デマコン市場で買い替えニーズ増、導入検討者向けに現状と基礎知識を解説
電力の使用状況をグラフなどによって「見える化」するデマンド監視装置・デマンドコントローラー(デマコン)の導入や買い替えニーズが増えています。導入や買い替えを検討している企業担当者向けに最新の動向を紹介します。
デマンドコントローラー(デマコン)とは
高圧電力の需要家の電気料金は、通常はデマンド料金制(実量制)となっています。デマンド料金制では30分単位で平均使用電力を算出し、当月を含む過去1年間の最大需要電力(デマンド値)の中から最も大きい値を契約電力として基本料金を決定しています。デマンド値が高くなると、そこから1年間の基本料金が上がってしまうというわけです。
デマンド監視装置とはそのデマンド値を確認するための装置。また、デマコンは設定したデマンド値を超えそうなときにアラートを出したり、自動制御をしてくれるシステムです。
企業による前回のデマコン導入ブームは、2011年に起きた東日本大震災の直後でした。政府が東京電力と東北電力管内の大口需要家企業に対して、ピーク期間・時間帯の使用最大電力について15%の節電要請をしました。その際に夏場のピークカットを実現する手段として、デマンド監視装置やコントローラーの導入が相次ぎました。
それから8年後の今、当時導入された機器の多くが買い替え時期に差しかかっています。
新電力大手のエナリスはクラウド型デマコン提供
新電力大手エナリスは、当時の旧型機器のデメリットを補うクラウド型のデマコン「FALCON SYSTEM」によって、買い替えニーズにも積極的に対応しようとしています。
クラウド型のため比較的安価に導入できることに加え、3時間ほどの工事で計測機器を設置できるという手軽さが同社の強みといえるでしょう。
「省エネに関する深いノウハウがなくとも使いこなせるようになっている」と話すのは、同社の阿達洋平氏(営業統括本部ソリューション営業課)。
エナリスでは使い勝手を考慮したという操作画面や、サポートセンターによる活用支援など、ユーザビリティを考慮したというサービスを提供しています。
[インタビュー]エナリス「FALCON SYSTEM」の特徴や導入時のポイントは?
FALCON SYSTEMの現状や、デマコン導入初心者が気をつけるべきポイントとは。現場で販売に携わる阿達氏に話を聞きました。
――2011年にローンチしたFALCON SYSTEMですが、最近の導入状況はいかがですか?
阿達氏:最近になって導入数が加速し始めています。震災直後に導入されたデマコン機器の買い替え時期に入っていることが影響していそうです。直近では機器のリプレイスのタイミングで採用していただくケースが最も多い状況です。
――買い替えユーザーに選ばれているとのことですが、理由はどんなところにあるのでしょうか?
阿達氏:特に多いケースは、これまで100万~200万円でリース契約していた機器の契約更新が必要になったものの、多額の再リース費用に悩まれるという場合です。FALCON SYSTEMであればクラウド型のサブスクリプションモデルのため、従来の機器の3分の1ほどの費用に抑えることができ、かつ便利に使える点にメリットを感じていただいています。
―――費用面や実際に使いこなせるかなど、ユーザー企業の懸念は多そうです
阿達氏:新しい機器にリプレイスしようとしたものの、そのメーカーが製造をストップしてしまっていたというケースも多いです。我々の場合、クラウド型のため定期的に使い勝手を改善していけるうえ、サポートセンターによる活用支援もあるので売りっぱなしではないことが、企業様に喜ばれています。
――一方で初めて導入する企業ではどんなきっかけが多いでしょうか?
阿達氏:よくあるのがLED照明を入れる時に、一緒にデマコン機器も導入したいというニーズです。LED設置による効果検証が目的のようです。特に補助金で設置した場合は定期報告書の提出が求められるため、デマコンへのニーズが一層高くなる傾向にあります。また夏が終わるタイミングでお声がけいただくことも多いです。夏場にデマンド値のピークを更新してしまったため、ピークカットの手段としてご検討いただくようです。
――導入企業の規模や業種に傾向はありますか?
阿達氏:契約電力でいうと100~600kWくらいの規模が中心です。1,000kWほどの大型施設になると、中央監視装置が入るためそもそもデマコンを使う必要がなくなってきます。業種は多種多様ですが、工場や介護施設、ロードサイド店舗を中心とした多拠点展開の企業が多い傾向です。こうした企業の場合、各拠点の電力データの集約に苦労するケースが多いため、一括で管理できるデマコンへのニーズが増えています。
――業種ごとで活用経験に差がある場合もありそうです
阿達氏:弊社の中でいうと介護施設などの医療関連は、初めて導入するというパターンが比較的多いです。一方で工場の場合はリプレイス需要が高い傾向にあります。
――導入費用が削減効果に見合うか、という観点ではどう検討すればよいですか?
阿達氏:これまで何らかのピークカット施策はしてきたもののデマコン活用には至っていないという企業であれば、5~10%ほどの削減率を見込めます。またピークカット施策自体未着手の場合であれば15%以上の削減率を見込める場合もあります。
――その数値は割と多くの企業に当てはまりそうな傾向でしょうか?
阿達氏:1万件以上のFALCON SYSTEMの導入実績の中でデータを蓄積しているので、確度が高い数値としてお客様にはお伝えしています。
――FALCON SYSTEMに蓄積されたデータを元に、電力使用量を予測できる機能もありますね
阿達氏:電力データを半年ほど蓄積していただくと、翌日に使用する電力量を予測できるようになります。過去実績や天候データを元にした予測値です。店舗や拠点単位で出すことも可能です。予測値をもとに、翌日に節電目標を超えそうだということになれば、前日にメールで通知されるため、事前に対策を考えることもできます。
――基本機能を備えたBasic版と高機能なPro版があります。それぞれの特長を教えてください
阿達氏:Basic版では先ほど触れた予測機能とグラフによる電力使用量の見える化、デマンド値が上限を越えそうな時に発動する警報機能(メール・電話)の3つがメインです。Pro版では、それらに加えて空調をはじめとする機器のオンオフを自動で制御できる機能が追加されます。
――Basic版が「デマンド監視装置」で、Pro版になると自動制御機能も加わった「デマンドコントローラー」になるという位置づけですね
阿達氏:そうなります。Pro版では指定した機器ごとの制御設定を30分ごと(1日48コマごと)に変えることができます。たとえば電力をこれくらい使ったらムダだという水準は、営業時間中と業務終了後では違うはずです。設定や活用方法については、サポートセンターによる電話サポートもあります。それによってより大幅な電力使用量の削減が可能になり、投資回収期間を短縮できるようになります。
――ピークカットや電力使用量の削減のために、たとえばどういった活動が必要になりますか?
阿達氏:契約電力を押し上げる要因のメインは空調であることが多いです。ただ30分を1コマとした場合、年間でピークに達する可能性があるタイミングはほんの数コマだったりします。そのためその数コマだけ空調を弱める、もしくは消すといったシンプルな取り組みだけでも、契約電力を下げることに役立ちます。
――本社主導で各拠点の省エネ促進や従業員の意識付けを強化するためにも活用できそうです
阿達氏:時間帯ごと拠点ごとのムダ遣いを発見することもできます。たとえば就業時間が終わっているのに照明が必要以上についている拠点を割り出すことも可能です。弊社のお客様の事例でいうと、デマコンの数値を本社が確認しながら、電気代削減に成功した拠点を表彰するといった取り組みや、働き方改革の文脈で各拠点の労働状況を把握する目的で、時間帯ごとの電気の使用状況を確認する、といった例もあります。
――拠点ごとの労働状況をデマコンで把握するということで、電気代削減にとどまらない活用法もあるということですね。本日はありがとうございました