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旧一電の上期決算や電力設備のレジリエンスを議論する小委員会の設置など、電力業界動向まとめ【2019年11月版】

電力自由化ニュース

2019年10月〜11月の電力業界の動向を国内最大級の電気・ガス代の見直しサービスであるエネチェンジの専門家が解説!新電力のシェアの動きや旧一般電気事業者各社の上期決算、電力設備のレジリエンスについての新しい小委員会の設置など、注目の動きについて資料を読み解きながら見ていきましょう。

電力小売全面自由化の最新の進捗や旧一般電気事業者各社の決算、持続可能な電力システム構築小委員会の設置など、2019年10月から11月の電力業界の動向を関係省庁の資料や発表内容から振り返ってみましょう。

気になる電力業界のニュースのポイントや見ておきたい注目の資料について、エネチェンジを運営するENECHANGE株式会社の顧問である関西電力出身、元大阪府副知事の木村愼作氏に解説してもらいました。

関西電力出身、元大阪府副知事の木村愼作氏

「電力小売全面自由化の進捗状況について」

経済産業省の諮問機関で資源エネルギー庁に置かれた総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会では1.5カ月に1回程度、会議の資料や議事を公開しています。今回は11月6日に公開された「電力・ガス小売全面自由化の進捗状況について」について注目すべき点を聞きました。

新電力のシェアの推移を見ると、高圧、特別高圧のシェアの動きは低調です。一方、低圧については安定的な伸びが見られます。


出典:電力・ガス小売全面自由化の進捗状況について(2019年11月6日)

新電力の中でも大手の100%子会社が伸びていることを考慮すると、産業用は実質的には横ばい状態といえるでしょう。本年度に入っての新電力の不調は、自治体などの入札案件が大手に回帰した影響もあるのではないかと見ています。

新電力から新電力の切り替えは3月に大きく伸びた後に今夏まで継続しています。引越しによる切り替えだけではなく、顧客の流動化が定着してきているのではないかと考えられます。

電力取引の状況(電力取引報結果)」の8月の確報がでています。前月までと同様に前年同月のシェアとの差分を集計し、その推移をグラフにまとめました。


出典:電力取引の状況(電力取引報結果)より、エネチェンジが独自に集計・作成

全体では+1.0ポイント。高圧は-0.5ポイントで見かけ上は回復しています。7月は前年猛暑の裏で大きく低下したこともあり、8月で大きな変化があったとは言えないでしょう。低圧(電灯)に関しては+4.6ポイントと電灯は春以降順調な伸びを見せています。低圧については大手ガス会社などのキャンペーンが効いているのかもしれません。引き続き注視していきたい動きです。

旧一電が上期決算を発表 8社が増益

旧一般電気事業者(旧一電)10社が上期の決算を発表しました。

2020年3月期 第二四半期(累計)決算概要一覧
事業者名販売電力量対前年比(%) 分野別合計収入損益
北海道電力低圧-5.7高圧・特高+1.9-1.7減収減益
東北電力電灯-3.0電力-0.7-1.4増収増益
東京電力電灯-8.7電力-1.5-3.7増収増益
中部電力低圧-5.3高圧・特高+1.5-0.5増収増益
北陸電力電灯-0.7電力-6.8-5.1増収増益
関西電力電灯-8.5電力+0.7-2.1増収増益
中国電力電灯-5.2電力-7.1-6.5減収増益
四国電力電灯-5.7電力-5.2-5.4増収増益
九州電力電灯-7.4電力-1.2-3.3減収減益
沖縄電力電灯-1.8電力-4.8-3.6増収増益

10電力のうち8社が増益。販売電力量は、前年夏が猛暑であった裏と自由化の影響で全社がマイナスとなっています。それでも多くの会社が増益となっている共通要因は、燃料費調整額の期ずれ卸販売での利益が出ているためとみられます。

卒FIT買取事業者連絡会が発足

2019年11月から太陽光発電でつくられた余剰電力の固定価格買取制度による買取期間が順次終了(卒FIT)しはじめました。

卒FIT対象者へのアプローチについて、大手と新電力の情報格差を埋める仕組みとして卒FIT買取事業者連絡会が発足しました。参加する事業者が続々と増えており、実効があがることに期待が持てますね。運営事務局は当社ENECHANGEが担当しています。


出典:卒FIT事業者連絡会

再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会でFIT制度対象電源についての方向を議論

総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会 再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会が10月28日に第3回の会合を開きました。

配布資料の「電源の特性に応じた制度設計(地域活用電源について)」が公開されています。

大型太陽光や風力は入札、FIT制度からFIP(Feed-in Premium)制度への移行で方向が決まりましたが、残りの部分について議論がなされました。自家消費や地域での活用の観点から整理し、要件を充足する案件については引き続きFIT制度の対象とする方針です。


出典:電源の特性に応じた制度設計(地域活用電源について)

総合エネ調にまた新しい小委員会 電力設備のレジリエンスについて議論

経済産業省の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の下に新しい小委員会「持続可能な電力システム構築小委員会」が設置されました。

資源エネルギー庁は、新しい小委員会で「発電から送電、配電に至るまでの電力システムを再構築し、中長期的な環境変化に対応可能な強靱化を図るための具体的な方策について、これまでの議論を踏まえた検討を行う」としています。

内容は「スマメデータの活用」、「託送制度の改革」、「新しい配電事業の検討」といった電力システム改革に大きく関わる議論となっていますので、注目しておきましょう。


出典:電力システムのレジリエンス強化に向けた論点

ベースロード市場、3回目の取引結果公表

11月22日に2020年度受渡分ベースロード市場の第3回オークションが開催され、取引結果が公表されています。


出典:2020 年度分 ベースロード取引市場 取引結果通知

約定量は北海道市場で12.9MW、東日本市場で193.6MW、西日本市場で61.3MWで、合計267.8MWとなりました。東日本市場の約定量が特に大きく伸び、合計では過去2回を大きく上回る結果です。しかし、来年度の受渡分の合計は、供給量全体から見ると期待よりはかなり低い水準となったのではないでしょうか。

電力業界の動向、次回は12月〜1月にお届け予定です

2019年10月から11月の電力業界の動向をまとめて木村氏に聞きました。さらに詳しく知りたい方は紹介した資料を確認してみましょう。

次回は、12月後半〜1月前半に最新状況をお届けする予定です。

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