事業者が洋上風力発電設備を30年間にわたって優先的に整備できる促進区域としています。このうち、長崎県五島市沖では事業者の公募が始まりました。

能代市では岸壁の改修工事に着工

「洋上風力発電は経済効果が期待できる新エネルギー。経済効果の最大化と雇用の創出を図るため、建設工事やメンテナンス、関連部品製造などへ県内企業の参入を促したい」。9月、能代港で開かれた大森地区岸壁改修工事の着工式で、秋田県の佐竹敬久知事は声を弾ませました。

着工式には国交省や秋田県、能代市のほか、工事関係業者などから約100人が出席、佐竹知事や能代市の斉藤滋宣市長らがくわ入れして工事の安全を祈願しました。佐竹知事とともにあいさつに立った斉藤市長は「洋上風力発電の拠点化に向け、あらためて地域の結束を強くしなければならないと決意した」と力を込めました。

秋田県能代市・三種町・男鹿市の沖合が洋上風力発電の促進区域に指定されたのに伴い、能代港は風車の組み立てやメンテナンスを行う基地港湾となります。改修工事は資材の重さに耐えられるようにするためで、総事業費35億円が投入され、約1.8ヘクタールが強化されます。完成は2023年度の予定です。

秋田県内では、秋田市の秋田港も基地港湾に指定されています。能代港と同様に岸壁やふ頭が強化されます。秋田県港湾空港課は「洋上風力推進に向け、国交省とともに基地港湾をしっかりと整備していきたい」と語りました。

秋田県は風力発電で地元経済浮揚を期待

秋田県は促進区域に秋田県能代市・三種町・男鹿市沖のほか、秋田県由利本荘市沖(北側)、秋田県由利本荘市沖(南側)の計3カ所、一定の準備段階に進み、有望な区域に秋田県八峰町・能代市沖、一定の準備段階に進んでいる区域に秋田市潟上市・秋田市沖が経産省と国交省によって選ばれています。洋上風力発電では国内で最も注目を集める地域です。

洋上風力発電の推進は秋田県が進める再エネ拡大の一環でもありますが、もう1つ大きな狙いがあります。深刻な人口減少対策として風力発電産業を振興し、新たな雇用の場を生み出そうとしていることです。

総務省の住民基本台帳による人口調査では、秋田県は1月時点で98万人と100万人の大台を割りました。日本人人口の自然減少率1.11%、総人口に占める65歳以上の高齢者の割合36.55%は全国最高。逆に総人口に占める15歳未満の割合は9.81%で、全国の都道府県で唯一10%の大台を割りました。

産業としてすそ野が広い洋上風力発電

洋上風力発電は部品数が1万~2万点と多く、事業規模が数千億円に上るという試算も出ています。メンテナンスや修理などを含めるとすそ野が広い産業で、発電機や軸受け、増速機などは国内で生産されています。

秋田県は県内の業者が下請けなどで参入の余地があると考えています。下請けで参入した業者を育成し、地域の雇用を支える産業に育てようというのが狙いです。

秋田県資源エネルギー産業課は「洋上風力発電の導入を関連産業発展の起爆剤にしたい。再エネ拡大と同時に地域振興の面でも大きな期待をかけている」と述べました。

長崎県五島市沖は既に事業者を公募中

経産省と国交省は再エネ海域利用法に基づく洋上風力発電の促進区域として国内5カ所を指定しています。秋田県内3カ所に加え、千葉県銚子市沖、長崎県五島市沖です。このうち、長崎県五島市沖は6月から事業者の公募が始まりました。12月に締め切り、5カ月程度の期間審査して事業者を決めます。その他の4カ所も年内に公募が始まる見込みです。

このうち、五島市沖は現場海域の水深が100~150メートルと深いため、浮体式の設備で発電することを条件に30年間の占有が認められます。発電設備の下限出力は1.68万キロワットとし、発電設備の設置や維持管理に必要な人員、物資の輸送に五島市の福江港を利用できるとする公募占有指針が公表されています。

五島市再生可能エネルギー推進室は「再エネの推進は五島市の4大プロジェクトの1つだけに、大きな期待をかけている。風力発電が新産業に成長して新たな雇用の場が生まれれば、人口減少に悩む地域にも朗報となりそうだ」と話しています。

洋上風力促進区域と一定の準備段階に進み、有望な区域

●促進区域
●一定の準備段階に進み、有望な区域
長崎県五島市沖青森県沖日本海(北側)
秋田県能代市・三種町・男鹿市沖青森県沖日本海(南側)
秋田県由利本荘市沖(北側)秋田県八峰町・能代市沖
秋田県由利本荘市沖(南側)長崎県西海市江島沖
千葉県銚子市沖
出典:国土交通省資料から筆者作成

新たに4カ所が有望な区域に

経産省と国交省は7月、今後の促進区域指定に向けて一定の準備段階に進んでいる区域と有望な区域が公表しました。

一定の準備段階に進んでいる区域は北海道岩宇・南後志地区沖、北海道檜山沖、青森県沖日本海北側、青森県沖日本海南側、青森県陸奥湾、秋田県八峰町・能代市沖、秋田県潟上町・秋田市沖、山形県遊佐町沖、新潟県村上市・胎内市沖、長崎県西海市江島沖の計10カ所です。

このうち、青森県沖日本海北側、青森県沖日本海南側、秋田県八峰町・能代市沖、長崎県西海市江島沖の4カ所は、協議会の組織など準備に着手する有望な地域に整理されました。今後、この中から新たな促進区域が生まれることになります。

欧州に比べ大きく遅れる日本の風力発電

日本の再エネは太陽光発電が先行して導入拡大をしてきましたが、欧州では再エネの主力は風力発電です。常に一定の偏西風が吹く好条件もあり、電源構成に占める割合は廃止に向けて動いている石炭火力を抜き、第2位を占めています。

遠浅の海が多いのも欧州の特徴で、英国などが早くから洋上風力発電に乗り出しました。その結果、累積発電量は日本が2.1万キロワットなのに対し、英国995万キロワット、ドイツ745万キロワットと大差をつけられています。

大規模開発による量産効果や風車の大型化により、欧州の生産コストは1キロワット時当たり10円を下回り、火力より安い水準だとされます。日本と比べると3分の1のコストで整備が進んでいるのです。

世界各国の洋上風力発電導入状況

発電容量(万kW)発電所数
英国99540
ドイツ74528
デンマーク17014
ベルギー156
8
日本2.14
出典:経済産業省資料から筆者作成

非効率な石炭火力の代替措置として期待も

日本の近海は遠浅の海が少なく、着床式より費用負担が大きい浮体式に頼らざるを得ません。浮体式はまだ、発電実績が乏しく、技術の確立が必要です。台風の接近、上陸が多いという気象条件に合わせた設備も開発しなければなりません。

日本では長く風力発電の市場が小さかったため、有力企業が育たず、2019年には日立製作所が自社生産を打ち切りました。市場は欧州や中国企業に席巻されており、設備の大半を輸入することでより割高になっています。今後、国内企業の育成や技術開発と同時に、コスト削減が必要になってくるわけで、難題が山積している一面も垣間見えます。

梶山弘志経産相は記者会見で「再エネを産業ととらえ、競争力を強化する必要がある」と力説しました。非効率な石炭火力縮小の代替措置として洋上風力発電に期待する考えを示したと受け止められています。どうやって課題を克服し、新産業として軌道に乗せるのか、今回の洋上風力本格推進が試金石となりそうです。

高田泰(政治ジャーナリスト)
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