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COP24がパリ協定運用ルールを採択して閉幕、岐路に立たされる日本【エネルギー自由化コラム】

電力自由化ニュース

「パリ協定」により地球温暖化対策の国際的な運用ルールが決定され、2020年から各国の温暖化対策が開始されます。石炭火力発電所を推進する日本には逆風となりますが、日本のエネルギー計画はこれからどう展開されていくのでしょうか。現在の動向について解説します。

ポーランドのカトヴィツェで開かれた第24回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP24)で、地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」の運用ルールが採択されました。

資金支援や削減目標で先進国と発展途上国の意見が対立していましたが、会期を延長して調整した結果、先進国から途上国まですべてを対象とする共通ルールの策定にこぎつけました。2020年からは共通ルールの下で各国の温暖化対策が動きだしますが、日本と欧米の意識の開きは広がっているようにも見えます。

パリ協定で途上国を含めた温暖化対策に合意

白熱の議論が続いたCOP24の会場。パリ協定の運用ルールが採択され、笑顔を見せる議長のクリティカポーランド環境副大臣(WWFジャパン提供)
パリ協定は2015年、フランスのパリで開かれたCOP21で決まった気候変動抑制に向けた国際的な取り決めです。
1997年に採択された京都議定書以来、18年ぶりとなる国際的な枠組みで、条約に加わる196カ国すべてが初めて参加しました。

産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑える内容で、同時に1.5度未満に抑えることも目指しています。各国の温室効果ガス削減目標は日本が2030年までに2013年比で26%、米国が2025年に2005年比で26~28%、EU(欧州連合)が2030年までに1990年比で少なくとも40%。中国など途上国も目標を打ち出す意欲的な中身になりました。

協定は2016年11月に発効しました。米国が批准後に協定からの離脱を表明しましたが、批准国は日本、米国、中国、欧州各国など約180カ国に及びます。しかし、削減に向けた詳細な運用ルールが決まっておらず、2020年からの協定適用に向けてCOP24で検討が進められていたのです。

削減目標は先進国、途上国で共通のルールに

決定された運用ルールは、途上国を含むすべての国に基準年など詳しい情報を盛り込んだ削減目標の策定と締約国への報告を義務づけました。目標達成状況の検証方法は先進国と途上国で共通のルールが適用されます。途上国は先進国より緩いルールの適用を求めていましたが、途上国それぞれの能力に合わせて柔軟に対応することで合意しました。

先進国が途上国向けに支援する資金は、2020年までに官民合わせて年間1,000億ドルが拠出されることになっていますが、先進国が将来の資金提供予定を2020年から2年おきに報告することで折り合いがつきました。

フランスやドイツは途上国向けの基金を一定額増やす方針を明らかにしました。しかし、米トランプ政権がオバマ政権時代に約束した拠出を取りやめており、日本やEUなどがどれだけ米国分の穴埋めをできるかが大きな課題に浮上しています。

パリ協定運用ルールの主なポイント

削減目標や量の検証に先進国、途上国で差をつけない
現在の削減目標の上積みを目指す
途上国への資金支援の具体的な内容を先進国が2年ごとに公表する
削減する目標期間を5年おきにするか、10年おきにするかは引き続き協議する
海外で削減した分を自国の削減分に加算する市場メカニズムのルールは検討を続ける

出典:COP24プレスリリースから筆者作成

各国が2020年までに新たな削減目標を提出

各国が削減目標の上積みを目指すことでも合意を得られました。パリ協定は気温上昇を2度未満にすることを打ち出しましたが、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は10月に公表した報告書で、2度未満に抑えても海面上昇による国土消失や洪水のリスクが高まるとしています。

島国では国土消失の危機が大きな問題に浮上しているだけに、各国は2020年までに現行より削減目標を高めることが可能かどうか検証し、目標を再提出しなければなりません。

海外での削減分を自国の目標達成に利用する「市場メカニズム」の導入や、温室効果ガスを削減する目標期間を5年にするか、10年にするかは、結論を先送りして2019年以降に結論を出す方向です。

日本の石炭火力推進には強い逆風

ただ、運用ルールが決定され、パリ協定が2020年から動きだすことは、日本にとって厳しい一面を持っています。日本が温室効果ガス排出量の多い石炭火力発電所を推進しているからです。

環境省によると、石炭火力発電所に関する世界の潮流は、主要国の火力発電割合は2013年度実績に対する2030年の目標が、EUは28%から9.1%、イギリスは37%から0%、米国は40%から7%、日本は33%から27%と、日本が突き出ていることがわかります。(環境省『最近の火力発電所設置事業における手続き状況等』より)

国内では9月末時点で31基の石炭火力建設計画があります。東日本大震災の福島第一原子力発電所事故の影響で原発の新設が難しくなる中、発電量の大きい石炭火力に目を向ける企業が相次いでいるのです。

政府がエネルギー計画の中で石炭火力をベースロード電源の1つに位置づけていることも、少なからぬ影響を与えています。資源を持たない国としてエネルギーの多様化を図りたい政府の意向と、利益を追求する企業の思惑が背景にあります。

神戸と仙台で差し止め求める住民訴訟

しかし、石炭火力に対し、厳しい目が浴びせられるようになりました。神戸製鋼所が神戸市灘区で計画する石炭火力2基(出力合計130万キロワット)の新設には、周辺住民らが9月、建設と稼働の中止を求める訴訟を神戸地裁に起こしています。

関西電力の子会社などが出資する仙台市の石炭火力に対し2017年9月、運転の差し止め訴訟が行われたのに次ぐ2例目の事例です。理由には大気汚染による健康被害への懸念だけでなく、温室効果ガス排出による温暖化への影響も含まれています。

国連や欧米諸国も日本の姿勢を強く批判

日本の政府と経済界の姿勢を批判しているのは、国内だけに限りません。国連環境計画(UNEP)は2017年11月公表の報告書で、日本を中国やインドとともに石炭火力推進国として強く批判しました。

ドイツのボンで2017年末に開かれたCOP23では、各国のNPO団体などから日本を批判する声が相次ぎ、日本に2年連続で化石賞が与えられました。この賞は温暖化対策の消極的な国をやり玉に挙げるためのもので、国内での建設推進とともに、東南アジアなどへ石炭火力の輸出を促進している点が批判の的になったのです。

米国を除く先進諸国は既に脱石炭火力に大きく舵を切っています。特に温暖方策推進の先導役になったEU諸国と日本の意識の開きは広がる一方です。

脱石炭火力連合がCOP24で存在感

COP24でも脱石炭火力を求める動きは加速しました。象徴的な出来事だったのが、英国とカナダの気象問題担当閣僚が中心となり、COP23の開催時に結成した「脱石炭火力連合」の成長ぶりです。

COP23当時の発足会見は丸いテーブルをはさんで10人余りの記者と質疑応答していましたが、COP24では大きな会議室に数百人の記者が集まりました。連合の加盟メンバーにもイスラエルや豪メルボルン市などが加わり、発足時の27が80に増えたのです。

COP24には日本から原田義昭環境相が出席していましたが、参加を見送っています。米トランプ政権と石炭火力推進で共同歩調を取る日本には、参加の呼びかけもなかったようです。こうした世界の潮流を無視したままで、日本が温暖化対策の深堀りを進められるのでしょうか、疑問が残ったままです。

石炭火力推進か方向転換か、岐路に立たされる日本政府

COP24に参加したWWFジャパンの山岸尚之気候変動・エネルギーグループ長は今回の会議について「ルールブックが策定されたことでパリ協定はいよいよ本格始動に向かうことになる。会期を1日延長しても合意を成立させ、前へ進むという各国の強い意志が示された」と評価しました。

しかし、日本の今後については「ルールはできたが、それを現実化していくための削減努力は世界的に足りていない。日本も2020年までに再提出することが決まっている国別目標の中で2030年に向けて目標を強化することが必要だ」と語りました。

政府はエネルギー計画の通りに石炭火力の推進を続けるのか、欧米の潮流と歩調を合わせて温暖化対策優先に舵を切るのか、思案のしどころに差しかかっているように見えます。

高田泰(政治ジャーナリスト)
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