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2022年の都市ガス導管分離、大手3社はひと足早く新時代の体制模索へ【エネルギー自由化コラム】

ガス自由化ニュース

2022年4月から、都市ガス大手3社(東京ガス・大阪ガス・東邦ガス)に導管部門の法的分離を実施して、ガス製造・小売事業・導管事業の兼業を禁じます。都市ガス業界への新規参入を促しガス自由化を拡大するために、導管部門の中立化を強化することが、法的分離の目的のひとつです。これを機に、都市ガス業界が新たなを局面を迎えることになるでしょう。

2022年4月から都市ガス大手3社の導管部門が法的分離されるのに備え、東邦ガスが4月、導管部門を社内カンパニー化しました。東京ガスはひと足早く導管部門の一部を別会社化しており、大阪ガスは本格的な対応検討に入っています。導管部門の法的分離は新規参入しやすい環境づくりの大きな一歩です。これにより、ガス自由化は新たなステップに入ります。

東邦ガスは社内カンパニーを設置

東邦ガスが設置したのは、社内カンパニーの「導管ネットワークカンパニー」です。伊藤克彦専務執行役員がカンパニー長を兼ね、独立事業会社として必要な内部統制・コーポレート機能を備えた組織にしています。

法的分離までの2年間、導管ネットワークカンパニーで業務体制の試行を進めます。効率的な事業運営や中立性・透明性の確保、グループガバナンスの確保を見極め、円滑に法的分離するのが狙いです。

現在は1,000人規模の社員が導管ネットワークカンパニーに所属しています。東邦ガスは「持ち株会社制を取るか、切り離して子会社にするかは決めていないが、この2年間の試行期間で方向を定めたい」としています。

中立性確保目指し、導管部門を法的分離

都市ガスの導管部門は現在、ガス製造や小売部門と別会計にする会計分離が行われています。新たに都市ガス事業に参入する小売事業者は託送契約を結んで既存の導管を利用、顧客に都市ガスを供給します。新規参入の事業者が導管を持つ事業者の小売部門と公平に利用できるよう中立性を保っているわけです。

国内の導管総延長は2016年度末時点で約26万キロ。このうち、53%に当たる約14万キロを東京ガス、大阪ガス、東邦ガスの都市ガス大手3社が保有しています。中立性をより厳格にするため、大手3社にガス製造、小売事業と導管事業の兼業を禁じたのが、導管部門の法的分離です。

法的分離が実施されるのは2022年4月。経済産業省は想定できる法的分離の形として、持ち株会社の下にガス製造会社、小売会社、導管会社を置く方式や、製造・小売会社の下に導管会社を置く方式を挙げています。大手3社は2022年までにどの方式を採用して導管分離を進めるのか、決断しなければなりません。

国内の大手電力会社は4月から発送電の法的分離で、送電部門を別会社化しました。電力自由化を受け、送電部門の中立性を保つための措置ですが、経産省はこれと同じことを都市ガス事業で実行しようとしているのです。

導管分離の方式

経済産業省が想定する導管分離の方式(経産省「ガス導管事業者の法的分離に伴う行為規制の検討について」から)

東京ガスは2年前から導管部門の一部を別会社化

東京ガスは導管部門を社内に残しながら、高圧ガス導管の保安管理をする「東京ガスパイプライン」を2009年、その他の導管のより現場に近い保安を受け持つ「東京ガスパイプネットワーク」を2018年に設立しました。東京ガスパイプラインは282人、東京ガスパイプネットワークは663人の従業員が働いています。

本社に残った導管部門は4月から名称を「導管ネットワークカンパニー」と変更しました。法的分離に合わせて円滑に分社を進め、最適なグループ運営をするのが目的で、さらなる経営効率化策も検討する方針です。東京ガスは「法的分離に備え、業務上の課題を抽出して必要に応じて見直していきたい」と述べました。

大阪ガスは2019年から新体制の検討入り

大阪ガスは2019年4月から、導管部門の分社化についてメリット、デメリットの検討作業に入っています。今のところ、どのような組織形態が好ましいのか、結論は出ていませんが、法的分離に間に合うよう制度設計する方針です。

大阪ガスは「具体的な組織を置いたわけではないが、新しい組織を『導管部門ネットワークカンパニー』と呼び、具体化を進めている。中立性を担保し、効率的な運営が可能な組織にしたい」と話しています。

西部ガスは地域事業会社設置で結果的に導管分離

法的分離が実施されるのは大手3社だけで、それ以外の都市ガス事業者は現在の会計分離を維持します。大手3社に次ぐ規模を持つ準大手の西部ガスは引き続き会計分離したまま、導管部門を社内に残します。しかし、販売促進のために福岡、熊本、長崎の地区ごとに事業会社を置くことにより、福岡地区以外を結果的に導管分離します。

2021年4月をめどに持ち株会社体制に移行し、西部ガスホールディングス(仮称)の傘下に事業会社を置くのに伴うもので、6月の定時株主総会で承認を求める予定。その目玉が地域事業会社の設立で、地域ごとの特性に応じた効率的な運営を目指しています。

西部ガスは「導管部門の分離を目指した措置ではないが、結果的に熊本、長崎地区は分離した格好になる。これを機に中立性の確保に向け、さらに努力していきたい」と述べました。

導管整備はまだ国土の6%ほど

導管部門の法的分離は新規参入を後押しするのが目的ですが、電力業界が電力自由化で異業種から参入が相次ぎ、全国的に販売競争が激化したのに比べ、ガス自由化後の状況はかなり異なっています。

電力は全国津々浦々に送電網が引かれ、普及率はほぼ100%です。これに対し、都市ガスは国土の6%ほどしか導管が整備されておらず、全国どこでも利用できるわけではありません。都市ガスの普及率も大都市圏を中心に50%前後にとどまっています。

都市ガス事業者の8割は従業員100人以下の中小規模で、LNG(液化天然ガス)基地を持ち、自前で都市ガスを生産しているのはごく少数。新規参入の事業者が積極的に活用したいと思えるほどの導管網を持つ事業者は多くありません。

地方へ広がらない自由化の恩恵

新規参入は徐々に増えてきていますが、大口の企業向け販売だけを手がけるところが多く、一般家庭が購入先を選べない地域が珍しくないのです。新規参入した場所も導管の整備されている3大都市圏に集中しています。

この状況は都市ガス購入先切り替えの申し込み件数に表れています。経産省がまとめた4月末現在の地域別内訳を見ると、関東が約184万件、近畿が約119万件で、全体の84%を占めています。関東は東京ガスに東京電力エナジーパートナー、近畿は大阪ガスに関西電力が挑み、電気と都市ガスのセット販売で競争を繰り広げているからです。

しかし、北海道や東北、中四国地方は購入先切り替えの申し込み件数がゼロのまま。ガス自由化の恩恵が全国に広がっていないといえるでしょう。

新時代を迎える都市ガス業界

ガス自由化は電力自由化を追いかけて大急ぎ進められました。このため、新規参入事業者を全国に広げるのに欠かせない導管網の整備が後回しになったのです。地方で新規参入を増やすには導管網の拡大が必要ですが、いつでも新規参入を受け入れられるよう先に導管部門の中立化を強化しているのです。

今回、法的分離の対象となった都市ガス大手3社は電力大手などと激しい競争を繰り広げながら、導管分離後のより良い体制を模索しています。ガス自由化がひと区切りとなるのを前に、都市ガス業界も新時代を迎えようとしています。

高田泰(政治ジャーナリスト)
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