クリーンエネルギーとは―仕組みやメリットデメリット等を徹底解説
この記事の目次
クリーンエネルギー
さて、まずはクリーンエネルギーとは何なのかを見ていきましょう。
定義について
そもそも「クリーンエネルギー」とは、一体何を指すのでしょうか。何に対してクリーンなのかといえば、それはもちろん環境に対してクリーン、ということですよね。実はここに、「クリーンエネルギー」という用語の定義のしづらさがあるのです。
「環境に対してクリーン」なエネルギーとは、地球温暖化の原因であるとされる二酸化炭素(CO2)や、大気汚染の原因となる硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)などを排出しないエネルギー、と言い換えることができます。例を挙げれば、太陽光発電や風力発電、水力発電があります。
ということは、化石燃料を使わずに得られるエネルギーは全てクリーンエネルギーであると言い切ってしまっていいかというと、必ずしもそうでもありません。その最たる例は原子力発電や水力発電です(詳しくは後述)。この2つは両方とも発電時にCO2を排出しませんが、放射性物質を生んでしまったり、ダム建設に際して環境破壊が発生したりする恐れがあり、「果たして完全にクリーンなのか?」という議論があります。このように、「クリーンエネルギー」という用語を定義するのは難しいのです。
再生可能エネルギー?グリーンエネルギー?
クリーンエネルギーのような「○○エネルギー」という言葉と似たものに「再生可能エネルギー」やら「グリーンエネルギー」やらがあります。特に再生可能エネルギーは皆さんも聴いたことがあると思いますが、これらの違いはどこにあるのでしょうか。それぞれの定義を確認してみましょう。
まずは法律で定義されているものから。
再生可能エネルギー
テレビや新聞、雑誌、Webなどでよく見かけるようになった「再生可能エネルギー」という言葉ですが、その定義は法律によって決まっています。再生可能エネルギーとは、
太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるもの
出典:エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律
を指します。石油などの化石燃料は1回燃やしてしまえばそれっきりですが、少なくとも人間が絶滅するまでは存在すると考えられる太陽や、地球上で循環し続ける水を使えば、永続的にエネルギーを得ることができます。一例を挙げると、太陽光発電や風力発電の他、水力発電も規模の大小を問わずに含むことができます。
新エネルギー
新エネルギーとは、
非化石エネルギー(中略)のうち、経済性の面における制約から普及が十分でないものであって、その促進を図ることが非化石エネルギーの導入を図るため特に必要なもの
と法律で定義されています。具体的には、
- バイオマス(動植物に由来する有機物)を原材料とする燃料製造
- バイオマス(動植物に由来する有機物)熱利用
- 太陽熱利用
- 河川水などを熱源とする温度差熱利用
- 雪氷熱利用
- バイオマス(動植物に由来する有機物)発電
- 地熱発電(バイナリー発電)
- 風力発電
- 水力発電(出力1,000kW以下)
- 太陽光発電
の10種類が指定されています。
参照:新エネルギーはどのような種類がありますか? | よくあるご質問 [関西電力]
ということは、再生可能エネルギーと新エネルギーには若干かぶるところがある、ということですね。下の図をご覧になると分かりやすいと思いますが、「再生可能エネルギーの中に新エネルギーが内包される」と言えます。画像の出典:3.「再生可能エネルギー等」の概念整理
グリーンエネルギー
さて、もうひとつよく聞く言葉に「グリーンエネルギー」というものがあります。こちらは法律ではっきりと定義されている用語ではありません。この「グリーン」の本来の意味を英英辞典で調べてみると、
harming the environment as little as possible
出典:ロングマン現代英英辞典
と出てきます。つまり意訳すれば「環境に最大限優しい」エネルギーということになりますが、そうなると「クリーンエネルギー」とさほど意味は変わらない感じがします。「クリーン」と「グリーン」で音も似ていることもあって、ほとんど同じ意味で使われていると考えてよさそうです。ちなみにアメリカでは、再生可能エネルギー由来の電力を「グリーンパワー」と定義しています。参照:System of Registries | US EPA
クリーンエネルギーの具体的な種類・設備は?
さて次は、クリーンエネルギーとして挙げられるものの具体的な種類・設備を、メリットとデメリットを絡めて見て行こうと思います。メリットの項には、「クリーンエネルギーである」「空気を汚さない」のようなものは省きます。
中小水力
水力発電の中でも、出力1000kW以下のものは中小水力として区別しています。原理は一般的な水力発電と同じように、高さを利用して水を落下させ、その運動エネルギーで発電します。
- メリット
- 小川や農業用水、浄水場、下水処理場の放流口などとにかく水の流れさえあれば、そこに発電機を設置して発電することができます。
- 新たにダムを建設する必要がなく、川の流れをせき止めることもないので、環境にかかる負担が小さくて済みます。
- デメリット
- 農業のための農業用水、浄水を家庭に届けるための送水管などに発電機を設置するのは、本来の目的以外の設備利用になるので、その都度許可を取る必要があります。この手続きが煩雑であると指摘されています。
- 詰まったゴミを取り除く、堆積した砂を流す等、設備のメンテナンスが必要となり、設備が小型化すればするほど、発電量に対してメンテナンスの負担が大きくなることが想定されます。
中小水力発電について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
地熱
地中で熱せされた地下水から蒸気を作ってタービンを回すのが地熱発電です。
- メリット
- 火山国の日本は、2,347万kWに相当する資源量を持っているとされています。この値は、世界でも第3位という屈指の量を誇ります。参照:地熱発電の特長 | 日本地熱協会 – Japan Geothermal Association (JGA)
- 以下で説明する風力・太陽光とは違い、天候や風量に左右されることなく、24時間365日発電を続けることができます。
- 水は汲み上げた時点で既に熱水となっているので、わざわざ化石燃料を使って加熱する必要がありません。
- デメリット
- 地熱発電を行うのに適している場所は火山地帯の国立公園が多く、従来は規制により発電所の新設が難しい状況でした。近年は規制緩和によって、国立公園内の地熱資源を利用した発電所の建設ができるようになりましたが、だからといって無分別に発電所を作るわけにもいきません。また、資材を輸送するための道路が未整備、地形が困難など、資源があってもそもそも発電所の建設が難しい状況も考えられます。
- また、温泉の湧出量や泉温の低下、景観への影響など、温泉・観光産業に対する悪影響にも強い懸念があります。発電所そのものだけでなく、送電線や鉄塔なども景観を損ないます。参照:資料2‐1 温泉事業者の懸念事例
- 発電所の設置に際して、環境アセスメントや建設そのものに時間がかかります。
- 年月を経ると熱水・蒸気の取り出し量が減衰することもあるので、井戸を数年ごとに追加で掘る必要があります。平均的には3.1年で1本の井戸を補充してなお、発電所の出力を維持できないことが指摘されています。こうした変化は発電所によって異なり、設置時点での予測が難しいということも開発の難しさにつながっています。参照:地熱開発における行為の概要 | 環境省:地熱発電事業に係る自然環境影響検討会
こういった難しさ故、世界第3位の量の資源をうまく活用できずにいるのが現状です。
バイオマス
バイオマスとは、生物を意味する「bio」と量を意味する「mass」から成る言葉で、化石燃料以外の生物由来の再生可能資源を指します。具体的には、
- (間伐材や建築廃材などの)木材
- 下水汚泥・家畜糞尿、生ごみ
- 可燃ごみ
- 廃油
が挙げられます。また、既存の石炭火力発電所でも使えるよう、木炭と石炭を混合させた燃料もあります。
- メリット
- バイオマス燃料が確保さえできれば、24時間365日発電できます。天候に左右される心配もありません。
- バイオマス発電は「カーボンニュートラル」であるとされています。カーボンニュートラルとは、「植物を燃やした時に出るCO2はもともと光合成の時に吸収したものだから、CO2の総量は増えない」ということです。参照:中部電力|バイオマス発電 – 再生可能エネルギーとは
- バイオマス燃料は国産できる資源のため、エネルギー自給率の向上につながります。また、林業など衰退する産業を支えることもできます。
- デメリット
- バイオマス燃料のひとつ、木材資源は、もちろん他の用途にも使われます。バイオマス発電に大きな補助を与えて普及を促進することで、他の用途に使える木材を燃料として使ってしまうなど、資源の取り合いにならないか懸念されています。
- 木質バイオマスは燃焼温度があまり高くないため、エネルギー変換効率は高くても25%と言われています。この値はお世辞にも高いとはいえません。参照:第1部 第I章 第3節 復旧・復興に向けた森林・林業・木材産業の取組(2)
バイオマス発電について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
太陽光
普通の人でも良く知っているクリーンエネルギーといえば、やはり太陽光発電でしょう。
- メリット
- 一般人でも導入することができるクリーンエネルギーです。個人でも固定価格買取制度による売電収入を得ることができ、相対的に電気代を節約することもできます。
- 「自立運転機能」があれば、災害等で停電が発生しても、太陽光パネルで発生した電気を使うことができます。東日本大震災の際も、停電中に自立運転機能に切り替えることで、テレビから情報が手に入った、炊飯器が使えて助かった等の事例があります。参照:太陽光発電 停電時の自立運転モードの利用実態調査 | プレスリリース一覧 | セキスイハイム
- 届出が必要ですが、休耕地や荒れ地などに太陽光パネルを置くだけで、土地を有効に活用することができます。一般的な発電所は、建設の際に環境アセスメントを行わなければなりませんが、休耕地などに太陽光パネルを設置する場合は、原則的には環境アセスメントを行う必要はなく、比較的容易に発電事業を進めることができます。長野県では、メガソーラー発電所においては環境アセスメントを行うよう条例で義務付けられました。参照:長野県環境影響評価制度/長野県
- デメリット
- 太陽光に頼る以上、発電が不安定となってしまいます。曇りや雨の場合、発電量は50%以下まで落ち込みます。とくにメガソーラーといわれる大規模な発電所は局所的な雲の動きで発電量が大きく上下してしまうことで、電力ネットワーク全体に与える影響が大きいことが指摘されています。エネチェンジ編集部調べ
- 太陽光はエネルギーの密度が低いので、他の発電手段と比べて発電量あたりに広い面積を占有してしまいます。設備投資のもとをとるのに時間がかかるので、長い期間、広い土地の用途を制限してしまうという経済的な課題が指摘されています。
- ゴミ、落ち葉の付着や植物による影の防止など、メンテナンスが広い面積に渡って必要です。また、家庭の屋根に設置された太陽光設備の場合、メンテナンスが十分に行われていないと発電量を維持できませんが、発電量が減ったことにも気が付きにくいという課題があります。
風力
風の力で風車の羽根を回し、発電機につないで発電する方法です。
- メリット
- 分散型エネルギーで、離島などの僻地にも設置することができます。
- 風力発電の風車は、陸上だけでなく海上に設置することもできます。
- デメリット
- そもそも風がないと羽根が回らず、発電できません。いっぽうで風が強すぎると風車や発電機に過度の負担がかかるため、風が弱すぎるときも強すぎるときも発電できなくなってしまいます。
- 風車の設置場所として適している、年間の平均風速が一定の水準以上である地域は、電気の需要地から離れた北海道や東北地方に偏在しています。とくに北海道と本州の間をつなぐ送電線の容量が小さいことで、北海道の風力資源を有効に使い切ることができていません。
- 落雷に打たれて風車が故障したり、強風で倒壊したりすることもあります。沖縄では、最大瞬間風速74.1m/sを記録した台風で、風力発電用の風車が3基倒壊した事例があります。参照:台風14号による風力発電設備の倒壊等事故調査報告について(概要)
- そのほかにも、風車の羽根に鳥が巻き込まれる、風切音などの騒音が発生したり、回転する羽根による日陰等の公害問題も発生しています。
これもクリーンエネルギー?
上で述べたように、「クリーンエネルギー」という言葉の定義には揺れがあります。「これもクリーンエネルギーなの?」というものを挙げてみます。
大規模水力(ダム水力発電)
もちろん水力発電は、発電の過程で温室効果ガス等は排出されませんから、クリーンエネルギーに分類することもできますが、「ダムを作る過程で環境が破壊される」「ダムで水がせき止められることで川の生態系がおかしくなる」というようなダム反対論は未だに根強く存在することから、大規模水力は再生可能エネルギーでありながら、クリーンエネルギーに含まれることはなかなかありません。いっぽうで既に作り終えたダムを使い続けている分には、あらたな環境破壊にはつながらないのでクリーンエネルギーといえるのでは?という考え方もあります。
中には「ダムを造るときにCO2が排出されるからクリーンエネルギーではない!」という主張もみられますが、それを言うなら太陽光パネルや風車の翼を作る際にもCO2は排出されますよね。
原子力
原子力発電の燃料であるウランは、もちろん核分裂してもCO2を排出しません。「二酸化炭素を排出しない」という部分のみに当てはめれば原子力発電はクリーンエネルギーですが、ひとたび原子力災害が起これば大量の放射性物質が放出される、というのは皆さんもご存じのことと思います。「地球温暖化の阻止のためにも原子力発電は維持すべきだ」という意見と「あんな重大事故を起こしたのだから原発はクリーンではない」「使用済み核燃料が排出されるから排出量ゼロではない」という意見で議論は平行線を辿っている状況です。
高効率火力
火力発電は化石燃料を燃焼させて発電する方法です。ということはもちろんCO2が排出されるのですが、火力発電の中には、燃焼温度を高めることで発電効率を上げて、同じ量の電力を生み出すのに出るCO2の量を相対的に減らすことができるものがあります。
- ガスタービンコンバインドサイクル(GTCC)
- ガスタービンコンバインドサイクル(英:Gas Turbine Combined Cycle)は、天然ガスを燃焼させてガスタービンを回し、その排熱で水を沸騰させて蒸気タービンも回してしまう、という一石二鳥の発電方法です。もともと天然ガスは燃焼時に排出するCO2の量が石炭や石油よりも少ない上、ガスタービンの排熱を再利用するコンバインドサイクルにすることでエネルギーを最大限に有効活用できるため、天然ガスやガスタービンコンバインドサイクルはクリーンエネルギーの一種と言われることもあります。参照:天然ガスはクリーンエネルギー/環境への取り組み/取り組み・活動/大阪ガスグループ/大阪ガスについて/大阪ガス
- 石炭ガス化コンバインドサイクル(IGCC)
- 石炭は今日の火力発電において最も多く使われている燃料でありますが、真っ先に挙げられる欠点は、地球温暖化の原因とされるCO2や、大気汚染の原因となる窒素酸化物(NOx)・硫黄酸化物(SOx)の排出量の多さです。このデメリットを克服しようと開発・改良が進められているのが、石炭ガス化コンバインドサイクル(英:Integrated coal Combined Cycle)です。石炭には、ガス化することでこれら有害物質の排出量を削減することができるという特徴があります。また、コンバインドサイクルを併設することで発電効率を上げていることもあり、今後クリーンエネルギーに分類されるようになるかもしれません。参照:三菱重工|IGCC(石炭ガス化複合発電プラント)
火力発電について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
クリーンエネルギーが注目されるわけ
ここまでいろいろと見てきましたが、そもそもクリーンエネルギーはなぜ注目されているのでしょうか。
クリーンエネルギーの意義
クリーンエネルギーの意義について考えてみましょう。
- 環境に優しい社会の創造
- 上で見たように、クリーンエネルギーは温室効果ガスや窒素酸化物などを排出しません。地球温暖化や大気汚染の進行を阻止するという課題の中で、クリーンエネルギーは注目を集めています。
- 純国産エネルギーの活用
- 再生可能エネルギーである水力や地熱、太陽光などは他国から輸入する必要はなく、全て純国産のエネルギーと見ることができます。火力発電に必要な化石燃料はほぼ全てを輸入に頼っているのが現状で、中東情勢が不安定になり原油の価格が上昇したり、世界のある地域で戦争が起こり石炭などが輸入ができなくなったりすると電力事情にも大きな影響が出るかもしれない、ということは容易に想像できます。そのような事態を想定する上でも、純国産のエネルギー源を確保しておくということは、エネルギー安全保障の観点からも非常に重要です。
- 新たな雇用の創出、経済の活性化
- クリーンエネルギー網の整備が進むことで、新たに雇用を創出する機会が生まれます。エネルギー基本計画のバイオマス発電の中から一例を挙げてみます。
未利用材による木質バイオマスを始めとしたバイオマス発電は、安定的に発電を行うことが可能な電源となりうる、地域活性化にも資するエネルギー源である。特に、木質バイオマス発電については、我が国の貴重な森林を整備し、林業を活性化する役割を担うことに加え、地域分散型のエネルギー源としての役割を果たすものである。
一方、木質や廃棄物など材料や形態が様々であり、コスト等の課題を抱えることから、既存の利用形態との競合の調整、原材料の安定供給の確保等を踏まえ、分散型エネルギーシステムの中の位置付けも勘案しつつ、規模のメリットの追求、既存火力発電所における混焼など、森林・林業施策などの各種支援策を総動員して導入の拡大を図っていくことが期待される。出典:エネルギー基本計画
このように、例えばバイオマス発電においては、燃料を確保するうえで林業や畜産といった第一次産業と密接な関係があり、バイオマス発電を推進することによって新たに雇用を創出することができると考えられています。また、電力を地産地消することで、地域の活性化につなげることも可能です。バイオマス発電に限らずとも、地熱発電で使う高温の地下水からの熱をビニールハウスに回す、といったさまざまな工夫を凝らすことで、地域経済を活性化することができると考えられています。
補助金
クリーンエネルギーは、大きく分けて
- 導入前の開発段階
- 導入中
- 運用中
の3段階のうちいずれか、もしくは全てで補助金が交付されます。住民レベルではいちばん身近な太陽光発電を挙げると、太陽光パネルの導入には国の補助金制度は終了しましたが、自治体の中には現在も補助金を交付する県や市町村があります。他にも、平成28年度予算を見てみると、以下のように、さまざまな補助金のための予算が計上されています。これはあくまでも一例にすぎません。
バイオマス発電 | 農林水産省 | バイオマスエネルギーの地域自立システム化実証事業 |
経済産業省 | バイオ燃料製造の有用要素技術開発事業(経済産業省) | |
中小水力発電 | 農林水産省 | かんがい排水事業等の土地改良事業 |
環境省 | 上水道システムにおける省CO2促進モデル事業 | |
地熱発電 | 経済産業省 | 地熱発電技術研究開発事業 |
経済産業省 | 地熱発電所調査井掘削費等補助事業 | |
風力発電 | 経済産業省 | 洋上風力発電等技術研究開発 |
経済産業省 | 風力発電のための送電網整備実証事業費補助金 | |
太陽光発電 | 経済産業省 | 高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発 |
環境省 | 廃棄物埋立処分場等への太陽光発電導入促進事業 |
参照:エネルギー需給構造高度化対策(省エネルギー・新エネルギー部②_新エネルギー対策課)参照:地熱発電に関する助成策|地熱発電について|資源エネルギー庁
固定価格買取制度
クリーンエネルギーのうち、太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電、バイオマス発電の5つは、固定価格買取制度(FIT)の対象となっています。「FITとは何ぞ?」と思った方もいらっしゃるでしょうから簡単に説明しますと、「固定価格買取制度(英:Feed-in teriff)」とは、この5つの方法で生まれた電気を、電力会社に一定の価格で買い取らせることを約束する制度で、再生可能エネルギーの普及を目的に平成24年7月に導入されました。発電設備に投資した分が買取料金として戻ってくる仕組みで、長い目で見れば資金を回収することができ、再生可能エネルギーの導入が促進されるのではと期待されます。
クリーンエネルギーの課題
さて、クリーンエネルギーに待ち受ける課題にはどんなものがあるか、見ていきましょう。
コスト
クリーンエネルギーの課題としてまず挙げられるのが発電コストです。左の表をご覧になればわかるように、1kW発電するのに必要なコストは、従来の石炭火力や水力、原子力では10円程度であるのに対し、1番高い太陽光発電では4~50円と、およそ5倍のコストがかかります。中には、地熱発電の1kWあたりおよそ10円というように、従来の発電方法と比べても遜色ないコストのクリーンエネルギーもありますが、多くのクリーンエネルギーは従来よりも2~3倍のコストがかかると言われています。
参照と画像の出典:なっとく!再生可能エネルギー 再生可能エネルギーを知る、学ぶ
補助金ありき
上の「補助金」の項でさまざまな補助金が用意されていると述べました。これは裏を返せば、補助金なしではやっていけない、ということでもあります。発電コストに加えて、開発や導入にかかるコストが補助金で補填しないといけないほど高いことも課題のひとつです。補助金は、つまるところ我々の税金から拠出されているわけです。もちろんクリーンエネルギーの技術改良は必要ではありますが、補助金として税金をつぎ込んだ結果としてきちんと成果が出ているのか、というチェックもこれからは必要かもしれません。
ベースロード電源となり得るか否か
クリーンエネルギーは、「安定的に発電できるか否か」で2種類に分けることができます。地熱発電や水力発電、バイオマス発電は比較的安定的に発電することができますが、太陽光発電と風力発電は天候まかせ故、どうしても出力が安定せず、むらが出てしまいます。電力の安定供給のためには、需要量と供給量がなるべく一致するのがいいという「同時同量」の原則が重要で、電力需要の少ない時間帯に電力が大幅に余ったり、逆に冷暖房需要の大きい夏場や冬場に電力が不足したりするというのは、決して好ましいことではありません。この出力変動を補完するためには、火力発電などの安定的に発電できて出力の微妙な調整が可能な電源でバックアップする必要があり、「クリーンエネルギーを使うために化石燃料を使う」という本末転倒の現象が発生してしまいます。今後の技術改良次第ですが、クリーンエネルギー全てがベースロード電源となり得るか否かにはまだまだ課題があります。
クリーンエネルギーと電力自由化
最後に、クリーンエネルギーと電力自由化の関係について、簡単に見ておきたいと思います。
安定供給性
平成26年9月、九州電力を皮切りに、大手電力5社が太陽光発電による電力の買取を中止することを決めました。
このできごとについては、詳しくは以下の記事でご説明しています。
これは、太陽光発電の買取申請が増えすぎたのが原因です。当時は、発電能力10kW以上の太陽光発電には、1kWあたり40円という非常に高い買取価格が設定されていました。これに目を付けた多くの業者が太陽光発電に参入したわけです。上で述べたように、太陽光発電は天候によって発電量が大きく左右されてしまい、「同時同量」という電力供給の原則を達成できなくなる可能性が非常に高くなってしまったため、このような決定となったのです。
電力自由化では、従来以上に電力の安定的な供給が求められます。固定買取価格制度を利用して電力自由化に参戦する新電力会社が多い中で、同時同量の原則が達成できずに送電が不安定になってしまった、ということが現実に起こることのないようにしなければなりません。
「原子力発電所などからの電気は使いたくない。クリーンエネルギーだけを使いたい」というのは可能か?
結論から言うと、自宅の屋根に太陽光パネルを設置する場合以外は不可能です。どんな方法で発電された電気も、消費者に届くまでには同じ送電線で流れていきます。つまり、水力発電所からの電力も、風力発電所からの電力も、原子力発電所や火力発電所からの電力も、全て混ざった状態で送電線を流れているのです。
仮に「クリーンエネルギー100%」を謳う新電力会社が存在したとしても、その会社からの電気が自分のところに送られてくるまでには、必ず他の発電所からの電力が含まれることになりますので、クリーンエネルギーだけを使うということは理論上できません。もちろん自宅の屋根に太陽光パネルを設置して発電すれば太陽光のみの電力を使うことはできますが、天候などで発電が十分でない場合は電力を購入することになります。
まとめ
今回はクリーンエネルギーについて見てまいりました。クリーンエネルギーについて、皆さんはどうお考えですか。
- 環境に対してクリーンなエネルギー
- 地球温暖化の原因とされる二酸化炭素(CO2)、大気汚染の原因となる硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)などを排出しないもの
- 法律で定義されているわけではなく、あいまいさ故に厳密に定義するのは難しい
- 「再生可能エネルギー」、「新エネルギー」は法律によって定義されている
- 「グリーンエネルギー」とはほぼ同義
- 中小水力、地熱、バイオマス、太陽光、風力
- 大規模水力……ダム建設によって環境が破壊されたり、川をせき止めることで生態系に異常が出るかもしれない→クリーンエネルギーにはなかなか含まれない
- 原子力……ひとたび事故が起これば放射性物質が放出される→議論は平行線
- 高効率火力……従来の石炭火力よりは発電効率が上昇し、CO2などの排出量も比較的少ない→クリーンエネルギーに含まれることも
- 環境対策、純国産エネルギーの活用、雇用の創出といった意義
- 補助金
- 固定価格買取制度
- 発電コストの高さ
- 補助金なしではやっていけないということ
- ベースロード電源となり得るか否か