「電力自由化」とは?そのメリットは?
この記事の目次
時々ニュースで聞く電力自由化とは、そもそもなんでしょうか。日本では2016年に「電力小売りの全面自由化」が予定されていますが、そうすることによってどのようなメリットが生じるのでしょうか。「電力自由化」の意味や目的、そしてメリットについてご説明します。
年間平均34,352円節約できます!
エネチェンジ電力比較診断の3人世帯を選択したシミュレーション結果で、電気代節約額1位に表示されたプランの年間節約額の平均値です。節約額はギフト券などの特典金額も含まれています(シミュレーション期間/2024年7月1日~2024年9月30日)
「電力自由化」とはどういう意味?
電力自由化とは2000年から順次進められている電気事業の制度改革のことです。日本の電力の供給は戦後長い間、全国に10社ある地域ごとの電力会社によって行われてきました。「電気事業法」と呼ばれる法律で参入規制が行われ、各地域の電力会社には小売供給の地域独占が認められてきました。
しかし、さまざまな規制緩和によって、新たに電気事業に参入した事業者や他地域の電力会社などが電気を供給することがすでに可能になっています。
電力自由化によって需要家(電気の利用者)は自分にとって有利な条件などを検討し、他の地域の電力会社や新規参した事業者から適切な小売事業者を選択することができるようになりました。
日本の電力事業の歴史
- 1886年(明治19年)東京電燈(東京電力の前身)が開業。以後各地に電力会社が誕生し、ピーク時には約850社まで増える。その後、事業者の合併・吸収で5大電力に集約される
- 1938年(昭和13年)国家総動員法と同時に電力管理法が施行。国内の電力施設を国が接収。国策会社「日本発送電」を設立し、発電と送電設備を一元的に統制
- 戦後、日本発送電を解体し、全国の9配電会社を地域独占の電気事業会社に再編。1988年(昭和63年)に沖縄電力が民営化し、全国10電力体制に
- 1995年以降、4次にわたる電気事業制度改革で小売りの部分自由化などを実施
- 現在、電力システム改革で、小売りの全面自由化に向けた見直しや、電気事業法の定める電気事業の枠組みについて抜本的見直しの議論を行っている
電力自由化はすでに始まっていて、段階的に進められてきた
電力自由化はこれまで段階を追って進められてきました。まずは2000年3月、電気を大量に使う大規模工場やデパート、オフィスビルなどいわゆる「大口顧客」向けの「特別高圧」契約が自由化されました。
その後、2004年4月からは中規模工場や、スーパー、中小ビル向けが自由化され、さらに2005年4月からは契約電力が50キロワット以上の小規模工場向けについても自由化され、「高圧」に分類される契約はすべてが自由化されました。これら自由化された部分の販売電力量は全体の6割をこえています。
家庭でも電力会社を選べる時代が来る
残りの4割は家庭用やコンビニエンスストアなどの商店向けに販売される「低圧」として分類されている契約です。現在、この部分についてはまだ自由化されていません。つまり、家庭ではまだ電力会社を選ぶことができないのです。現在の計画では2016年をめどに家庭や商店向け電力の販売も自由化される予定になっています。これによって日本の電力市場は全面自由化されることになります。
経済産業省の資料によると、新たに自由化される電力市場の市場規模は約7.5兆円に上ります。契約数にすると一般家庭部門が約7678万件となり、商店や事業所などは約742万件にのぼります。
電力小売りの全面自由化にはどんなメリットがあるの?
では、電力小売りが全面的に自由化されるとどのようなメリットがあるのでしょうか。
電力事業への参入が自由化され、選択肢が広がる
まず大きなメリットは、家庭や商店にとって電力購入の選択肢が広がることです。
東京電力や北海道電力など各地域の電力会社が独占的に電気を供給していた約7.5兆円の電力市場が開放され、家庭や商店などを相手にしたビジネスチャンスが大きく広がります。
地域電力会社以外からも電力を購入する先が可能になりますから、購入先の選択肢が広がります。
つまり地元以外の電力会社から電気を買ったり、今までよりも安い電気を供給する電力会社に乗り換えたりと、一般の家庭でも電力会社を自由に選ぶことができるようになります。
エネルギー以外の業種も参入へ
またエネルギー関連企業以外にもさまざまな企業が電気事業に参入し、競争がおこりますから、料金が安くなったり、サービスが多様になったりする効果があります。
例えば通信会社などが参入した場合には、電気と電話、インターネットなどのサービスを組み合わせたパッケージにした「セット割引」を行うなど、一つ一つを個別に契約するよりもずっと安く提供出来るといった具合に、これまでなかったサービスが生まれることも考えられます。
電力事業への参入が自由化され、選択肢が広がる
電力自由化のもうひとつのメリットは、電気料金の設定が自由に行われるという点です。
現在、家庭用などの「低圧」部分の電気料金は、地域の電力会社が発電にかかるコストや人件費、設備の維持費用などの必要経費などを総合的に判断してはじき出し、国の認可を得て決定されています。国はその細部にまで目をこらし、電力会社が節約できる部分などを厳しく指摘しながら、最終的に料金を認可します。つまり国の規制が強く働いているのです。
2016年以降、電力小売りが完全に自由化されると、家庭向けも含めて料金の設定は電気事業者が自由に行うことができるようになります。経営体力や経営努力に応じて価格が決まるので、事業者ごとに料金やサービスに差が出てきます。いかに消費者に魅力ある料金体系やサービスを作り出すことができるかが問われることになります。
選択肢はこう変わる
電力自由化を受けて、家庭向けの電力販売事業にガス、通信、商社、製紙、家電量販店、風力や太陽光などの発電会社などが参入することが考えられる。
- 小売り全面自由化前
- 地元のA電力会社の電気料金プランだけ
- 小売り全面自由化後
- 1.A電力会社の電気料金プラン
- 2.他地域のB電力会社のプラン
- 3.新規参入の通信系C会社の電話とセットのプラン
- 4.新規参入のD自動車メーカーの電気自動車と電気のセット販売
など・・・
電気料金の抑制効果も
電力自由化によるメリットのうち、電気料金が抑制される場合の効果はわかりやすく、消費者への影響も大きいです。経済産業省の試算によりますと、電力会社間の競争が活発に起こることにより、発電用の燃料コストが上昇している中でも電気料金を抑制する効果があり、これまでに5兆円以上の効果があったとみられています。
愛媛県松山市の中学校29校では、新規参入した電力会社との契約によって、従来の四国電力が示した金額と比べて年間約6.2%、金額にして約500万円削減した事例もあります。
多様なメニューで省エネ効果も
このほか電力自由化で電気事業に参入する電力会社が増えることにより、多様な料金メニューが打ち出されることが期待されます。例えば、夏の昼間に価格が高く、その他の時間帯は価格が安くなるような料金メニューが増えることなどで、電気を使う企業や家庭を上手に省エネルギーの方向に誘導するなど、日本全体で省エネ効果を上げることができます。
まとめ・電力自由化のメリットは大きい
以上みてきたように、電力自由化には電気を消費する家庭や商店、企業などが電気の利用実態に応じた電力会社を選べるメリットがあるほか、自由化される市場が拡大することでビジネスチャンスが生まれ、電気事業に新たに参入する企業が増えることで競争が活発化するメリットもあるといえます。
健全な競争が促されることで、効率化による料金の引き下げやサービス内容の向上、省エネなどがこれまで以上に進むことが期待されているのです。