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2021年2月の電力業界動向 需給ひっ迫やスポット価格の高騰、次世代スマートメーター制度検討会など、論点をまとめました

電力自由化ニュース

注目すべき2021年2月の電力業界の最新動向を、国内最大級の電気・ガス代の見直しサービスであるエネチェンジの専門家がわかりやすく解説します。2020年12月から起きた需給ひっ迫やスポット価格の高騰、次世代スマートメーター制度検討会、2050年カーボン・ニュートラルなど、今後注目しておくべき電力事業をめぐる議論を資料を読み解きながらまとめました。

2021年2月の電力業界の動向を、関係省庁の資料などから振り返ります。今回は、2020年末から続いた需給ひっ迫とスポット価格の高騰、電力販売関連、次世代スマートメーター検討などについてお伝えします。

気になる電力業界のニュースのポイントや見ておきたい注目の資料について、エネチェンジを運営するENECHANGE株式会社の顧問である関西電力出身、元大阪府副知事の木村愼作氏に解説してもらいました。

関西電力出身、元大阪府副知事の木村愼作氏

需給ひっ迫・スポット価格高騰について

まずは、需給ひっ迫・スポット価格高騰の続報について、おさらいしておきましょう。


出典:JEPXプライスチェッカーより
上のグラフは、2020年12月1日から2021年2月26日まで、約3カ月のシステムの取引価格です。12月26日頃から価格が徐々に上がり、1月15日には最高値を記録しました。

現在は落ち着いていますが、2月15日から17日にかけて取引価格の高値が少し上昇しているのは、13日の23時頃に起きた地震の影響だと考えられています。

市場価格高騰を受け、経済産業省が発表したプレスリリース

今回の市場価格高騰を受け、経済産業省は『「市場連動型」の電力料金プランを契約されている消費者の皆様へ』というプレスリリースを1月29日に公開しました。

経済産業省では、市場連動型プランを提供している小売電気事業者に対して電気料金の負担が激変しないよう要請しました。電力・ガス取引監視等委員会では、市場連動型プランを契約している消費者に向けた相談窓口を設置し、現在相談に応じています。

また、同日に『卸電力市場価格の急激な高騰に対する対応について』というプレスリリースも公開しています。

経済産業省は、一般送配電事業者に対し、精算金(インバランス料金)単価の上限を200円/kWhとする措置を要請しました。

講ずべき措置の内容として、「需要家が安定的な電力供給を継続して享受できるよう、3月に請求される需要バランシンググループに係る精算金(1月の電力取引に係る精算金)について、1月の卸電力市場価格の推移を踏まえて最大5カ月間均等に分割した支払いを可能とするよう対応を行う」と発表しています。なお、この措置の申請は、3月15日まで受け付けるとのことです。

スポット市場価格の動向など

2月5日には、電力・ガス取引監視等委員会 制度設計専門会合(第55回)が行われ、スポット市場価格の動向などについて議論されました。


出典:スポット市場価格の動向等について|経済産業省以下、この章の出典はすべて同じ
前回の会合では、「インバランスが調整力連動であればここまで高騰しなかったのか検討すべき」「価格高騰の原因を徹底究明すべき」など、さまざまな議論・要望・指摘がありました。


それを受け、情報開示の在り方や先物・先渡市場などのさらなる活用に向けた方策、インバランス料金についての分析などの制度的な課題を、今後の対策方針として議論内容を踏まえながら引き続き検討していくとしています。

今冬の需給ひっ迫状況について

2月15日に行われた第57回 調整力及び需給バランス評価などに関する委員会では、今冬の需給ひっ迫状況についての説明、実施した対応策や得られた効果の解説、今後の検討課題が報告されました。


出典:今冬の需給ひっ迫への対応について|調整力及び需給バランス評価等に関する委員会 事務局以下、この章の出典はすべて同じ

今冬の火力機の稼動状況について、報告がありました。2021年1月8日に発生した今冬の全国最大需要において、火力機の稼動率の実績は、石炭・LNG・石油・火力全体、どの燃料種も86%~91%と供給計画(2019年度の設備利用率)を大幅に上回りました。このことから、供給の安定に寄与したと評価しています。

また、今冬の需給ひっ迫において、広域機関としては5つの対策を行い、需給の改善や一定以上の予備率の確保を実現しています。

今後は、需給ひっ迫に至らないようにするための取り組み、需給ひっ迫リスクへの対応力を強化する取り組み、ひっ迫に直面した場合のオペレーションを防止・準備・実行の3つの観点で検討課題を整理し、精査が進められます。

市場価格高騰を踏まえたFIT制度上の制度的対応

2月16日の基本政策分科会 再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会(第12回)合同会議では、今回の市場価格高騰を踏まえたFIT制度上の制度的対応として、基本的考え方や影響を示しつつ、今後の制度の在り方として3つの論点があげられました。


出典:市場価格高騰を踏まえたFIT制度上の制度的対応|経済産業省以下、この章の出典はすべて同じ

基本的にFIT制度は固定価格買取による「投資インセンティブの確保」と「市場取引の免除」を通じ、発電事業者の再エネ投資を国民負担で支える制度です。今回の会議では、緊急対策として、FIT特定卸供給における送配電買取の収支余剰相当額を賦課金の軽減にあて、国民に還元する仕組みとする方針を示しました。つまり、国民の負担が軽減される形となります。

2020年12月~2021年1月の期間中に生じた送配電買取余剰分は、2022年4月以降に控える省令改正後の不足分の交付額算定に際し、余剰分相当額を控除していくこととなります。

今後の方針として、電力・ガス基本政策小委員会において、今回の卸電力市場価格の高騰に係る検証、安定供給や市場制度の在り方などに係る検討が並行して行われる予定です。

今冬の電力需給ひっ迫に係る検証

第30回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会が、2月17日に開催されました。前日に行われた基本政策分科会 再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会(第12回)合同会議同様に、今冬の需給ひっ迫を議論の中心とし、今後の対応や検証、スポット市場価格の動向などが論点としてあがっています。

出典:今冬の電力需給逼迫に係る検証について|経済産業省以下、出典は同じ
今回の電力需給状況をめぐる背景としては、電力システム改革の進捗、電源ポートフォリオの変化、今冬の需給要因の3点が考えられます。


ここで注目しておきたいのは、4つめの課題である「容量(kW)に着目した安定供給の確認手法」です。供給計画・需給検証などでは、容量(kW)の余力評価をしていますが電力量(kWh)は十分になされていないとの指摘もありました。

検討の課題として、燃料の確保・調達と需給ひっ迫時の燃料融通の在り方などもあげられています。


出典:今冬の電力スポット市場価格高騰に係る検証について以下、この章の出典はすべて同じ
今冬の電力スポット市場価格高騰に係る検証については、1月19日に行われた小委員会にて、動向を踏まえたうえで「燃料調達の在り方を含めた安定的な電力供給量の確保の在り方」「供給能力確保の在り方」を含め、今後議論すべき4つの論点が整理されました。

今回は、スポット市場の在り方に係る検討方針に関する論点のうち、特に触れておきたい3つを解説します。


今回の市場価格の動向を踏まえ、まず同様の事象が生じた際にも市場への十分な売り札の供給、小売電気事業者が卸電力(kWh)にアクセスできる制度設備への必要性も論点のひとつです。


【論点④】では、市場においてセーフティネットやサーキットブレーカーを設けるべきではないかという意見もありました。

2022年度以降には、実需給の電気の価値に基づくインバランス料金制度が導入されます。この制度が市場のセーフティネットとして機能すると考えられますが、実際はどうなるのかという点も議論されています。


【論点⑧】では、インバランス収支に管理として「蓄電や需要側を含めた柔軟性確保の在り方」が議論すべき論点としてあげられました。

蓄電や需要側を含め、実需給の直前まで調整が可能な柔軟な調整能力の重要性は一層拡大していくと考えられます。

そのため、アグリゲーターのビジネス拡大や蓄電システムの普及拡大への環境設備、需給管理の高度化へのシステムの在り方などについて、検討を続けていくとしています。

1月19日に行われた小委員会で出た「市場参加者が市場リスクを理解しリスク管理をすべき」「リスクヘッジの方法が整備されていたか」などの意見を踏まえ、市場取引関連情報の開示や先物市場・先渡市場などの活性化などの検討項目を整理し、引き続き検討を進めていく予定です。

電力販売関連について

2月10日には旧一般電気事業者10社の2020年度第3四半期(4~12月)連結決算が出揃い、2月15日には電力取引状況(令和2年11月分:電力取引報)が公表されました。

※旧一般電気事業者とは…北海道電力・東北電力・東京電力・中部電力・北陸電力・関西電力・四国電力・中国電力・九州電力・沖縄電力をいいます。

旧一般電気事業者の2020年度第3四半期(4月~12月)連結決算について

まずは、旧一般電気事業者の2020年度第3四半期(4月~12月)連結決算を見てみましょう。

旧一般電気事業者 2020年度第3四半期(4月~12月)連結決算 主要諸元対前年同期増減(%)

事業者名販売電力量 小売卸等込み売上高経常利益売上利益
北海道電力△1.4 (低圧△3.7 高特+0.5 ) +0.5△2.8+ 165.4減収増益
東北電力△3.9 (電灯△1.6 電力△5.0)△3.0 △6.2△2.9減収減益
東京電力△8.8 (電灯△3.6 電力△10.9)△11.5△24.0減収減益
中部電力△7.0 (低圧△3.5 高特△8.3)△7.4+15.8減収増益
北陸電力 +1.0 (電灯+1.3 電力+0.9 ) + 5.7△2.2△ 26.9減収減益
関西電力△10.9 (電灯△3.7 電力△13.8) △8.7△7.5△14.1減収減益
中国電力△8.6 (電灯△0.9 電力△12.1)△6.7△6.1+30.1減収増益
四国電力△2.8 (電灯△0.7 電力△3.9)△11.4 △6.3△55.7減収減益
九州電力+2.2(電灯△0.4 電力+3.4+5.6+2.9+486.6増収増益
沖縄電力△2.6 (電灯+0.6 電力△4.8)----△8.1△7.6減収減益

出典:各社プレスリリースに基づきENECHANGEが作成

利益に注目すると、北海道・中部・中国・九州電力の4社が増益、除く6社が減益となっています。また、売上面に注目すると、九州電力は九州以外での小売販売電力量や卸売販売収入、再エネ特措法交付金が増加などの要因で増収となっていますが、九州電力以外は減収となっていることがわかります。これは、長く続く新型コロナウイルス感染症拡大による販売電力量の減少が大きく影響していると見られています。

北陸電力においては、小売・卸込ともに販売電力量が増加していますが、売上・利益は減収・減益となっています。

販売電力量は電灯においては新型コロナウイルス感染症拡大による外出自粛などで増加した一方、電力は工場などの操業が減少したことが売上・利益に大きく影響しています。経常利益については、新型コロナウイルス感染症の影響に加え、燃料費調整額の減少、購入電力量の増加や卸電力取引所価格高騰影響などによる減少があったとみられています。

更に、2020年12月から続いた電力需要ひっ迫が各電力会社の業績に与える影響は大きいと予想できます。今後公表される年間連結決算では、10社で減収が並ぶ可能性も考えられるでしょう。

電力取引状況(令和2年11月分:電力取引報)について

新電力販売電力量シェアの前年同月比シェアとの差(~2020.11)


出典:電力取引の状況(電力取引報結果)よりエネチェンジが作成
新電力販売電力量シェアは、去年と同様の動きを見せ、全体的に右肩上がりに推移しています。低圧電灯に関しても比較的安定した動きを見せていますが、旧一般電気事業者の子会社の伸びが堅調であることにも注目しておきたいところです。

次世代スマートメーター制度検討会について

第5回 次世代スマートメーター制度検討会が、2月18日に行われました。

2024年度以降に順次導入予定の次期スマートメーター(次世代電力量計)の標準機能が決まり、導入に向けた論点や標準機能の検討についての中間取りまとめ案(計量器、通信・システム、詳細仕様の検討・調達方法)などが議題にあがっています。


出典:次世代スマートメーターの標準機能について(中間取りまとめ案)|資源エネルギー庁以下、この章の出典はすべて同じ

今回決まった標準機能で再エネの接続可能量拡大・送電ロスの解消以外で特に注目しておきたいのは、停電を検知した際に即座に警報を送る機能の搭載です。

これにより、低圧線や引込線の断線などによる停電の早期発見、解消が実現します。さらには、情報を電力会社の復旧計画や自治体の避難計画への活用も可能とし、停電時間の短縮も考えられます。

次世代スマートメーターは、すべての世帯・事業者への2030年代早期までの導入を目指しています。今後は、一般送配電事業者が導入計画を策定していきます。

2050年カーボン・ニュートラルの実現に向けて

2月22日には、産業構造審議会に新たに設置された「グリーンイノベーションプロジェクト部会」の第1回部会が開催されました。


出典:グリーンイノベーション基金事業の今後の進め方について|経済産業省
この部会は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて造成した「グリーンイノベーション基金」の運営にあたり、基金を効率的・効果的に活用するため、新たに設立されました。昨年末に発表されたグリーン成長戦略の14の分野を対象とし、野心的な研究開発を今後10年間の継続した支援を行う予定です。しかしながら、取り組みは不十分である場合には、企業に対して国費負担額の一部返還を求めるなど、厳しい一面もあります。

今回の部会での主な審議内容として、グリーンイノベーション基金事業全体を管理・運営するための基本方針の議論や研究開発プロジェクト全体の進捗状況の確認などが挙げられました。

3月4日に開催された第2回部会では、基本方針の更なる検討を深め、3月中には経済産業省により基本方針を策定するとしています。

2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略

同日に行われた第5回 グリーンイノベーション戦略推進会議にて、2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略について議論がありました。


出典:2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略|経済産業省以下、この章の出典はすべて同じ

グリーン成長戦略およびその枠組みでは、さまざまな目標がまとめられていますが、実行していくには具体的な方向性を決めていく必要があり、並大抵の努力では叶いません。

特に民間企業の協力は不可欠です。既存のビジネスモデルや戦略を根本から見直す必要があり、政府は、この企業の大規模な投資とイノベーションを起こすための挑戦を支援していく役割が求められます。

国としては、具体的な見通しと14分野の成長が期待される産業において高い目標を掲げ、企業が挑戦しやすい環境を作る必要があると言えるでしょう。

グリーン成長戦略の枠組みでは、「企業の現預金(240兆円)を投資に向かわせるため、意欲的な目標を設定。予算、税、規制・標準化、民間の資金誘導など、政策ツールを総動員」するとしています。また、2050年までの時間軸を持った分野別の工程表に落とし込み、実行計画を立てていくとも発表がありました。

次期エネルギー基本計画の策定にあたっての要望・意見の聴取

2月24日に開催された総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会(第37回会合)では、次期エネルギー基本計画の策定にあたっての要望・意見の聴取が行われました。

今後、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、次期エネルギー基本計画の策定はかなり重要なものとなります。今回の聴取では、経団連・日本商工会議所・連合・全国消費者団体などの団体へのヒアリングが行われました。
出典:総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会(第37回会合)
ここで大きく取り上げられたのは、原子力と再エネについての政策です。原発の再稼働を促進するのか、目標を達成するうえで新増設はあり得るのか、再エネを主電源とするのであれば大量導入は必要不可欠であるなどの意見・注文が相次ぎました。

2030年のエネルギーミックスにおける原子力の位置づけでは、現状では意見が割れています。今後どのような方向性に定まるのか、注目しておくべきでしょう。

燃料アンモニア関連

2月8日には、カーボン・ニュートラルの一環として、第3回 燃料アンモニア導入官民協議会が行われ、中間取りまとめ(案)が報告されました。

出典:燃料アンモニア導入官民協議会中間とりまとめ(案)|燃料アンモニア導入官民協議会

燃料アンモニアの導入拡大に向けた方策においては、国内需要想定を2030年には年間300万トン、50年には年間3000万トンと設定しています。方策として目指すべき目標値は決まりましたが、今後どのように燃料アンモニアを増やしていくかが課題になりそうです。

また、資源エネルギー庁は、燃料アンモニアの導入・拡大を目指すうえで、利用にかかる国内法制度への位置付けへの検討も進めています。今後の方向性として、エネルギー供給構造高度化法等において、非化石エネルギー源として定める方針です。非化石価値を顕在化させ、事業者の投資予見性をより高めていくのが狙いです。

電力業界の動向、次回は2021年4月にお届け予定です

2020年2月の電力業界の動向を、まとめて木村氏に聞きました。さらに詳しく知りたい方は、紹介した資料を確認してみてください。

次回は、2021年4月に最新情報をお届けする予定です。

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