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今冬の仕入れ価格急騰で苦境の新電力、自由化の問題点が図らずも露呈【エネルギー自由化コラム】

電力自由化ニュース

今冬は、寒波による電力需要の増加や火力発電燃料であるLNG(液化天然ガス)の不足などが原因となり、仕入れ価格が高騰しました。価格高騰は、多くの新電力の経営や消費者の電気代に直接的に影響を及ぼしました。今後安定した電力供給を確保するためにも、新電力の経営体制や制度の見直しが必要です。

今冬の電力需給ひっ迫で仕入れ価格が記録的に急騰したのを受け、新電力が苦境に立たされています。事業休止や新規契約の受付停止に追い込まれた事業者があるほか、調達量を上回って販売した電力分の費用をペナルティーとして大手電力に払う「インバランス料金」の支払いも3月から始まりました。電力自由化で約700の新電力が参入しましたが、営業不振に陥ったところが少なくなく、今後は業界の再編も予想されそうです。

かづのパワーの資金不足は鹿角市が穴埋め

「自由化された市場に参入する以上、ある程度のリスクは覚悟していた。しかし、これほどまで仕入れ価格が上昇するとは想定していなかった」。秋田県鹿角市産業活力課は頭を痛めています。

鹿角市は秋田県の北東部、青森、岩手両県との県境に位置し、人口が2月末現在で約3万人。人口減少と高齢化社会の進行にあえぐ典型的な田舎町ですが、地方創生と電力の地産地消を目指して2019年、鹿角市の第三セクターとなる「かづのパワー」を地元企業とともに設立しました。

事業開始は2020年4月から。市内にある三菱マテリアルの永田水力発電所(最大出力721キロワット)や日本卸電力取引所から電力を調達し、市内の公共施設を中心に販売してきました。経済産業省によると、2020年11月の販売量は約40万キロワット時です。

しかし、今冬の仕入れ価格急騰が経営を直撃して電気を売れば売るほど赤字を出す状態に陥り、2月14日で全事業を休止しました。5月末までに想定される資金不足は約3,200万円。鹿角市は損失を穴埋めするため、3,500万円を上限とする支援策を盛り込んだ補正予算を2月市議会に提出し、可決されました。

事業再開か廃止かはあらためて検討へ

新電力は電力需要を予想して電力を調達していますが、消費者の電力使用量が調達量を上回ると、大手電力が不足分を穴埋めします。電力供給が止まることを避けるための措置で、新電力は不足した電力分の費用をペナルティーとして大手電力に支払わなければなりません。これがインバランス料金です。額は市場での仕入れ価格より割高になります。

かづのパワーは3月3日からインバランス料金の支払いが始まる予定でしたが、特例措置により4月15日まで猶予をもらいました。しかし、支払いのめどが立たなかったことから、鹿角市が補助金を交付して救済することにしたわけです。ただ、その後会社をどうするのかは決まっていません。

鹿角市はかづのパワーが自然エネルギーに恵まれた市に欠かせない事業という認識を変えていません。しかし、赤字経営で補助金を出し続ける状態となったのでは、財政力の弱い小さな自治体の重荷になりかねません。

鹿角市産業活力課は「会社を当面存続させ、あらゆるリスク軽減策を考慮して事業を再開できるかどうか検討する。そのうえで、事業再開か廃止かの結論を出したい」と苦しい胸の内を説明しました。

楽天モバイルは3月から新規契約受付を再開

楽天モバイルは1月26日から2月末まで、電力販売の「楽天でんき」の新規契約受付を停止しました。2020年11月の電力販売量は1億463万キロワット時で、新電力中の29位に入っています。

電力の調達方法は公表していませんが、新電力のグループで調達し、家庭向けの販売を伸ばしているといわれています。冬場の需要が増える時期は短期間で調達が可能になる日本卸電力取引所への依存度が高くなり、仕入れ価格急騰の影響を受けたもようです。

楽天モバイルは3月1日、ホームページで「サービスの安定的な供給体制が整った」として新規契約受付の再開を明らかにしました。料金プランは受付停止前と変わらないとしています。

仕入れ価格急騰が新電力の経営を圧迫

今冬の仕入れ価格急騰は2020年末から断続的に続いた寒波で電力需要が増大したことが最大の原因です。しかも、燃料の液化天然ガス(LNG)が不足し、発電量を増やすことができませんでした。

その結果、日本卸電力取引所での仕入れ価格が急騰しました。それまでは1キロワット時当たり10円前後で調達できましたが、今冬は通常の10倍前後、最大時だと約25倍まで高騰したのです。家庭向け電力は一般に1キロワット時当たり20円台で販売されていますから、売れば売るほど赤字が膨らむことになります。

新電力の多くは自前の発電所を持たずに市場へ参入してきました。火力発電所を持つ東京ガスは市場調達が3%ほどですが、新電力大手でも市場調達がざっと6割に達するところがあります。その結果、今回の仕入れ価格急騰で経営が傾き、事業買取を求める動きが水面下で広がっています。

急騰のしわよせで料金10倍の消費者も

急騰の影響は消費者にも出ました。1月末から2月にかけ、SNSでは電気料金の急上昇に悲鳴を上げるコメントが相次ぎました。卸市場での仕入れ価格に料金が連動する「市場連動型プラン」を契約していた人々の声です。

広島県のカフェ経営者は使用量が大きく増えたわけでないのに、1月の店の電気料金が前月の5倍、自宅も10倍にはね上がりました。神奈川県の会社員は独り暮らしの自宅マンションの電気料金が前月の10倍に膨れ上がったそうです。

仕入れ価格急騰による値上がり分を補てんした新電力もありましたが、規模の小さな新電力にその余裕はありません。コロナ禍が続く中、電気料金に大金をはたいた消費者も少なくなかったのです。

新電力の売上高、利益は頭打ち状態に

経産省は緊急措置としてインバランス料金に上限を設定するなどを打ち出しました。消費者保護と電力の安定供給維持のため、新電力に一定の支援を与えたわけです。しかし、新電力は激しい競争で売り上げが伸びないところへ仕入れ価格の急騰が直撃し、苦戦を強いられているところが少なくありません。

民間信用調査機関の東京商工リサーチが過去3年分の業績を比較できる新電力32社の売上高と利益の推移を調べたところ、最新期は全体で増収、黒字を確保したものの、売上高は前期比0.8%増にとどまりました。逆に利益は前期比92.4%減と頭打ち感が鮮明になっています。

東京商工リサーチ情報部は「市場原理が働けば、今回のようなことは今後も起こりうる。自由化した以上、弱い事業者が淘汰されるのはやむを得ないのかもしれない」と厳しい見方を示しました。電力自由化の問題点が図らずも露呈した形です。

新電力32社の業績

出典:東京商工リサーチ「電力自由化が晒される試練、新電力の経営危機が浮上」

発電所を持たない新電力の姿勢に疑問の声も

こうした状況を問題視した河野太郎規制改革担当相の特別チームが2月、経産省に市場の抜本的な再設計を求めました。自然エネルギーによる電気を強みとする新電力が多い中、公正に競争できる市場がないと再生可能エネルギーの拡大にブレーキがかかる可能性があると考えたことも背景にあるようです。

しかし、消費者保護と関係なく、新電力救済に踏み出すのには、否定的な意見が少なくありません。自前の発電所を持たず、日本卸電力取引所で調達した電力を消費者に販売するだけで利益を出そうとする新電力の姿勢を疑問視する声もあります。

不測の事態に備えた制度の見直しや地方創生に貢献する地域新電力に対する一定の配慮は必要でしょうが、自前の発電所を持つ新電力の育成など新電力が電力安定供給の担い手となる方向へ導く努力も政府に求められているように見えます。

高田泰(政治ジャーナリスト)
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