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相次ぐ火力発電所の休廃止、来冬に東京電力管内で電力不足の見通し【エネルギー自由化コラム】

電力自由化ニュース

来年2022年の1、2月は全国的に電力不足が懸念されています。不足になる原因のひとつに、電力大手が火力発電所の休廃止があります。2050年カーボンニュートラルに向けて火力発電が減少傾向にある中、代替エネルギーの利用などによる安定した電力供給が来冬の課題となっています。

2022年1、2月に全国的に電力需給がひっ迫し、東京電力管内で電力不足となる恐れがあることが分かりました。梶山弘志経済産業相が明らかにしたもので、電力大手の火力発電が縮小傾向にあることが影響しています。経済産業省は電力大手に供給力確保を求める方針ですが、改善しないようだと節電要請に踏み切ることにしています。

2022年2月の東電管内供給予備率はマイナス0.3%

「この冬については東京電力管内で安定供給に必要な供給力を確保できない見通しとなった。発電・小売事業者に対し、供給力の確保を働きかけたい」。梶山経産相は5月中旬、閣議後の記者会見で冬の電力需給が厳しい見通しであることを明らかにしました。

電力供給力の余裕度を示す供給予備率は最低3%必要とされます。ところが、電力広域的運営推進会議がまとめた電力需給見通しによると、北海道電力と沖縄電力管内を除く8電力管内の供給予備率は、夏の冷房で電力需要が増す7月が3.7%、九州電力を除いた7電力管内は8月が3.8%と推計されました。ともにほとんど余裕がないぎりぎりの状態で、ここ数年では最も深刻です。

冬の暖房需要がピークを迎える2022年1、2月はさらに状況が悪化し、東京電力管内の供給予備率が1月にマイナス0.2%、2月にマイナス0.3%になる見込みとなりました。数値がマイナスですから、供給不足になることを意味します。

関西電力や中部電力、北陸電力、中国電力、四国電力、九州電力の6電力管内の供給予備率も、2月は安定供給に最低限必要な3%しかありません。寒波の襲来などが起きれば、電力が不足しかねない瀬戸際の状況です。

2022年1、2月の電力需給見通し

供給力、供給予備率等はエリア間融通を勘案後の数値需給検証においては、最も厳しい断面において予備率が確保できているかを確認することを目的としており、上表においては新型コロナウイルスの影響による需要の減少見通しは考慮していない。出典:経済産業省「2021年度夏季及び冬季の電力需給の見通しと対策について」

供給予備率とは

供給力から予想最大需要を差し引いた値を予想最大需要で割って算出する。数値が高いほど電力供給に余裕があることを示し、マイナスになると供給不足を意味する。ただ、実際に電気が足りなくなると節電要請などさまざまな対応を取るため、マイナス見通しになったからといって必ず停電になるわけではない。安定供給には最低3%の予備率が必要と考えられている。

想定外の寒波が来れば大規模停電の可能性も

供給予備率がマイナスとなったのは、東日本大震災直後に電力不足に陥った2012年夏の北海道電力、関西電力、九州電力管内以来です。2020年12月から2021年1月にかけ、想定を上回る寒波と火力発電の燃料となる液化天然ガス(LNG)不足が重なり、電力需給がひっ迫しましたが、2年連続で電力需給の危機が訪れると予想されているのです。

2020年12月から2021年1月は、それまで1キロワット時当たり10円前後で推移していた電力卸売市場の価格が10倍前後にはね上がり、卸売市場での電力調達に依存している新電力に大きな負担となりました。電力の卸売市場価格と連動する料金プランの契約者は、電気料金が10倍以上にはね上がった例も出ています。

そこへ想定外の寒波や発電所のトラブルなどが重なると、話は電気料金の高騰でとどまらなくなります。最悪の場合、大規模な停電が発生する恐れがあります。

電力不足は従来、冷房需要が大きくなる夏が深刻でしたが、現在は太陽光発電の整備が進み、夏の日中は発電量が増えます。これに対し、冬は太陽光の発電量が落ちるため、夏以上に電力不足が深刻化しやすくなっています。

高コストを嫌い、石油火力を相次いで休廃止に

梶山経産相は電力需給がひっ迫する理由として、火力発電の休廃止が相次いでいることを挙げました。経産省などによると、2016年の電力小売り全面自由化後、電力大手が持つ火力発電所が石油火力を中心に急激に減少しています。

東京電力と中部電力の火力発電部門を統合して発足したJERA(ジェラ)は2020年までに茨城県神栖市の鹿島発電所5、6号機、福島県広野町の広野発電所2号機など東京電力管内13基、愛知県田原市の渥美発電所4号機など中部電力管内2基の石油火力すべてを休止しました。

さらに、2021年度はLNG火力の千葉県市原市の姉崎発電所3、4号機を廃止し、三重県四日市市の四日市発電所4号機と、姉崎発電所5、6号機の計3基を休止しています。老朽化が進んで保修が困難になったうえ、設備利用率が低下し、利益を上げられなくなったからだとみられています。

関西電力も老朽化した火力発電所を廃止

関西電力は石油火力で2019年に和歌山県海南市の海南発電所1~4号機、2020年に大阪府岬町の多奈川第二発電所1、2号機、LNG火力で2021年2~3月に兵庫県姫路市の姫路第二発電所の既設5、6号機を廃止しました。海南発電所と多奈川第二発電所は発電所自体が廃止されています。

さらに、石油火力で和歌山県御坊市の御坊発電所2号機が2019年に休止されました。いずれも運転開始から30年以上が経過した老朽機で、中には半世紀近く運転してきたものもあります。関西電力は「設備の老朽化などを踏まえて総合的に判断した」としています。

東北電力は新潟県聖籠町にあるLNG火力の東新潟発電所港1、港2号機、九州電力は福岡県苅田町にある石炭火力の苅田発電所新1号機を長期計画で運転休止しています。

このほか、東北電力と東京電力が設立した福島県新池町の相馬共同火力発電新池発電所の1、2号機、徳島県阿南市の電源開発橘湾発電所1号機の石炭火力3基が、地震被害やトラブルで停止しました。

左:和歌山県海南市の関西電力海南石油火力発電所(2019年3月、筆者撮影)右:蒸気タービントラブルで1号機が運転を休止している徳島県阿南市の電源開発橘湾火力発電所(筆者撮影)

火力発電の供給力減少はこの1年で約830万キロワット

経産省によると、この5年間で休廃止された石油火力は原発10基分に相当する出力約1,000万キロワットに及びます。2020年夏に稼働していた火力発電のうち、休廃止や運転停止で2021年度に供給を見込めない施設は電力大手だけで約830万キロワットに達します。

電力大手は需要に基づいて発電所を維持管理することが求められていますが、電力自由化で都市ガス大手や新電力に顧客を奪われて経営に厳しさが増しています。経営に余裕があった電力自由化前なら、利用率が低下して利益を出せなくなった施設を維持できましたが、今はそんな余裕もないのです。

石炭火力廃止の流れや原発再稼働の遅れが誤算に

電力大手の多くは燃料費にコストがかかる石油火力を廃止し、代わりに石炭火力を増強する方針でした。しかし、石炭火力が二酸化炭素など温室効果ガスを多く排出するため、国際的な批判や建設予定地周辺住民の反対にさらされ、見直しを迫られました。

さらに、2050年の温室効果ガス排出実質ゼロ(カーボンニュートラル)の方針を政府が打ち出したことから、大幅な増強が難しくなっています。

原発の再稼働は国民の厳しい目やテロ対策施設整備の遅れなどもあり、電力大手の思うように進んでいません。洋上風力発電や水素発電、アンモニア発電なども主力電源に育つのにまだ時間がかかりそうです。

休廃止の火力発電再稼働を求める方向

こうした危機的な状況は5月末にオンラインで開かれた経産省の有識者会議に報告されました。委員からは「早急に対応を打ち出すべきだ」「由々しき事態だ」などと厳しい声が上がりました。

経産省はこれを受け、東京電力に休止中の火力発電所再稼働を求める方針です。施設名は明らかにしませんでしたが、JERAの姉崎発電所などを想定しているもようです。一般の事業所や家庭に対しては節電を訴えることも視野に入れています。

将来も同じような危機が起きないようにするためには、火力発電の過度な休廃止を避けなければなりません。このため、電力大手に火力発電の休廃止を事前に届け出させ、経産省で確認する仕組み作りを検討する方向です。

火力発電の縮小は脱炭素に動く世界的な潮流から見て、避けられそうにありません。電力不足を招かずに代替発電へスムーズに移行するにはどうすればいいのか、経産省は新しい仕組みを急いで構築する必要がありそうです。

高田泰(政治ジャーナリスト)
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